ep.60
「狼、オオカミ…」
「種類多いから探すのがもう大変だな」
「あ、これ狼ではないですか?」
光の手元に乗せられているのは所謂シベリアンハスキーと呼ばれる犬だった。
「光にい!それ多分ハスキーだよ!」
「え?でも灰色…」
「似てるけど違うぞ、光」
「そうなのですか?でも狼見当たらないのでハスキーで妥協するという手も…」
「ふ、ふふ…、いいですね。犬も好きなのでこれにしようかな」
「え?でも那月くんいいのですか?狼ではありませんよ?」
「犬も好きって言ったじゃないですか、ハスキーも大好きです」
「言っていましたが…」
「光さんが選んでくれたってことで、これにします。ちょっとお会計に行ってきますね」
「あっ、那月くん!」
光の手元からぬいぐるみを攫いレジまでタタタッとかけて行く那月を眺める。
「あ、あの…、良かったのでしょうか?」
「那月くんがいいって言うんだからいいんじゃないか?」
「そうだよ!光にいが選んであげたみたいでいいじゃん!」
「そ、そうですか。なんか恥ずかしいですね…」
少し赤くなった顔を見た鳴と愛がニヤニヤとした顔でこちらを見てくるのはちょっと鬱陶しかった。
「あ、あの!お会計してきました!」
「おかえりなさい」
「那月くんおかえりー!」
「おかえり」
三人におかえりと言われてなんだかくすぐったい気持ちになる。
お店を出てからは色んなお店を覗いてウィンドウショッピングをした。
「そろそろお昼ご飯食べておくか」
「そうですね、何か食べたいものはありますか?」
「俺はガッツリ食べたい!」
「俺は和食かな、那月くんは?」
「僕は特には…、光さんは?」
「私も特には。鳴兄さんや愛のどちらもとなると、ファミレスにでも入りましょうか」
「そうだな、そうするか」
「はーい!」
「はい!」
ショッピングモール内にあるファミレスへと行き各々食べたいものを注文した。
「あ、そうだ。三人にも考えて欲しくてぬいぐるみのこの子の名前なにがいいと思いますか?」
「俺たちが考えていいの?」
「折角だから選んだ光に決めてもらうといい」
「わ、私ですか!?」
「そうだねえ、光にい決めてあげなよ」
そう言いまた二人はニヤニヤとする。
「光さん、よかったら一緒に決めてくれませんか?」
横に座っている那月がこてんと首を傾げた。
「うっ…、わ、分かりました。私でよろしければ」
「ありがとうございます!ふふ」
なにがいいかなあ、そう言いながら隣で嬉しそうにしている那月をちらりと見る。
(この子は全く…、まあそういう所がいいのですが)
自分が選んだ、というか間違えて手にしたぬいぐるみを気に入ったといい大事そうにしている姿を見て少しの優越感に浸った。
「名前ですが…、レイ、などどうでしょうか?」
「レイですか?」
「はい、Rayは英語で「光線」や「一筋の光」という意味があります」
「なるほど、いいかも…。光さんに選んでもらったのでとても合うと思います!レイ…レイかあ…、ふふ」
「気に入りましたか?」
「はい!とても、ありがとうございます。今日から一緒に寝ます」
そういいながら何度もレイと名前を呟いていた。
おまたせしましたと続々と頼んだものが届き、お昼ご飯も食べ終え、映画の時間になったので映画館へ移動した。
夏休みということもあってとても騒ついていたが学園もこんなものだよなあとぼんやり思う。
「那月くん大丈夫ですか?思ったより人が多いですね…」
「光さん、大丈夫です。ありがとうございます」
「那月くん迷子にならないように光にいに手繋いでてもらいなよ!」
「ええ!?ふく、じゃなかった…、光さんと手を繋ぐとかなんと言うか恐れ多いというか…」
「私と手を繋ぐのは嫌ですか…?橘とは繋いでいたのに…、もしかして真緒とも繋ぎましたか?」
「……?つ、繋ぎました」
(なんで風紀委員長と真緒先輩が出てきたんだろう?)
「では!私とも繋いでください」
ズイッと顔を寄せてくる光を前にあわあわとするしかなかった。
「何やってんだお前たちは、ほらチケット。そろそろ行くぞ、ポップコーンや飲み物も買っていくか」
「はーい!二人とも行こう!」
「那月くん、行きましょうか」
そう言い差し出された手をソッと握った。




