10話 独特なラブレター
※今回、若干の虫が出てきます。
気分を害されたら本当にごめんなさい。
虫が苦手な方のGoogle先生での検索はおすすめできません。
あの日の出来事は、誰にも知られる事もなくただ、兵士たちは行方不明とされてしまった。
その後に私達は無事任務を終えて帰国。
バルム国内では遺された武具だけを埋葬し、遺族たちは記念碑に足繁く通って涙したという。
わが国はバルム王宮、元革命軍基地へと足を運び事情聴取をしたらしい。
すると国籍を偽った武器商人から購入した事が判明した。
安全な心身強化薬だと。
あれからより頻繁に大量の聖女要請をしてくるようになったルオス帝国へと、何かを送ったらしい。
するとパタッと動きが止まったという。
私はその話を帰ってから数日後にトムじいさんから聞いた。
だけどもう、それもできない。
今までは
・名前は秘匿(知ってるのはダメガネ勅使と義父神官のみ)
・許可なく出国禁止
・王命は絶対遵守。
これだけだったのに。
2週間が経った今……。
更に王命が追加された。
大聖堂敷地内からの外出禁止と更には……。
「そこら辺で今日はもう良いでしょう。お疲れ様テレサ」
大聖堂から顔を覗かせ、神官が私に微笑んだ。
「はい」
パンパンと手を叩いて腰を伸ばすように立ち上がった。いつも通り片付けて、散水用の水道まで行き、魔石でできた蛇口を捻る。
勢いよく出てきた水で土だらけの手袋を洗いながらため息をついた。
毎日毎日、草むしりしかする事が無くなった私はもう自力でお金を稼ぐ事ができなくなってしまった。
1日300ジェニ(日本円で300円)程度、神官からお小遣いを貰っている。前はお使いと合わせて600ジェニだったから大打撃だ。
勿論、もう依頼も来ないだろう。
今まで以上に。
……ああ。金もない、毎日草負けしてかゆい。図書館にも行けない。何の楽しみもなくなった!!
帰りのジェラートも!!
赤く腫れた腕をボリボリと掻きむしりながら部屋に戻る。道すがら名も知らない思春期共に笑われるがそんな事、本当にどうでもいい。
一度は使ってみたかったアステニアの技。
あんなに惜しげも無く神聖力を使ったこと無かったけど。
ダメガネ勅使め……どう報告したんだ。
まぁあの様子だとものすごい言い方されたんだろうなぁ。
神官も呼び出されて弁明してくれたらしいが……。
国は私を生物兵器と見なしたようだ。
まだまだ沢山あるアステニアから教えてもらった物騒な技だが……
とりあえず全て封印だな。
これ以上縛られても困る。
コンコン。
「テレサ……少しよろしいですか?」
いつもの優しい声がドアの前でする。
「……はい。神官様」
木の机に座り、退屈を絵を描いて誤魔化していた私は、澪桜の頃とは比べ物にならない絵心の無い体を起こし、ドアに向かった。
建付けの悪いドアがキィィィィと、嫌な音を鳴らす。
ドアの前に立っていた神官を見上げ微笑んだ。
「なんでしょうか?」
眉間に皺を寄せて首を振りながら神官がため息をつく。
「何でしょうかじゃないでしょ……ほら、手紙。書いたんですか?カシアン様宛ての。一昨日あれだけ言ったでしょう? 宰相様から催促されてるんですよ、ずっと」
「ああ、忘れてた! カスアン!」
「カ・シ・ア・ン!!」
「カスィ……アン」
開けっ放しになったドアから覗く部屋の様子に目を移し、神官が首を傾げた。
「……あれ? 机に座ってたんですか? じゃあなんで手紙書かないんだテレサ……」
「むあ」
「意味がわからん。どんな感情ですかそれは。……頼みましたよ!?」
ミドルが薄い顔で迫ってくる。
慌てて頷いた。
「い、今から書きますから……。でも会ったことも無いカス……カシアン様に何て手紙書いたらいいですかねぇ?」
机の方を見て、そのまま神官を見上げる。
少し悩んだ後、私を見て微笑んだ。
「んー。まずは自己紹介と、相手に好意的に思って貰えるような質問と……最後は体に気を付けてなどの労いですかね……男性が貰うと嬉しくなる手紙というのは」
思ったより的確なアドバイス!
コクコクと頷き私は笑う。
「なるほど! 好意なんぞ微塵もありませんが、追加の王命でもあるし逃げられないか! 死ぬほど嫌だけど」
「……」
何かまだ言いたげな神官に私は笑って頭を下げた。
「じゃ、書いたら後でお渡ししますね」
扉を閉めて腕を回す。
「さーて、書きますか」
引き出しから真っ白な紙を出し、サラサラと書き始めた。
「カシアン様へ」
カシアンとは、この国の第3王子だ。先週、私との婚約が勝手に決まった。
この国はよっぽど私を飼い殺しにしたいらしい。
もう、現状ほぼ詰み状態。
彼に私より好きな人が出来てくれたら有難いが……ワンチャン、周さんの可能性もある。
だからまぁ、無下にするのは違うかな。
私なりに誠意を見せようじゃないか。
「初めましてこんにちは。カシアン様はお元気ですか? お天気ですか? お腹は痛くないですか? そうですか。……と」
神官のアドバイスを念頭にいれて更に続ける。サラサラと自分の趣味について語っていく。
「……という訳で、私はカマドウマが好きです。コロギスやリオックなんかもカッコイイですね。カスアン様はどれが好きですか? そうそう、バッタはバター炒めが美味しいですが、くれぐれも生食は控えてくださいね。寄生虫などがいる可能性が高いので危ないです。では便秘に気を付けて。さようなら。……テレサ……と」
真っ白な封筒に、綺麗に折りたたんで入れ、黒い封蝋で封印した。
「ぃよし! 出来たぁぁぁ! 我ながら優しい、完璧なラブレターだ!!」
私は手紙を掲げ、テンション高く笑った。
……この時一箇所、致命的なミスを犯してる事にも全く気付かずに。
次回は4日更新です!どうかよろしくお願いいたします!




