人影
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これは実際にあったお話です。
遡る事数年前、当時は彼氏兼婚約者・現夫である男性と同棲し始めた夜の事。
その日は、今夜よりも涼しさが増している秋の夜でした。
「……」
ふっと目を覚ますと、感覚的にはまだまだ朝とはほど遠い暗さでした。
私は高校生くらいの頃から寝付きがあまり良い方では無く、寝入るのに時間が掛かったり、途中で目が覚めたり、悪夢を見て寝覚めが悪かったりする事がありました。また、体温が高い方だからか、エアコンを入れていても寝苦しさで起きる事も日常茶飯事でした。
しかもその日の夜は涼しさが増してる秋の夜だったので、部屋の襖を開け、風の通りを良くしていました。それでも途中で目が覚めてしまったのでした。
『どうせまた夜中の2〜3時くらいだろう』などと考えながら、背中に籠った熱があまりに不快だったので彼が寝ている方へと寝返りを打った……その瞬間、
「「……」」
彼の足元襖側に、2体の人影が座っていたのです。
何故 "人影" と称しているかと言うと、中肉中背のように見えた "それ" は、薄暗くボヤけた身体で座り込んで、彼の顔を見つめていたからです。
そう、目が付いていたのです。
まるで闇夜に光る獣のように白く怪しげに光る目。それが2体の人影両方に付いていました。
しかもそれだけでも異様な光景なのに、その人影達は顔の輪郭が人間離れしていました。
丸みを帯びた三角形のような、けれども少し形が歪んでいるような……そんな奇妙な顔の形をしていました。
私は咄嗟に、寝惚けたフリをして再び彼を背にした向きへと寝返りを打ち直しました。
すると、人影の方から声が聞こえていきました。
「こ/△@が%〆+…」
「€°#+//○*¥…」
囁くような小さな声でよく内容は聞き取れませんでしたが、確かに中年から年配くらいの女性二人の話し声がしました。
(◯◯さん…ッ!)
蒸し暑かったはずの部屋が一気に冷え込み、私は彼の無事を祈るばかりでした。
と言うのも、若い頃霊感がかなり強かったらしい私の父曰く、『例え霊にでくわしても相手にしない事。反応が貰えて嬉しくなったり、助けて貰えると思われたら付き纏われるからな。とにかく無視しつづければ、その内向こうも諦める』と昔教えて貰っていたからです。
少なくとも彼は寝ているようだしうなされている様子も無いので、下手に刺激しない方が良いと判断しました。
それに過去に2回金縛りに遭っている私としても、1対1はあっても2対1の経験が無かったので本能的に勝てないと思ったのも、今振り返れば大きかったです。
そして、あの時確かに気を張っていたはずなのに……私はいつの間にか眠りに落ちてしまいました。
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翌日、彼は特に普段と変わり無く過ごしていました。
私はそんな彼を見ながら、
(すぐに言っては彼を怖がらせてしまうかもしれないし、もしあの "人影" が話を聞いていたらまた出て来るかもしれない)
そんな事を考えて日々を過ごしました。
以降は特に人影を見る事無く過ごせていたので、私は安心していました。
「ねぇ◯◯さん、実はちょうど1ヶ月前くらいにね……」
私の話した "人影" に彼は少し驚いていましたが、実際にあったオカルト話(注:主に父の実体験)を以前から話していた事もあって、すんなりと受け入れてくれました。
そして開口一番にこう言ったのです。
「えっ、そういえば【私】さん、この間その "人影" っぽいのと話してたよ」
「…………え?」
彼の話を根掘り葉掘り聞くと、どうやら私が人影を見た日以降の……彼に "人影" の事を話した日よりも2日前、偶然夜中に目を覚ました彼が『見た』と言うのです。
「€×>^¢・+=?」
「☆♪♡◎☀︎!」
人影と仲良く話す私の姿が……。
彼が言うには、目を瞑っている様子の私は、楽しそうに "人影" と話していたそうです。
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こんな不思議な出来事を通して私は結論付けました。
(あの "人影" は亡くなった父方の『祖母』と『大伯母』。そういう事にしよう)
と。
と言うのも、彼に指摘された夜は珍しく嫌な夢も見る事無く、楽しい気分だった事を覚えています。
ならばもうあの "人影" は男の気配が一切無いように見えた私が彼氏と同棲し始めたので、『どんな男か見に行こう』くらいのノリで来たのかもしれない、と考える事にしました。
子どもの頃に亡くなった祖母も、大学卒業間近で亡くなった大伯母も、どちらも私の事を可愛がってくれていました。あと父方の血縁者なので、どちらとも確実に霊感が強いです。過去にご先祖様らしい霊が少なくとも2回、父の実家に出ています。
(どうせなら私より独身貴族とは言え、跡取りの兄弟の方に憑けば良いのに…)
そう他人事のように思うものの、どうも去年花火大会へ行った際も、ふと亡くなった祖母の事を思い出したタイミングで誰も居ない後方から背中をトントン、と優しく叩かれたりしているので、多分今も私の近くに居るようです。
なおあの "人影" は、襖を寝る時は必ず閉めたり、近くに塩を置いたりと工夫しているからか、以降は姿を見ていません。




