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第二十三章
ヘルトランドは部下のチュイとコトフを連れ、いつもの酒場で祝杯を挙げていた。
今回も上手くいった。
彼はすっかり膨らんだ金の入った袋を撫で、至福の時間に頬を緩める。
「しっかしバカな野郎でしたね」
チュイが酒に酔ったのか、人のいる場所なのに『その』話題を口にする。
「あれだけ俺らを煽っておいてタダで済むと考えているなんて」
「ふふふ」とコトフも笑う。
「あいつの命乞いの姿には笑えた。『オレには故郷で待っているお袋がいるんだ』……バカめ、そんなの知るかっ!」
二人の機嫌が良いのは、パン屋が意外に金を貯めていたからだ。
等分に分けても、臨時収入としては申し分ない。
ふと、ヘルトランドはチュイが右腕をさすっていると気づく。
「まだ動かないのか?」
「そうっす。医者の野郎も首を捻っているだけで、ったく、参ったな、利き腕なのに……」
ヘルトランドは頭の中でチュイを切り捨てる算段を立て始めた。
チュイはどうしてか右腕が利かなくなった。
武器を持つ憲兵にとって、それは致命傷だ。
本人には勿論言わないが、憲兵司令官に報告し、チュイを罷免しようと考えている。
だとしたら、彼との楽しい酒はこれが最後だ。
「まあ飲め、今日は俺が奢る」
「へい」
結局、彼らが酒場から出たのは夜の闇が深まった頃だった。




