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異世界行ったら弱すぎた  作者: 痛痴
2章 異世界オタクと人形達の街
38/40

38話 カンダラ迷宮と大精霊

 エタらないイタチ君えらいって言って!

 


 ーカンダラ市営鉱山 冬氷の間 精霊の抜け道ー


 次の日。俺は寝不足の瞼を擦りながらドリンクバーを出して顔を洗っていた。こう考えてみると便利な能力である。これが現代地球だったら素直に喜べる力だろう。

 だがこの脳筋世界トキシトートでは糞と言ってもいい能力だ。砂漠とかだったらまだ役に立つのだが。


 まあそんなことは置いとこう。今、大事なのは昨日の話の中でちょびっと出てきたアニメ、以外の情報である。

 そう、精霊についてだ。

 精霊とは魔力の権化みたいな存在らしい。よく分からんが自然界のバルトを自由自在に操ることができる。人間の魔力には限りがあるが自然には実質的にそんなものは存在しない。出力に制限はあるらしいがそれでも恐ろしい存在である。

 で、そんな精霊だが今俺達の前にいる。今朝方、俺達を訪ねて来たのだ。例のケム爺の知り合いらしくそのまま案内してもらえることになった。


「へっぷし」


 神聖さの欠片もなく精霊はくしゃみにきれいな顔を歪ませた。そう、顔だけなら美少女だ。そこは素直に喜べる。銀色の髪は長く艷やかで、肌は乙女の柔らかさを持っており、仄かに主張する胸元はインパクトこそ薄いが彼女のモデル体型に合致している。全体的にハイレベルと言えるだろう。


「んあ、おい。ケントとかゆー奴。何を見てるし?」


 別に人格に問題があるわけでもない。思っていたのとは違うが敵性も感じない。


「ケリオンの知り合いだからそういう態度も許してやってるけど、お前らなんかいつもなら木の葉ミジンコだぞ」


「木っ端微塵では?」


 アンドレーが冷静に突っ込む。

 確かに語彙は怪しい。この分だと頭もそんなによろしくなさそうだ。魔術を扱う以上、脳みそは俺より高性能な筈なのだが、おそらくその1%も活用できていない。事実俺は彼女になにも脅威を抱いていない。それはこの世界で初めてのことかもしれなかった。


「精霊の中じゃ木の葉ミジンコなんだよ!」


 絶対違う。その場にいた全員が確信した。

 まあ、負けず嫌いで子供っぽい。いいじゃないか。美少女だったら内面なんて瑣末な問題だ。だから別にそれはいい。それはいいのだが。


「そういやケリオン。この前新しいTシャツつくったんだぁ〜。どうかな?」


 そう、その問題点とは。


『『『クソダサい』』』


 服がダサすぎることだった。



 とりあえず出発しようということになった。


 いやまあ分かる。服がダサイくらいでめげるなよってな。昨日の俺だったら間違いなくそう言う。

 だが、彼女のセンスは常軌を逸している。そらもう、普通のダサいがプールの底だったら、彼女のファッションはマリアナ海溝どころかマントル突破してセンターオブジアースだ。それでいて彼女に自覚がないので始末に負えない。


 未確認生物が誇らしげに印刷された紫色のTシャツはまだいいだろう。クソダサTシャツみたいなのもあるしな。前衛的と無理やり判ぜられなくも……いや、できねえな。まあ、Tシャツの話はいい。それはまだ一番の問題点じゃない。


 靴下を手袋代わりにしているのもまだ理解できる範疇だ。どギツイピンクの付け羽が背中ではなく後頭部から突き出しているのもタケコプターのノリだと言われれば黙るしかない。


