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BAR  作者: もふもふもん
10/12

邂逅6

 氷室吾郎の準備が全て整うと、木村本部長は横に座る部下の藤田部長の耳元で。


 「藤田、もういいぞ席を変わろうか。」


 そう伝える。隣で木村本部長と氷室吾郎とマスターの三人の間で何があったか?。を自分の左隣に座っている自分が展開している事業のお店で働いてくれている女の子の相手に没頭していて、全く無関心だった藤田部長は「上司に言われてるし、まぁ元々座っていた席に帰るだけ。」だと気楽に考えて席の交代に応じた。


 今から行われる事の一番の特等席に座っていた。と言う事実と、その特等席で見てみたいと言う木村本部長の思惑も知らずに。


 氷室吾郎は、最初に全ての用意した物を四人が座る連なった席の真ん中。うららと木村本部長が座る丁度真ん中を自分が行うパフォーマンスの舞台と決めて、ステンレスラックに入れてある板氷とアイスピックを両手で持ち、カウンターの中を移動し始める。


 そして舞台にと決めた場所に着いて持っていた材料をカウンターテーブルより少しだけ低くなっているカウンター裏の作業台に置こうとすると、今までは一番奥の、しかも直ぐ真横に壁があり壁の陰に埋もれていた若いホストがカウンターの中に立つ、自身にとってとても懐かしく感じる人が立っているのを認める。


 そして静かにお酒を楽しむと言うコンセプトを持つ小さなBARの店内隅々まで届くような大声を突然上げた。


 「あれ?氷室さん?氷室さんですよね?あっ!やっぱりそうだ!氷室吾郎さんだ!」


 そう言うと声を掛けられた方も、突然自分の名前を大声で叫ばれて、声のした方を見ると此方にとっても懐かしく思える人物の姿を見付ける。


 「お〜〜!お前ひじきか?賄いバカ食いの売れないホスト筆頭のひじきだよな!」


 そう言って二人してバカデカい声を張り上げながら久の再会を喜ぶが、本人達以外の事情を理解してない者達からは突然大きな声を出し合って何やら叫んでいる二人に「うるさいな」と言う感想のみを与える。


 「懐かしいな!元気だったか?」「はい!元気でしたよ!氷室さんは?」「俺も元気元気、それで?店はどう?」「お店も相変わらず元気に営業(やってます)よ!」「そっかそっかうん?この横の女の子はひょっとして?」「はい!僕の初めての担当のお客さまです」「お〜すごいな!ひじき!良かったな!」等と周りを無視してデカい声で再会を喜び会っていたが。カウンターのこちら側で一人の男が、左隣二つ向こうの男に。カウンターの席のある方から見て一番右の狭い通路に立つ男が、カウンターの中でスレンレスラックを両手に持つ男に。それぞれ、そろそろ怒りのお仕置きを喰らわせようとしていた。


 「「氷室。ひじき!うるさい!黙れ!後説明!」」


 二人から同じ事を言われた二人は絶対に逆らえない人からの言葉に縮み上がり、口を塞ぐと周りに向けて、ペコペコと頭を下げて回る。


 「ひじき先ずは説明してくれるかな?どうやら面識があるのは理解した、彼は君にとってどう言う立場の人で、君は彼にとってどう言う立場の人なのかな?」


 と木村本部長に問われた、東堂聖は声のトーンを普段話すぐらいまで抑えて。


 「はい、本部長。彼は氷室吾郎と言う名前の人物で、二年程前の夏から秋に掛けてクラブEDENのキッチンで一緒に働く仲間でした。前のキッチン担当が急に辞める事になり次の候補が決まるまでの繋ぎとして、店長が何処か知り合いの伝手を使い連れて来たのが彼です。因みに毎日美味い賄いを作ってくれました。」


