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千文字小説百物騙  作者: 凪司工房
第参乃段
25/100

その見返りに感謝して

常田隆典ときたたかのりさんをご存知ですね?」

 それは教子が付き合っている彼氏の名前だった。大学から自宅アパートに戻ってきたところ、見知らぬスーツの男性二人が声を掛けてきた。ええ、と答えたところで男たちは二人とも警察手帳を取り出し「ちょっとお時間宜しいですか」とぎこちない笑みを浮かべた。

「それで警察の方がどんなお話なんですか」

「常田さんとお付き合いされていた、ガールフレンドだという認識で宜しいでしょうか」

 伊勢崎いせざきと名乗った先輩の刑事はじっと表情を覗き込むようにしながら話す。

 彼とは大学の未確認生物研究会の活動で遠野に河童探しツアーに参加した時に一緒になった。最初はただ趣味の話が通じる素敵な男性だという程度の認識だったが、ある時、駅前で財布をスられたというおばあさんに遭遇そうぐうし、彼が自分の財布を「どうぞ使って下さい」と上げてしまった出来事から、がらりと印象が変化した。

 彼は事あるごとに「見返りを与えるのが愛だ」と言い、教子に対しても何かと「見返り」と言ってはプレゼントをくれた。

「三ヶ月ほど、ですか。その間に奇妙だと感じた言動はありましたか?」

 ありません、と答えようとしたが、彼のやや行き過ぎた「見返り」については正直困惑することも多く、簡単にではあったけれど、彼の見返り活動について話して聞かせた。

「それで、彼に何かあったんですか?」

「事件についてご存知ありませんでしたか。今朝のニュースでも報道されたと思いますが、先日あなたの通っている大学の裏の雑木林で女性の遺体が発見されまして、その事件の関係者として元交際相手である常田が浮上したんです」


 それから五日後、彼は警察に逮捕された、とニュースで知った。

 あの刑事たちが再び教子の前に現れることはなく、どうやら彼が全て自供したらしいとテレビや新聞、ニュースサイト等の情報で知っただけで、こういう形で恋愛関係が終わることがあるのだ、と人生の新しい学びがあったことだけが、今回の彼女の収穫しゅうかくだった。

 それから半年ほどして週刊誌に掲載けいさいされた話を読むと、彼は孤児院出身で、そこでは教師と呼ばれる指導者により独自の教育がなされていたという。彼だけではなく、数件の殺人事件の逮捕者が皆その孤児院出身だったことから、今回彼も遺体が見つかるより半年も前から内偵が進んでいたらしい。

 その教師は彼らに言ったそうだ「見返りを与えることこそが愛だ」と。そして彼が言う見返りとは「罰」のことだった。


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