7─後半
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──場所を移動して、半仮想現実融合型大規模調査室、通称VR室にて。
講堂のような広い空間にはスパコンと、モノリスのような大きな量子コンピュータがあった。
その真ん中の開けたスペースには、零泉円子がアニメキャラのような姿をして立っていた。
頭半分を覆うVRギアと、加えて某ボーカロイドのように肘から手首まで伸びたウェラブルデバイスと――、これによって脳と身体とコンピュータ網を接続する形で情報分析を行うわけである。よくSFでイメージするような、空中でキーボードをカタカタするような“アレ”である。
世界中のあらゆる文献、データベースなどの情報を、まるで書斎の本に触れるかのような感覚でアクセスし分析、解析していた。
さらに、この作業に妖狐・神楽坂文も加わる。
妖狐は零泉の横に立ち、虚空に右手をスッ――と伸ばした。
右手からは日本画の岩絵の具のような緑色のオーラが生じ、コンピュータ群に向かって伸びていくとともに、何やら蔓植物のような“形”が具現化されていた。
緑がかった構造色の美しい蔓植物と、デジタル回路のごとく金糸がスパコン、量子コンピュータに絡みつき、“侵食”していく。
「――まったく、本来あまり使いたくないのだが、貴様たちのコンピュータだけでは力不足と思ってな、“葛葉”を使ってやってる。感謝をするがよい、更年期」
妖狐・神楽坂文が言った。
“葛葉”――
簡単に説明すると、あらゆる情報網に侵入、ハッキングして情報を蒐集する妖術であり、本気を出せば超大国の情報機関にも匹敵するという、若干チート気味のものである。
「その“葛葉”で普段勝手にうちらのコンピュータをハッキングしてんだから、チャラだろ? まったく……」
恩着せがましく言ってくる妖狐を、松本はさらっと流す。
先ほど言ったように、普段から勝手に機関のコンピュータをハッキングして使用しているのは妖狐であり、持ちつ持たれつ、お互い様の関係である。
そのようにして、妖狐・神楽坂文の妖術と機関のコンピュータによる合わせ技的に情報を蒐集する。
上市の言ったように、“棍棒”、“月”、“ハロウィン”、あるいは“月に投げる”などのキーワードからスタートして世界中の“様々な形態の情報”にアクセスしていた。
それも、広く、かつ深淵に、まるで葛の蔓や葉が侵食するように……
その情報蒐集、解析力は米中ロ合わせた情報機関の収集力を凌ぐほどのレベルである。
「――それにしても、神楽坂さんの能力って便利ですよね。チートクラスというか」
横からひょこっと、黒桐廉太郎が興味を持ったのか、そう言った。
「まあ、“これ”がないと始まらないから、どうしようもないであろう。それに、チートクラスというが、そうでもないぞ。私の妖力がリボ払い式なのは知っておろう? 結構なエネルギーを使うのだ」
「どれくらい、……ですか?」
黒桐が、おそるおそると聞いてみた。
「そうだな……」
妖狐は空を向き、数秒ほど考えて答えた。
「その……、かつての旧ソ連の、3つ分くらい……」
「「「「「…………」」」」」
場に、5人分の沈黙が漂った。
(((((いや、何の換算だよ? 旧ソ連3つ分くらいって……)))))
皆が心の中でつっこんでシュールな空気になる中、狐のヤツはまだ続けてくる。
「――どうだ? 結構なエネルギー消費であろう。その証拠に見てみよ、若干クマが入って、我が赤ちゃん並みのツルスベ肌にヒビが入っておろう」
「「ん? ――いや、分かりづら!?」」
今度は黒桐と零泉がつっこんだ。
よく見てみると、確かに妖狐が自分の顔を指さす箇所にはクマのようなものが微妙に目元に生じており、また肌はスマートフォンの画面のガラスカバーに薄っすら生じた微細なヒビ割れのようになっていた。如何せん、よく見ないと分からない程度にだが……
全く、こやつは本当に何者か?
黒桐と零泉も、そのシュールさにつっこみたくなるも、苦笑い気味に引きつるより他なかった。
──続く
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