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BAR  作者: もふもふもん
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邂逅9

 次に氷室吾郎は、自分で作業テーブルの上に並べた酒瓶の中から「スミノフ」と言う名前を持つウォッカの瓶を取り出すと。木村本部長とうららの真ん中に立ったままで体だけ左に向ける。そうして、マスターの方に体を向け自分の師匠でもある人物に、大きく深く一礼をする事で次に作るのは、マスターの為の一杯である事を周りに知らしめた。


 そして一礼した後に体の向きを元に戻してから、手に持っているウォッカの瓶を、クルンクルンとパームスピンさせながら、ボストンシェイカーの下パーツの中に特別何かパフォーマンスをする事も無く、目分量で「スミノフ20ml」を注ぐと、次に先程使った物と同じ「ホワイトキュラソー」の「コアントロー」の瓶のネックを持ち、手前方向に向け空中に放り投げて空中で二回転した酒瓶をキャッチすると、ボトルフリップで利き手に投げ返した後に、少しだけ勢い良く、自分の肩越しに後ろ側へと酒瓶を投げた。酒瓶は綺麗な放物線を描きながら、氷室吾郎の肩口辺りを通り過ぎ、背中側へと落ちていく。


 そして氷室吾郎は小さく「おっと」と言った後に、自分の体を少しだけ動かし調整して、背中越しに落ちてくる酒瓶を見事にキャッチしてみせた。


 そうすると。見た目が派手であったからか、観客と言う名の仮称のお客さま達は、大きな歓声と拍手を、パフォーマーである氷室吾郎に贈る。


 「今行った、体の正面から背中側に酒瓶を投げ、背中でキャッチする技を【シャドウパス】と呼びます。中途半端に酒の量が減っている酒瓶は、中の液体の動きが加わり、不安定に落ちて来ます。それを、見えない状態からキャッチする事から非常に見栄え華やかな技の一つとされています。」


 マスターが自分に見せる為に行ったフレアバーティングの技の一つを、自分の役目と知って自ら説明をする。


 氷室吾郎はマスターの解説を聞きながら心の中で「よし!今の説明なら合格点を貰えた。と考えても良さそうだ。」と感じて、シャドウパスを成功させた「コアントロー20ml」をシェイカーの中に注ぎ入れ。


 最後に「フレッシュライムジュース」の瓶をヒョイっと上に放り投げた後に利き手でキャッチした後に、瓶を半回転空中で回転させた後、注ぎ口が下に来るように持ち替えて、シェイカーの中に「フレッシュライムジュース20ml」を入れ。


 他に作ったカクテル達と同じように、シェイカーの上パーツに氷の塊を二個放り投げてシェイカーの中に入れ。シェイカーの下と上を重ね合わせた後に。


 両方の手を使い。「シャッカシャッカシャッカシャッカ」とリズム良く氷がシェイカーに当たる音を奏でて、中の液体を混ぜ合わせる。


 そうして、十分に氷で冷やされ、シェイカーでかき混ぜられた液体は一つの名前を持つカクテルと言う飲み物へと進化した。


 氷室吾郎は、中身の入ったままのシェイカーをパームしながら、反対の手にカクテルグラスを一脚持ち。

踊るような軽やかなステップを踏むかのように歩き。


 マスターがいつもカクテルを作る場所の前側のカウンターの上に置かれている、コースターを一枚グラスを持つ手の空いてる指で挟んで持つと。マスターの立っている、作業テーブルの丁度、収納引き戸の上に、コースターをそっと置き、その上に指の間で挟んで持っていたカクテルグラスを、クルッと回して脚が下になるようにすると、コースターの上にグラスを置いた。


 そして自分の師匠であるマスターに最大の礼と技術を教えて貰えた事への感謝も込めて、深く深く一礼した後に、 シェイカーをテーブルの上に置かず空中で、上パーツを左右に動かし、真空状態から解き放ち上下に分けた。


 シェイカーの中に入っている少しだけ乳白色の液体をそっとストレーナー越しにグラスの中へと静かにシェイカーを回すように注ぎ入れた後で、氷室吾郎は。


 「カミカゼ。」


 「でごさいます。こちらのカクテルは名前の通り、旧日本軍の【神風特攻隊】がモチーフとなっているカクテルでございます。名前を見ると日本で産まれたカクテルのようにも見えますが、こちらはアメリカで産まれカミカゼアタックの様な切れ味鋭く辛口の味わいから、この名前が付けられました。そしてこのカクテルのカクテル言葉は。」


 「あなた(日本)を救いたい。」


 「です。貴方の持つ卓越した技術は、この日本に無くてはならない唯一無二の物であり、その技術の一端にでも触れられる事が許された私にとっても正に宝であり、貴方は多くの若き志しを持つ若者達を救ってきました。そんな貴方に送るカクテルがあるのならば、このカミカゼ以外は考えられません。」 

 

 そうマスターに自分の思いの丈を言い。更に一礼した後にマスターの前から立ち去り、直ぐ横にあるシンクの蛇口でシェイカーを洗い、水気を切り元の舞台に上がる。


 木村本部長は自身の座る席からカウンターテーブル挟み少し左斜め前に立つ青年に。


 「君の想いは伝わっているよ。きっとね。」


 と、優しい言葉を掛けた。そして流れからして次は僕かな?とネクタイを締め直して、心の準備をする。どんなパフォーマンスでどんなカクテルを作ってくれるのか?を心待ちにしながら……。

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