表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
千文字小説百物騙  作者: 凪司工房
第参乃段
22/100

鈴木教のクリスマス

 駅前の広場には巨大なツリーが置かれ、電飾がきらびやかなイメージを周囲にらしていた。それに群がるようにして待ち合わせの恋人たちが二人組を作る。

 その様子をコンビニのカウンターでレジ打ちをしながら、高森好市たかもりこういちは黙って見つめていた。店内はクリスマスカラーに染められ、流れてくる曲もほぼクリスマスソングだ。

 と、目の前にシャツとジーンズといった平凡な服装で一人の女性が現れた。鈴木教子、好市の彼女だ。

「明日のデートなんだけど、キャンセルね」

「え? 折角クリスマスイベントチケット手に入れたのに」

「ワタシ、鈴木教だから」

 それだけ言うと、会計を済ませて彼女はサンドイッチとジンジャエールを手に、立ち去ってしまう。

 鈴木教。それは彼女が信仰しているらしい彼女独自の宗教で、特色はメジャーなイベントを全て否定し、世間に迎合しないというものだった。つまりバレンタインやハロウィンはやらないのは当然として、正月もなければクリスマスも完全にスルーする。

 それを承知で付き合うことにしたのだけれど、本当にここまでイベントをやらないとは思わなかった。付き合っていけばそのうちやりたくなると思っていたのだけれど、彼女はかたくなに拒否し続けた。


 次の週末、キャンセルした分のデートができることになった。くしくも二十四日。クリスマスイブのことだ。

「待った?」

 その日の彼女は赤いワンピースに深緑のジャケットを合わせていた。あまり被りたがらない帽子も赤で、やや先が尖っている。好市はサンタを想像したが、彼女に聞くと「全然違う」と言う。

 今日は彼女がこの前のキャンセルのおびということで、好市が行きたがっていた都内のデートスポットを梯子はしごしようということになった。

 お台場に六本木、東京タワーも全てがクリスマスカラーで、カップルであふれていた。当然彼女はクリスマスのクの字も口にしないし、現地で買う食べ物も絶妙にクリスマス限定商品を避けた。

 それでもクリスマスの雰囲気の中を二人で歩くだけでも好市は楽しく、彼女とクリスマスデートをするという夢は叶えられた気分だった。

 夕食は彼女がご馳走ちそうしてくれるというので、電車で彼女のアパートに移動した。

「お邪魔します。あれ、これって」

 見ればテーブルの上には大きな鳥の丸焼きが載っている。

「七面鳥ってやつが食べてみたかったの。それだけなんだからね」

 そう言って恥ずかしそうに好市を見た彼女を、鈴木教でもいいと、信徒Aは思った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