5話① 常闇の譜なし
今回、お話長いので分けて2話アップしております。
どうかよろしくお願いいたします!
―――転生37回目。
通算1081年目の人生。
惑星ノア
3代目星名豊穣の聖女
アステニア・タバサ
没後3048年―――
聖歴5147年
神樹国家エルカディア。
「こちらに来なさい」
「はい。神官様」
艶やかな濡鴉色の髪をたなびかせ、長いまつ毛を揺らした。
長く色白の腕を揃えてゆっくりと指を組む。
大聖堂にある5柱のうち、豊穣の女神像の前に跪く私。
その頭に優しく手を乗せ、白髪混じりの神官は何かよく分からない言葉を呟く。
いつもの日課だ。
「さあ。女神様からの加護は頂いた。今日も一日、我が国、愛する民の為に尽くしなさい」
「……はい。神官様」
もう一度祈りを捧げた後、静かに立ち上がり、その場を後にする。ヒンヤリとした神聖な空間を一歩出ると春の日差しが穏やかに中庭を照らしていた。
チラッと大聖堂の入口で順番を待つ聖女や、掃除をしている聖女候補と目が合った。
コソコソとこちらに侮蔑の視線を流し陰口をたたく。口角を歪にあげて、楽しそうに。
……いつもの事だ。
気にせず立ち去ろうとするとまたあの言葉が聞こえた。
「常闇の魔女め」
「役立たずの癖に……生意気」
「譜なしが、早く出ていけば良いものを」
中庭の回廊で柱を磨いていた聖女見習いが、私を転かそうと足を伸ばしているのに気付き軽やかに躱す。
チッ
舌打ちをする金髪の彼女に私はワザと振り返り、薄く笑みを浮かべた。
―――今から14年前。
凍てつくような雪の降る夜。
またこの惑星ノアに生まれ落ちた私。
今回はドワーフではなく人間だ。
この世界の人々は、生まれ落ちると直ぐに教会へ向かう。
女神からの祝福をうける為に。
我が子が幸せになれますようにと、そんな感覚で。
普通ならば祝福と共に、幸福の祈りを込めてピアスを開けて終わり。
なのだが――
教会で神父が洗礼をした瞬間、母の腕の中で白金色に輝く私の体。
そして……。
一瞬にして母の足元から草が力強く伸びる。頑強な石畳は粉々に砕けていた。
「こ……これは大変だ……」
慌てた神父が裁判所に連絡を入れる。
しばらくすると神官が現れ、神父から事情を聞いて母から大切そうに私を預かった。
この世界では聖女と認定されると、神の子として扱われ、親とは離れて暮らさなければならない。
母は涙を流し、神官に抱かれ馬車で走り去る私を雪の吹き荒む中、ずっと立ったまま見送ったという。
一生会えなくなる娘の幸せを願うように。
悲しいが仕方ない運命。
惑星ノアに住む人々がここまで信じ、崇拝する女神とは。
この世に実在するとされる上位種で
それぞれ異なる『権能』を持ち、人々を導く五柱の神だ。
戦陣の女神ナターシャ
治癒の女神ティターニア
叡智の女神タミア
豊穣の女神フレイア
最後に、唯一加護を落とさない創世神、愛の女神エヴァリス
聖女として女神から加護を受けた赤子は、王都にある裁判所にて、加護を与えた女神の神託により名を授かる。
系統は分かりやすく、輝く色が違う。
叡智は青、戦いは紅、癒しは緑、豊穣は白金。
中でも豊穣の加護持ちは滅多に生まれない。
各国で10年に一人程度の割合だ。
レアだが、能力は大したことはない。
雨を降らせたり、植物の成長を促進したり、気候を安定させたり。動物の繁殖を促したり、その程度。
たとえ力は弱くとも国に一人居れば事足りる。
居てもそんな需要ないけど、まぁいないと困るかなぁ?
そんな能力。
産声をあげる私に
叡智の聖女が手をかざす。
淡い白金の光が私を包んだ。
「まぁ、なんと珍しい。今年は豊穣の加護持ちが多い。この子で5人目か……では女神様からの祝福を授けましょう」
自動手記という方法で、聖女がガラスペンに神聖力を流すと、勝手にペンが羊皮紙の上を走り出す。
私の名もまた、他の聖女達と同じように
豊穣の一柱により名を授かろうとしていた。
美しい手で羊皮紙を持ち上げ、叡智の聖女が厳かに口を開く。
「決まりました。……彼女の名は――」
次回は20日の夜8時更新です。
どうか引き続きこのアホな澪桜の転生物語をよろしくお願いいたします!




