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御曹司なのに不採用!? ~冷徹女社長と始めるゼロからの恋と成長録~  作者: 優里


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女王様の指輪







ある日。

蓮は優里と共に来客との打ち合わせを終え、

優里が来客の見送りに向かう後ろ姿を

何気なく見つめていた。



優里の髪がなびいた瞬間、優里の右手の薬指に、

上品ながらも存在感のある

シルバーのリングがきらりと光った。


蓮の思考は一瞬で凍りつき、

全身に冷たい血が巡るのを感じた。




優里が部屋に戻るや否や、

蓮は優里の手を乱暴に掴み、その薬指を凝視した。


「… 優里。それは、何だ」


「…指輪ですが?」


「彼氏か!? その指輪は、どの男からもらった!答えろ、優里!」



蓮の理性は崩壊寸前だった。


優里が既に誰かのものであったという可能性は、

蓮の独占欲にとって受け入れがたい「裏切り」と同義。


優里は、この瞬間、

蓮の自身に対する異常な執着を

初めて肌で感じたのだった。



蓮の激しい動揺と嫉妬に満ちた詰問に対し、

優里はまだ蓮の独占欲の深さを

完全に理解しておらず、

彼の質問に答えることが自分のプライバシーを

侵すことに繋がると感じていた。


彼女は、蓮に対して一歩も引かない、

ツンツンとした態度で応じた。



「…私の私生活に関して、あなたにお答えする義務はないと存じます」


優里の言葉は、氷のように冷たく、

蓮の熱烈な嫉妬を真っ向から跳ね返した。


「業務に支障をきたすような事はありません。」


優里の毅然とした拒絶の態度は、蓮の動揺をさらに深めた。


優里の背後に、自分が知らない「男」の存在を強く感じ、

その嫉妬と独占欲は、制御不能な領域へと足を踏み入れた。




「… 優里。なら、聞かせてくれ。その指輪の相手は… 俺じゃなくても、君を…幸せにしてくれる人なのか?」


蓮の声は、御曹司の冷徹さや

威厳を完全に失い、

まるで飼い主に見捨てられることを

恐れる子犬のようだった。


「俺は…君の隣にいる資格がないのか。君は…俺の愛なんかより、普通の幸せを望んでいるのか」


優里は、蓮の予期せぬ弱さに一瞬たじろいだ。


彼女のツンとした態度は揺らぎ、

優里の心のなかで、

蓮への警戒心と、切実な感情への同情が

混ざり合った瞬間だった。



(…あの時、結局はぐらかされて終わったな)




あのはぐらかされたあの日から数日後、

蓮は、いつもと変わらぬ完璧な装いで

会社に出勤した。



(…今日こそ彼氏の正体を暴いてやる!)



しかし、蓮がオフィスにたどり着き、

真っ先に優里のいる社長室に向かおうとしたとき、

オフィスでは、優里に対する羨望と同情、

そして憶測が入り混じった囁きが飛び交っていた。


特に、優里の才能を知っていた古参の女性社員は、

優里の置かれた状況を複雑な思いで見ていた。




「優里さんは、蓮様がくる前、あの若さで一人で全てをこなすのに、本当に大変だったのよ」


「え、そうなんですか? まるでお姫様みたいに見えますけど」


「違うの。優里さんのあの美貌と、天性の才能は、引く手あまたで、どこへ行っても人の目を惹きつけた。でも、それが優里さん自身を晒すことにも繋がって…」



女性社員はカップを握りしめ、憂いを帯びた目を向けた。


「世間はね、テレビやネットニュースでは、『若くして成功した美貌の社長』っていう、明るいことしか記事にしない」


「でも、その裏で、優里さんがどれだけ大変な思いをしているか、本当のところは誰も知らないのよ。蓮様の傍にいることが、優里さんにとって唯一の『安全』なんだとしたら…」



女性社員たちの囁きは、

優里が外界で晒されていた「軽薄な欲望」と、

蓮の存在が優里にとっての「絶対的な保護」に

なりつつあるという、

優里と蓮の関係の真実の一面を静かに物語っていた。



特に古参の女性社員は、

優里が蓮のくる以前に纏っていた

「孤独の鎧」について語った。



「でも、いつも綺麗な指輪をしていますよね。誰か大切な人がいるから、あんなに輝いているんだと思っていました」


女性社員は静かに首を横に振る。


その表情は、優里の孤独を知る者特有の

深い憐憫を含んでいた。



「あれは… 鎧よ。男除けのための。私たちが想像するような、彼氏がいるわけではなかったはずよ」


「あの美貌と才能の せいで、優里さんの周りに群がる人は、真実の愛なんかじゃなく、下心ばかりだったの。だから、指輪をして、『既に誰かのものだ』っていう虚像を作って、自分を守っていた」




