第4話
「どうしたの?」
メンディアの声がした。
砂塵が晴れていく。
「今日のあなた、つまらない」
「そう」
「もっと必死になってよ。これが最後なんだから」
最後。
その言葉が胸に刺さった。
アムネリスはゆっくりと右手を上げた。
掌の上に、淡い光が集まる。
メンディアが笑みを消した。
「……それ、何?」
「あなたを殺すためのものではないわ」
「じゃあ何?」
――答えない。
アムネリスの背後で空間が歪み始めた。
最初は小さなひびのようだった。
やがて黒い裂け目となり、その奥に無数の光が見えた。
星ではない。
世界だった。
時間の彼方にある、別の場所。
メンディアが眉を寄せる。
「アムネリス」
初めて、その声に警戒が混じった。
「何をするつもり?」
「あなたはここでは死なない」
「は?」
「私も死なない」
「何を言って――」
アムネリスは踏み込んだ。
メンディアも反射的に剣を振るう。
金属音。
火花。
アムネリスは刃を受け止めながら、もう片方の手をメンディアの胸へ押し当てた。
光が弾けた。
「待って」
メンディアの表情が変わった。
「アムネリス」
二人の身体の間から強烈な光があふれる。
「あなた……何を知ってるの?」
アムネリスは一瞬だけ目を閉じた。
すべて話したかった。
六人の仲間がどうなったのか。
この戦いが最初から仕組まれていたこと。
自分たちは王座を争っているのではなく、
七人目の生贄を選ばされていただけだったこと。
そして最後に残った一人さえ、
真の勝者にはなれないこと。
だが時間がなかった。
この場所も安全ではない。レジェンダリーは見ている。
「ごめんなさい」
アムネリスが言った。
メンディアの目が見開かれる。
アムネリスが謝ることなど、ほとんどなかった。
「ちょっと、待ちなさいよ」
「生きなさい、メンディア」
「アムネリス!」
光が二人を呑み込んだ。
メンディアが手を伸ばす。
その指先がアムネリスの頬に触れる寸前、
彼女の身体は消えた。
声も。
剣も。
気配も。
すべてが。
そこには何も残らなかった。




