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【ほぼノンフィクション】実際にあった怖い話  作者: なかはら 菊


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2/3

カリ、カリ、カリ……


________***


これは実際にあったお話です。

私は昔、一年間ほど祖母の家で居候(アリエッティ)していた時期がありました。

その際、2階のとある部屋を間借りしていました。

そこは母の元自室でした。母の私物はほとんど無く、あってもせいぜいベッドとカーペットくらいで、他は物置同然となっていました。

その部屋は少しいわく付きで、過去に寝泊まりをした事がある兄弟や親戚は皆口を揃えて『音が気になって眠れない』と、その部屋を嫌がっていました。

しかしながら古い家にも関わらずその部屋にはエアコンがあり、何より憧れだったベッドもあります。私自身、子どもの頃に何度かその部屋に寝泊まりした事があり、その際特に何も無かったので、当時の私は喜んで元母の部屋で居候(アリエッティ)する事にしました。

もちろん古い家なので最初の頃は人並みの出来事もありました。長い間人間の出入りが無かったからか、最初の数ヶ月でデカい虫に遭遇したりしました。

ですが、その事を除けばものすごく快適に過ごせていました。


けれどその音は、ある日急にやって来たのです。


カリ、カリ、カリ……


それは夏の黄昏時、ベッド足元側の壁から音がするのです。

最初は驚きました。

けれどすぐ音の正体がわかりました。


カリ、カリ、カリ……


ネズミが、壁の内側からこちらへ向かって齧る音だったのです。

不幸中の幸いだったのが、ネズミが部屋へ侵入した形跡が今迄無かった事。そして何より、私は子どもの頃にハムスターを飼育していたほどに小動物を愛していたため、正直その音や存在はむしろ愛おしく感じるくらいでした。


カリ、カリカリカリ……


ただしそう思っていたものの、愛おしく思えた期間は長くは保ちませんでした。


カリ、カリ、カリ……


その音は寝る時間も構わず鳴りつづけました。

段々主張が強くなっていく音。またこの頃は社畜故の疲れや生理2日目でイラついていた事もあったので、私はネズミが居る箇所を『壁ドン』ならぬ『壁バン』をする事で応戦してしまったのです。



これが悲劇の始まりでした。



その日を境に、ネズミは私が部屋に入った瞬間、今迄よりも強く齧るようになったのです。


ザシュッ ガリガリガリガリ


私にはわかります。

あの『ザシュッ』は、私の気配か匂いに気付いて天井から壁へ降りて来た音。

そして後の『ガリガリ』は簡単。室内側へ向かって壁を齧る音。


"ここは俺の縄張りだ"


激しく主張しているのは火を見るより明らかです。

こうして、私とネズミの陣地争いが始まりました。本当に色々と手を変え品を変え、互いの場所を主張しつづけました。


①ネズミが嫌がるという超音波を購入

→全く効果無し

②YouTubeで猫の鳴き声を壁に向かって流す

→一瞬怯んだが、以降効果無し

③祖母が通販で買って来てくれたネズミが嫌がる匂い袋を置く

→効果はあるが一週間ほどで帰還

④ダメ元で音が出るピンポイントを狙って壁バンで応戦

→秒で帰還



ザシュッ ガリガリガリガリガリガリガリガリ



このままでは壁に穴が空き、ネズミとあいまみえてしまう。

流石に雑菌まみれでハムスターよりデカいらしいネズミの相手をするのは嫌だし、万が一噛まれでもしたら、今後愛するハムスターさえ怖いと感じてしまうかもしれない。


そう思った私は、とうとう根負けして祖母伝てで建築の関係者を呼んで貰う事にしました。

『これでようやく…』と思ったのも束の間、古い家特有の構造上、ネズミの通り道を塞ぐ事は不可能と言われてしまいました。

なすすべも無く途方に暮れていたそんなある晩、とうとう奴らは本格的に動き出したのです。

ベッドの真上の天井から音がしました。


チューチューチュー

トタトタトタトタ

トタトタトタトタ

チュッチチチ

ガリガリガリ…


1匹2匹、なんて数から出る音ではありませんでした。

恐らく10数匹以上居るであろうネズミ達が、天井裏で大運動会を始めたのです。


タッタカタッタカ

カリカリカリカリカリカリカリカリ

チュッチュチュ

ガリガリガリガリガリガリガリガリ

タカタカタカタカ

チューチューチュー


結局この夜が切っ掛けで気分が悪くなり、部屋でゆっくり過ごすどころか眠れなくなった私は、泣く泣く祖母宅から引っ越す事にしました。

私は家賃等の費用を安く抑えられ、祖母の方は "成人済みの孫" という自分以外の人間が居る安心感・家事等の負担軽減でWIN-WINの関係だったのですが仕方ありません。

私が、ネズミ達に敗北したのです。



________***


それから数年、私は結婚し、お腹に新しい命を宿しています。

祖母にはすでにひ孫が複数人居るのですが『遠くの孫より近くの孫が可愛い』『これからいつでもひ孫に会える。そう思うと生活に張りが出る』と、我が子の誕生を楽しみにしてくれています。

そんな祖母がニッコリと笑って言うのです。



「いざとなったら、また2階に住んで良いからね」






勘弁してください。


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