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   ■■ 1 ■■ 



 それは、突然のことだった。


 10月のハロウィンの週のある夜、日本のすべてのメディアやインターネット、SNSが強制的に乗っ取られ、数分の間、とある放送が流れたのである。


 新宿駅前を賑わす三毛猫の立体スクリーンでも同様で、ジジジ……と砂嵐エフェクトがしたかと思うと画面が変化し、



『この世をば~、わが世とぞ思ふ、望月の~、欠けたることも、なしと思へば……』



 と、かの藤原道長の歌を詠みあげながら、スクリーンには謎の男のシルエットが映し出された。


 ダースベイダー卿を思わせるシルエットのスペースオペラ的な銀色の鎧姿。


 しかし、その兜の左右には串団子をぶっ刺したような、まるで顔を変えると元気が出る某パンの男の敵役が思い浮かびそうな、少し気が抜ける風体である。


 そんなものが突然映ったのだから、当然、


「――え、何!? 何!?」


「これって宣伝!? ゲーム!? それとも映画!?」


 などと、スクリーン前の人ごみはざわつき始める。


 またそれだけでなく、「――ちょっ!? 俺のスマホも同じの映ってんだけど!?」と、個々人のスマホの画面もスクリーンと同じく強制的に謎の男が映っており、事態のが異様であることがわかる。




 その間も、画面の中の謎の男は高貴な――まるで王のような雰囲気でこう続けた。


『はじめまして、皆さま。我々は、『月に棍棒を投げる会』です……。平安の古より月を愛でる日本国の伝統に敬意を表しまして、来たる10月31日のハロウィンの夜、月を用いた遊興ゲームを行いたいと思います――』


 誰もがポカンとするような団体名を名乗りながら、男が話す内容は次のとおりである。


 会の委員会によって選任された者に“棍棒”が渡された者を選手とすること。


 選手は今週のハロウィンの夜23時に投てきを行うこと。


 その他細かい条件として、日本国内の地上高150メートル以上の建築物から(山、塔、橋などは不可)投げることと、すなわち、あくまで都市部の超高層ビルから投げるようにとの謎の制約もあった。




 そして、肝心の競技の賞とでもいうべきか賞金についてである……


 スクリーンから飛び出すような立体的な月とともに、銀の鎧男は宣った。


『――では、この月に棍棒を投げ、命中させて破壊することのできた選手には賞金を差し上げましょう。100兆ドルと、全世界のすべての富を……』




──続く

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