 だが、それらをすべて身にまとうことによって起こる相乗効果は並大抵のものではなかった。


 ちなみに前回のケム爺暴露事件は違う精霊が行ったらしい。叱っといたとのことで、その子は今地上へパシリに行かされてるのだとか。なにそれ、俺もついて行きたい。


「そういやケリオン。なんでお前、こいつら連れてるんだぁ?」


「仕事じゃよ、仕事。お前と違って無職じゃないからの」


「わ、私だって仕事してるわっ。偉大なる冬の主様が起きればいっぱい仕事あるし!」


「いつ起きるか分からん存在を言われてものぉ」


 ケム爺は知り合いと言っていたが、どうやらかなり仲がいいようである。精霊っていうからにはもっとお淑やかだと思っていたのだがかなりフランクだ。


「ふぁ●く!!」


 というかガラが悪い。どこの高校のギャルだよ。


「なあ、冬の主っていうのはなんだ?」


「あなた常識ないわねぇ」


 うるせえ。


「異世界から来たばっかなんだよ」


「そういやそうね。じゃあ教えると、世界に6柱しか存在しない大精霊の1柱。大精霊っていうのは、そのまんま私達の親玉って認識でいいわ」


 なるほど、大きい精霊だから大精霊。分かりやすい。冬の主ってことは、寒さとかを司っていると考えるべきだろう。この分だと夏の主とかもいそうだな。


「でも精霊って大精霊から生まれる眷属だから絶対服従なわけ。大精霊は幾らでも精霊を生み出すことができるし、操れるバルトの出力も桁違い。それこそワンモーションで街一つ壊せるわね」


 そういって精霊はボクシングポーズをして空中を殴った。

 なるほど、地球においての核兵器的なレベルだ。いや、それ以上か。

 火星の星間爆撃機と同レベルと考えた方がいいかもしれない。。事実上、あれに対抗できる兵器はあの世界には存在しない。


 ちなみに地球側がそんなの何に使うんだと聞いたところ、火星側の返答は【我ら人類の植民圏の平和を維持するため】とのことだ。火星以外にそんなものを作れる団体が人類には存在しないのでつまり、宇宙人に対抗するためということとなる。

 火星は今の所、宇宙人の存在を発表していない。が、明らかに認知している。必要ない筈の兵器開発が盛んなのもその証拠だ。


「ちなみに眠っているというのは?」


「んー、あなたこの迷宮ってなんで空圧が一定だったり、魔導具をスポーンさせたりできると思う?」


 一見、繋がっていない答え。だが俺は瞬時に理解した。


「もしかしてこの迷宮の動力源って……」


「そう、我らが主がこの迷宮の動力源。冬の主様は最深部で封印されてるわけ。どうよー、ビビった? ねえビビった?」


 ウザくてダサい精霊は置いといて考えを巡らす。

 この迷宮の規模はビルってレベルじゃない。下手すりゃ街一つを運営するのと同じレベルだ。大精霊というのはエネルギーの塊ということになる。


「でさ、最近冬の主様の封印術式が取れかけてんのよ。ちょーヤバくない?」


 ちょーヤバいな。

 まあ俺には関係ないけどね。この迷宮だってアイシャ助けたらすぐ出るし。

 俺はアイシャと再会したらすぐに彼女の本拠地まで行くつもりだ。つまり、連合国の中心地である。

 そこで和田信用金庫をやり直す。暴力で勝てないのなら経済力で圧倒するしかない。勇者の名前を使えれば大きな信用を得ることができるだろう。

 信用とは財産だ。その為にもアイシャを必ず救出する。


「ん、そろそろ冬氷の間の出口っぽい。ケリオンから次のエリアについて説明は受けてる?」


 それは昨日聞いた。


「ああ、何でも乱磁の間って名前らしいな。イマイチ想像がつかんが」


 ケム爺の話では磁場が狂ったエリアらしい。区分上、上の冬氷の間と同列に並んでいるがどちらかというとこちらが迷宮本来の機能であり、冬氷の間は自然に出来上がってしまった環境なのだとか。おそらく冬の主とやらが原因なんだろう。


「さあ、見えてきたぞ」


 洞窟の出口に広がるのは、異様な光景だった。

 一軒家程もある巨大な石が宙に浮き、それらが乱雑に動き回る。空を飛んでいるのは奇妙な形をした魔物だ。大地はなく、浮いた石の下には漆黒の闇が広がる。


「カンダラ迷宮第二エリア。乱磁の間。乱雑にに動く巨石群を時に利用し時に避けながら行くアスレチック型迷宮。魔物は侵入者に対しては常に弾幕を張ってくる。どれだけ速く進めるかが肝の……」


 精霊のピンク羽の後ろで岩が勢い良くぶつかり、轟音を立てて粉砕された。


「超高難易度ダンジョンだね」


 あ、これ無理なやつだわ。



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