30 終章
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後日のことである――
事件の事後処理として、表向きはハッカー集団によるもの、また駅前での騒動も光学テクノロジーを用いたものであると発表され、何とか有耶無耶にされることになった。
いわゆる、裏の――怪奇・陰謀界隈の“絵描き屋”的とでも言うべき工作であろう。
――ともあれ、そんなことは置いておき、同じ愛知県は明治村にて、神楽坂事務所の3人の姿があった。
晩秋ながら、天気良く温かい日、
「――まったく。今回、重大な事件だったのか、くだらない事件だったか、よく分からん事件だったな……」
帝国ホテルを前にした水辺に、綾羅木定祐が椅子に腰掛け、コーヒーを片手にやれやれと呟いた。
「まあ、これで、やっと落ち着けますよね」
同じく上市理可も、ほっと息をなで下ろすように言った。
妖狐・神楽坂文も二人と同様にコーヒーを片手に佇んでいたが、「……」と無言で、どこか、疲れているように見えた。
そんな妖狐を、上市はチラッと見た。
「……」
まあ、疲れているのも無理ないであろう。
チートクラスの情報蒐集術の“葛葉”を何度か用い、それに加えてルーマニアと日本の往復、気象操作……、そして最後、碇賀元の投げた棍棒をライフルで狙撃し、月の破壊を防いだのであるから、なかなかの仕事ぶりである。
「明治村、か……」
妖狐が言った。
「何というか、時を超えて“集めた”ような、……ある意味で、こちらもミニチュアな世界ということころか」
「……確かに、な」
「……」
定祐と上市は妖狐の方に耳を傾けた。
「こうしてみると、不思議なものか? 人間というのは、何かを壊すいっぽうで、大事に残そうとするとはな」
「そうだな……。歴史の中で、壊す必要のなかったもの、壊さずに済んだものなど、いくつもあっただろう。まあ、今となっては、どうでもよいことだが……」
「……」
話す二人を一瞥する上市。
「――しかし、その、“残したい”という感情も“残す”という行為も、慈愛とは紙一重の、“蒐集”という欲の一種か……」
「すると、“棍棒”というのは、“破壊”と“蒐集”と……、そのどちらの目的にも使われる道具、象徴だろうな……」
妖狐と定祐が、朧気に交わしてカップを持った手を下ろした。
すると、
「――まあ、そんな堅い話は置いておきだ。上市よ……」
「はい?」
今度は妖狐は上市に話を振った。
「せっかくのハロウィンであったが、忙しくて貴様に聞きそびれていてな」
「へ? 何を、ですか……?」
キョトンと首を傾げる上市。
その上市に、妖狐は言った。
「今回のハロウィンだ……、貴様、あのカボチャ・パンティは穿いてたのか? エロ体操服を着せることで手いっぱいで、すっかり忘れていたが」
「「おい、またセクハラじゃねぇか。――てか、脈絡なさすぎな、てめぇ」」
定祐と上市がいつものようにつっこんだ。
そのつっこみの響く先、佇む帝国ホテルと、晩秋の澄んだ青空が美しかった――
――終了




