第三十一章
太陽が自身の光で人の罪過を浄めようとでも言うのか、青空に燦然と輝いていた。
ルナはアイリスが聖カリステゥス教の礼拝堂で祈りを捧げている間、廊下でマリアと待っていた。
「そう言えば知っている?」
マリアはふと気づいたように、その話題を口にした。
「憲兵隊長のヘル……なんとかさんが、死んだんだって」
「そう」ルナの返事は短い。
「もう! そんな呑気な場合じゃないのよルナ」
困ったなあ、との体でマリアが人差し指を上げて、説明した。
「どうも憲兵隊長さんたちは、裏で犯罪行為をしてたらしいの。脅したりどろぼうしたり……で、昨夜、一緒に悪事をはたらいた部下たちと揉めたんですって」
「詳しいのね、マリア」
「ええ」とマリアはドヤ顔になる。
「私は衛兵さんとかとも話すし、侍女たちの間ではこの話題で持ちきりよ……むしろ良くいままで知らなかったわね、ルナ」
「私、忙しいから」
嘘ではない、ルナはどうやらアイリス姫に気に入られたようで、お茶会のお共に任命されていた。
好都合だ。アイリス姫が気を許せば、『本当の目標』であるエリディス王国の中枢、王家にまで針が届くのだ。
「だったねー。ルナは偉いわね……あれっ? ええと、どこまで話したかしら?」
「憲兵隊長の不正まで、よ」
「そっ! そう! で、憲兵隊長さんと部下の人たちはどうやら分け目で諍いを起こしたらしいの。で、剣を抜いた……」
マリアは言葉を切り、聖カリステゥス教の信徒が行う、神へのまじないの印を指でなぞる。
「それで……どうなったの?」
ルナが尋ねると、マリアは真顔で首を振った。
「傷つけ合ってみんな死んじゃったんですって……悪いことは出来ないわね」
どうやらデイミアンの工作は上手くいったようだ。
コトフから剣を奪い、他の二人の骸に傷をつける。
検分したものは、剣で殺し合ったと安易に判断するだろう。
金で装飾された礼拝堂の扉が開き、飽きた様子のアイリス姫が姿を現した。
いつもの作られた笑顔のルナは彼女に近づく。
侍女としての仕事が始まるのだ。
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