優里の過去に纏っていた「指輪」という嘘の保護は、

優里の孤独と外界の欲望から

逃れたいという切実な願いを象徴していた。



「蓮様が来てから、優里さんの周りの環境はガラリと変わったわ。誰も不用意に優里さんに手を出さなくなった。完全に消えたわけではないけど、減りつつあるのは間違いないわ」


「あの美貌と才能を持っていて、誰のものでもない状態でいることが、優里 さん を一番危険に晒していたのよ」


「…あの御曹司様のおかげかもしれないわ。優里さんは、今、誰も手を出せない『王の所有物』として、ようやく安寧を得られる可能性がでてきたのかも」



蓮の耳に届いた

「引く手あまた」

「男除けの指輪」

「一人で大変だった」という断片は、

優里への独占欲と保護欲を激しく揺さぶった。



女性社員が囁き合ったその瞬間、

背後から冷たく、絶対的な声が響いた。



「…どういうことだ」



蓮の突然の出現に、女性社員たちは青ざめ、

持っていたカップを落としそうになった。


「れ … 蓮様!あの…」



蓮は言い訳を許さず、

一切の反論を封じる重みを持たせて

質問を続けた。



「優里がどんな目に遭っていたと?… 俺の優里が、他人の欲望に晒されていただと?」



蓮の瞳の奥には、優里を穢した過去の全ての人間に対する

激しい殺意が揺らめいていた。


優里が自分の庇護に入る前に感じていた

「孤独」と「危険」を具体的に知ることは、

蓮の支配欲をさらに絶対的なものへと昇華させた。




「…はい。優里さんは、あの美しさと才能のせいで、常にターゲットにされていました」


「蓮様が現れる前、優里さんは…断り切れない相手からの、食事の誘いや、ひどい言葉、軽い接触 …そういった『ハラスメント』に、日常的に苦しんでいました」


「誰に相談もできず、仕事を失うわけにもいかないから、笑って耐えていたんです。あの指輪は、優里さんの心を守る、ただの『お守り』でした…。誰にも愛されていなかったから…」



蓮の表情は、その告白を聞くにつれて、

怒りを通り越して深い苦痛と激しい独占欲へと変化した。


優里が蓮の庇護に入る前に、

一人で孤独に耐えていたという事実は、

蓮の心に強烈な衝撃を与えた。



「…そうか。俺が優里の世界に間に合わなかった、全ての過去が…」


「優里さんは…ずっと、1人で耐えてきていたんです。それしか方法がなかった」


「優里さんは、自分が弱みを握られれば、社員たちが、会社が危険な目に遭う ことを誰よりも恐れていました」


「だから、自分が全てを引き受けて、ヘドロを浴びるような屈辱に耐えるしかなかった。そうすることでしか、彼女は会社を守れなかったんです」




優里の「孤独な選択」は、蓮の想像を打ち砕くほどの、

崇高で悲痛な自己犠牲の精神だった。



「…優里…。君は…なんて…」


「…蓮様。優里さんは、もう十分に苦しみました」


「あんなに強く見せていたけど、優里さんは本当は、誰かに守られたいと思っていたはずです。蓮様が傍にいる今が、優里さんが本当の安寧を得る唯一のチャンスなんです」


「…どうか、優里さんを助けてあげてほしい。優里さんの孤独を、蓮様の絶対的な愛で埋めてあげてほしいんです」


「… 分かった」


「…君の言うことは分かった」


蓮は優里の過去の苦痛を、自らの責任として受け止めた。


「優里は…俺の宝だ。俺の全てだ」


「俺は、優里も会社も、社員も…すべてを守る」


「二度と、優里に手を出させない。二度と、優里が苦しむような事態を招かない。それが、俺の絶対的な使命だ」




蓮の言葉は、単なる宣言ではなく、優里の心の安寧と、

会社の絶対的な安全を永遠に保証する、

「契約」だった。


女性社員は、蓮のその力強さに、

優里の未来が永遠に守られることを確信したのだった。




「… 君を二度 と、あんな目に遭わせない。優里。俺 の 全てをかけて、君を守る」



蓮が優里の過去に揺れていた最中、

噂の渦中にいる人物である

優里が通りかかる。



蓮は優里をウルウルとした瞳で見つめたが、

優里の返答は残酷なほどに冷たいものだった。


「…キモイ」


「仕事中です。公私の区別もつかない方には、ここには必要ありません。」


優里は蓮に背中を向け、

打ち合わせの書類を整理し始めた。


その態度は、

「あなたの個人的な感情は、私にとって何の価値もない」と

宣告しているかのようだった。



蓮は優里の残酷な拒絶に打ちのめされた。


しかし蓮のなかで、優里への独占欲は、

悲しみと怒りと、

優里を絶対に自分のものにしなければならないという

狂気に満ちた決意へと再燃焼したのだった。




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