土の匂い、彼女の味
梅雨の時期の教室は着ているシャツだけじゃなく、床も天井も、黒板すらもじめっとしているように感じる。それでも女子の白いセーラー服がしっとりと肌に張り付くのを目にすると、シンジはどうしようもなく劣情がもたげてしまう。
特に目の前の席に座る転校生中村エミの背中はシンジにとって蠱惑的だった。
それは土曜日、二時間目が体育の授業だった時のことだ。
「ねえ、このままサボらない?」
着替えずに残っていたエミはシンジを見て微笑する。
「そういうの、嫌いじゃないでしょ?」
シンジたちは制服のまま学校を抜けると、そのまま駅前まで歩く。途中でパトカーとすれ違い、シンジは慌てて隠れようとしたが、そんな彼の姿にエミは大笑いする。
ゲームセンターには自分たちのような制服姿の人間はいなくて、白髪まじりのおじさんや、会社をサボっているスーツ姿の男性、髪を染めた若いギャル風の女子の姿がちらほらある程度だった。
最初こそびくびくしていたが、彼女の笑顔を見るとそんなことを気にしている余裕はなくなり、一緒になってゾンビを撃ち殺した。
「ワタシ初めてなの。こんなに楽しいと思わなかった」
「そっか。じゃあ、良かった」
高校になって初めての青春を味わっているとシンジは感じ、必要以上にドキドキが止まらない。彼女のスカートがゆらゆらとするのについ目が向かうし、胸元に空気を入れようと時々セーラー服を引っ張る度に気になってしまう。
「ねえ」
と、彼女が不意に立ち止まる。指を差したのは畑の脇に立っていた古い小屋だ。物置として使っているのだろう。ドアが壊れて開いたままになっている。
中には古い毛布が敷かれていた。それを目にして先輩たちが噂していた例の部屋だと直感する。
「中村さん、ここは」
「エミ、でいいよ。それよりさ」
彼女はそのまま笑みを浮かべて背中から倒れ込む。暑いね、と口にしてリボンを解き始めた。
「あ、あの」
「約束、してくれたら、してもいいよ」
彼女の言葉に喉が鳴る。
「約束」
シンジが頷くと彼女はセーラー服の上着を脱ぐ。華奢な体がむき出しになり隠れていた傷が露出した。上腕や胸の上、切り傷に痣、縫った跡も見える。
左腕のリストバンドを取ると、そこには無数のためらい傷が模様を作っていた。
シンジはそれでもいい、と彼女の汗ばんだ首筋に顔を埋める。土が僅かに付着していて、それを舐め取ると、彼女の強烈な臭いに刺激された。シンジは思い切り声を上げてその感情に埋もれた。




