表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/21

第10話 E

「でーきた!うん。超いい感じ」


 満足、満足。

 早速、先生に見てもらおう。

 先生の手を引っ張って、キャンバスを見せる。


「あら。なかなかいいじゃないエミリ!」

「ですよね?思った通りに描けましたー」

「これ、箱根の個展に出してみない?」

「えー?そんなことできるんですか?」

「もちろん、全員じゃないわ。他の美大と共同展示を企画してるんだけど、若干、まだ置けるスペースがあるのよ。ねじ込んでみようかしら」

「えー!嬉しい!」


 まだ完成していなそうなみいなには、絵に集中して欲しいから、今は言わないでおこう。

 今度、ゆっくり時間ができたら話そう。誘って一緒に見に行けたらいいな。


「今日は、お先にー!」


 今日は先日知り合った、織田さん達とフットサルの約束がある。

 アナンは私には気付いてなかったみたいだけど、私はバッチリ見てたからね。


『今日、フットサル来る?』

『No,バイト』


 アナンってば、本当、バイトばっかり。

 でも、あの変態から独立する為なんだよね。

 話しづらい事を私には打ち明けてくれた。

 私もアナンの助けになれたらいいのに。



 ◆



「はあ……はあ……エミリちゃん、よく動くね……はあ」

「織田さんが運動不足なんですよ。若いのに、そんな息切れます?」


 めっちゃ苦しそう。笑っちゃう。


「そんな足の速い美大生、授業でも見たことないよ」

「ははは。てきとー!大学に体育の授業なんてないし。ウケる」

「織田さんいつからフットサルやってるの?」

「まだ1年経ってないよ。俺のチームは、皆、地元の同級生で、去年の同窓会でノリで作ったチームだかんな」

「へえ。アナンは?」

「あれ、アナンのこと知ってたっけ?」

「うん。ちょっと知り合いみたいな」

「そうだったのか。あいつはバイト先が一緒なだけ」

「あ。コンビニ?」

「そ。知ってんじゃん」

「アナンは、今日はシフトに入ってるってことかぁ」

「コンビニじゃないよ。たぶんファミレスか、カラオケか、ラーメン屋」

「そんなに?」

「外国人は週に28時間以上シフト入れらんないんだって」

「へえ。そんで掛け持ち?」

「らしいな」


 身体壊さないか心配だから、今度、ご飯でも誘ってあげよう。


「アナンは可愛いんだよ。最近、カフェラテのお姉さんに恋しちゃって、仕事頑張っちゃって」

「カフェラテのお姉さん?」

「そ。コンビニに来たんだよ。透明感がすげえ美女」


 そうなんだ。アナン、好きな人いるんだ。

 会ったこともない人に嫉妬してしまう。

『透明感がすげえ美女』なんて、私も一度言われてみたい。



 ◆



「おはよう、エミリ」


 あ。いた。


「実在する透明感がすげえ美女がこんな近くに……」

「え?」

「いや。何でもない。こっちの話」


 それにしても、ほぼスッピンっぽいのに、この漂う色気はなに?


「みいな、課題提出した?」

「あ、うん。一応……」

「一応って?」

「どこで止めていいか分かんなくて、切り上げた」

「そういうことね。先生なんて?」

「箱根の個展に出展してくれるらしいの」


 なーんだ。私だけじゃないのか。なんかがっかり。


「私のもだよ」

「やったね」


 この曇りなき笑顔……自分が醜く感じるわ。


「ねえ。一緒に見に行かない?」

「え?」

「いいじゃん。ゴールデンウイーク、どっか行くの?」

「そういうわけじゃないんだけど」

「イケオジ彼氏と過ごしたいか」

「そんなんじゃないけど」


 なにをそんなに、モジモジしてんのさ。


「エミリがよかったらなんだけど」

「なに?」

「アナン……誘ってみない?」

「アナン?」

「ほら、絵に興味あるっぽいから」


 確かに。バイト三昧じゃ可哀想だしね。


「いいね。声かけとくよ。みいなも彼氏誘ったら?」

「え……あ……う……」

「ま、どっちでもいいけど」



 ◆



 パパが香港出張から帰ってきた。


「お帰りー!お土産は?」

「ほら」


 渡されたのはパイナップルケーキ。


「違う!」

「何が?」

「思ってたのと違う!」

「そうか?会社じゃ大人気なんだぞ。喜ぶと思ったのに」

「もっとキラキラしたのとか、可愛いのがよかった!」

「ははは。それは悪かった。次はそういうのを買ってくるよ」


 パパはスーツケースを持って部屋に入った。

 玄関に残ってる、もう一つのパイナップルケーキ。


「パパ!これは誰に?」

「あ、それは……」

「まさかメラニーじゃないよね?」

「いいじゃないか。メラニーはエミリが思ってるような人じゃないよ」


 メラニーはパパが思っているような人じゃないの!


「いつ会うの?」

「明日だよ」

「どこで?」

「まだ、決めてないけど」

「じゃあ、家に呼んでよ」

「いいのか?」

「そうして欲しいの!」


 もちろん、パパの前でメラニーの本性は言えない。

 けど、ちょっと脅して、パパに近付けなくするくらいはできるかも。


「お寿司とってよ」

「ちゃっかりしてるな。分かったよ」


 メラニーは会社を経営してるらしい。

 お金持ちだからって、孤児を引き取って虐待するなんて死んでも許せない。

 私が成敗してやるんだから!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