24話 テレサ、悪役聖女になりきる
「テレサ様ァ! どーっすかー?」
ラクダを撫でながらベンが声を張り上げる。
50mほど離れた位置でしゃがんでいた私は、立ち上がって叫んだ。
「ダメだー!! トゥギトゥギ〜」
ベンのラクダ、カビーは名前の通り大きなラクダで、二人乗り用らしい。
私はコブの前、首に乗る。
そして運転手のベンは後ろ。
手際よくベンに乗せてもらい、ゆっくりカビーが歩き出した。
「ああ〜マージかー。今度は左側探します?」
「そーだね。あんま街道から離れるのも良くないだろ」
「グエー」
優雅に見える、ラクダの歩み……いや、揺れが……ケツに悪い!!!
もうあれだ。この国の人はほぼ痔主確定だ!! ※偏見
それとも乗り方にコツが――
「おーい。テレサ様! 着いたッスよ」
腰を浮かせたり、力を入れたり色々試していると、すぐ目的地に着く。
あれだ。ローラ作戦? 等間隔に調べていくあれ。
専門家じゃないど素人だからよく分からんけど。
降りやすいように、膝を折ってくれたカビーからゆっくり降りて、その場にしゃがみこみ、砂に触れる。
目をつぶって集中した。
多分、ここも違う。近い気がするがここじゃない。
ラクダから歩数を数えながら離れていく。
10歩。
またしゃがむ。
ここも違う。
するとベンが声をかけてきた。
「てか、そんなんで水脈分かるんすかー? 過去にご経験が?」
20歩ほど歩いた所で振り返り、笑う。
「君、聞いてなかったのかい? 私は雑草しか生やしたことない! そんなもん知るか!」
実際は一回使ったことあるけどね!
怖がるだろうから言わない。
「ええええええ!? じゃあなんで自信満々に言ったんスか!?」
「ふっふっふっ。良くぞ聞いてくれた! うちの国にはね、豊穣があと四人いたんだ。大地二人と、海二人。そして私は勅使へのお使いでよく王宮に行ってたからね! 任務を終えた聖女と顔を合わせることが多かったんだよ! 他の大聖堂出身のやつとか結婚してるやつとかもね!」
「うんうん、それで?」
聞き上手なベン。
私はテンションがあがって回想を始めた。
大根役者の1人演劇の開幕だ。
『ねぇ、やだ! こんな所に常闇の譜なしがいるわぁ! ゴキブリみたいで気持ち悪い!』
『キャー同じ豊穣なんて、それだけで嫌だわ! 最悪!』
聖女の世界は完全なる縦社会。名前で始まり名前で終わると言われるほど、力の強さも容量のキャパも名前で決まる。
その時会った二人は海名持ちでねぇ。
まぁどいつもこいつも高飛車だったよ。
『へーへー。すんませんねぇ』
私は気にすることなく、通り過ぎようとした。
だけどそれが気に食わない聖女に絡まれたんだ。
『何よその態度。癇に障るわね。……それでもなし水脈探しでクタクタだって言うのに!』
ピクっと反応しちゃうよね。
水脈探し? なにそれ、面白そう! ってね!
私は気になったらとことんまで知らないと気が済まないんだけど、豊穣の聖女がそんな事出来るなんて初耳だったから、食い下がって聞いたんだ。
『それはそれは大変申し訳ない。この譜なし、そのような神にも等しい力、見たこともございません!! 凄い! どんな風に探されるのですか? ダウジング!?』
私が諂うもんだから、気分をよくした聖女は饒舌に語り出してくれた。
基本、ただの思春期だ。まぁ根はいい子なんだよ。
『仕方ないわね、私たちの偉業、教えてあげる。……ダウジング? そんな物使わないわよ。地面を触るの』
『ほう? 地面を? なんで?』
『この世界は陰と陽の力が流れてる。陽は神聖力、陰は魔素。世界樹を育てたのはこの世の神聖力でしょ? つまり、大地には神聖力が常に流れてる」
そんなこと意識したこと無かった私は寝耳に水だったよ。
だって私からしたら、そこらじゅう強い神聖力の気配でで溢れ返ってるんだもん。
『な、なるほど、それでそれで?』
『だから大地に触れるのよ。その中から水の気配をさがす。水、木、土、石、それぞれ神聖力の質が微妙に違うから神経使うのよ』
『ほぉ〜! すごい!』
『ま、アンタみたいなゴキブリには一生無理でしょうけどね! オホホホホホ!』
ものすごい高笑いを仰け反って繰り広げた後、ベンに目を向けた。
「どうだい!? 分かったかい!?」
「……なんっつーか。テレサ様が、案外根に持つ性格だって事はよく分かったっス」
「何を聞いていた!! アホぉ!! せっかく水脈の探し方を話したのに! アホぉ!」
ムカつきながらも作業は続ける。そこはね、ちゃんとしないと。
仕事は仕事さ!!
砂に手を当てて物申していると、ベンが爆笑した。
「あははははは! だってテレサ様、面白いんだもん! 演技下手!」
「なんだとぉぉ!? ……ん? あった!! ベンあったぁぁぁ!! 発見だァァァ!! こりゃどデカい水脈だァァ!!」
せっかく、神聖なる偉業を果たしたのに。
歴史的証人の心に深く刻まれたのは、残念な記憶だけだったという。