 そう言って皆に自分と氷室吾郎の関係性を説明すると、意外な所から反応が返ってきた。


 「あっ!私知ってる!と言っても名前と何した人なのかぐらいだけど。何回も店長や他のヘルプに着いたホストの子達が話してるのを聞いてたから。」


 そう言って、木村本部長の隣に座る可愛らしい女の子が木村本部長や藤田部長等に自分が聞いた話しを聞かせた。


 「何かEDENには伝説の人が居たらしくて、その人はマジシャンの様な華麗な腕前で料理でお客さんを虜にしたと思ったら次の日には、アーティストの様な手捌きでフルーツを芸術品に昇らせて、そして初めてキッチンで働くバイトなのに担当の姫が出来て、その月の売り上げでNo.1に成った伝説のシェフ。ゴロー・ヒムーローさんだよね?」


 と自分を担当するホストに確認した。


 自分も率先して悪ノリして面白おかしく氷室吾郎の事を話す店長の片棒を担いでいた東堂聖は「はぁ?そりゃ誰の事だよ?誰だよゴロー・ヒムーローとかフザケた名前付けた奴は」と一人憤る氷室吾郎と目を合わせられずに、泳がせていた。


 そうして氷室吾郎を巡る話しは一段落着いた辺りで木村本部長がさっさと次に進める為に、話し始めた。


 「なるほどね、大きく括ると氷室吾郎君も元は私の部下だった。と言う事になるね、何せクラブEDENは【ArcadiaGroup】の一店舗だからね。だから今ここに居るのは、マスターを除き全てが現か元かの違いだけで全員が同じグループの人間と言う事だ。」


 「さて、どうにも話が進まないね。あっ氷室君は準備早くしちゃってね。それじゃみんなに楽しくなるお知らせだ、今から氷室吾郎君がみんなの前で、とっても楽しくて見てるだけでワクワクとドキドキする物を見せてくれる。みんな目ん玉かっぽじって見るようにね。」


 そう言って、全員に向けて言うと、思い出したかの様に氷室吾郎もこれから自分のやる為に必要な準備に入る。


 全ての酒瓶やジュースの瓶等を、うららと木村本部長の間辺りに置き並べた後、マスターの立つ通路横の棚に置かれてある、一つの普通よりも大きなサイズの「ボストンシェイカー」を手にして、舞台の上に立つ。


 舞台の上に立つ一人のパフォーマー。左手を腰に当て、右手は作業用のテーブルに置いたボストンシェイカーを軽く上から被すように持ち、目を瞑った後にコンクリートの剥き出しになっている床を、自分の右足の爪先だけを浮かして床にコン♪と降ろす、それを繰り返してリズムを刻む。コンコンコンコン……と。

そしてそれに合わせるように、利き手に持つシェイカーを前に少し傾けて元に戻してテーブルの上にカン♪と手前に傾けて元に戻してカン♪とコンとカンのリズム音を鳴らしていく。まるで自分で自分を高めて、何かのタイミングを待っているかのように、四人には見えた。


 そして、氷室吾郎が目を開ける。


 「それじゃお集まりの皆々様〜存分に楽しんでくれ!」


 「氷室吾郎のフレアバーティングを!」


 そう言ったと思ったら、ステンレスラックに入っていた板氷を手の平の上に乗せ、クルクルと回転させながら、手元に引き寄せ観客に見せ付けるように腕を前に出して氷を回した後に、指でピタッと氷の回転を止めると、テーブルに持ち手を下に置いておいたアイスピックの尖った先端を指で挟み真上に向けて放り投げた。アイスピックは氷室吾郎の頭の上までクルクル回りながら上に上がり、そして横から掻っ攫うかのように氷室吾郎はアイスピックの持ち手を握り受け止めた。


 アイスピックを使い、氷の真ん中にカッ!カッ!カッ!と一定の間隔で傷を入れ、氷を真半分に割るとそれをまた四分の一。八分の一。十六分の一。三十二分の一と半分に半分にと小さく砕く。砕いた物は、ステンレスラックの中に放り投げ、全ての氷を一定の大きさに割り終えると。テーブルの上に置いたボストンシェイカーの半分に分けて重ねてある上に指を引っ掛けて、自分の方手前に向けて、指を掛けたままで引っ張り投げて、それを後ろを向き、腰の後ろ側で器用に掴んでみせた。


 そして楽しい時間が始まった。

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