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ep.58


到着した日の夜、帰って来た光さんのお父さんに挨拶をすると「光が彼女を連れてきた!?」と言われてまたひと騒ぎあった。



「鳴兄さんや愛だけならまだしも父までとは、本当に騒がしくて申し訳ないです…」

「ふふ、賑やかでいいですね?女の子に間違われるのはちょっと困りましたが」

「母に伝えていたので大丈夫だと思ったのですが、後輩ということを秘密にしていたとは」

「比奈子さんはお茶目な方ですね」


お風呂上がりに居間でのんびりと談笑をしながら、ポッポッと赤くなっているであろう顔を手でパタパタとあおぐ。


「那月くんは、いつも…。いえ、なんでもありません」

「……?」


(これが無自覚美人の破壊力…、ちょっと目の毒ですね…)


なんて思っている光には気付かない那月だった。



「ねえー!二人とも!庭で花火しよ!」

「準備は出来ているぞ」


元気よく声をかけてくる愛と、花火を両手に持ちクロスさせ今か今かと待つ鳴の姿があった。


「夏といえば!花火っしょ!」

「ほら、二人とも早く来るんだ」

「はいはい…、那月くん行きましょうか」

「あ、はい!」


庭に出ると火の準備をしてくれた光さんのお父さん、拓海(たくみ)さんがおいでと手招きをする。


とても広い庭には綺麗に丁寧に手入れされた木々があった。



「那月くんは花火のご経験は?」

「あ、えっと…、実は初めてで…」

「え!?那月くん花火やったことないの!?まじ!?」

「こら、愛。そういうご家庭もあるだろう」

「あ、そっか。ごめんね、那月くん」

「ううん、大丈夫だよ。僕の家両親が忙しくて、兄弟も居なかったからそういうことやる機会が無くて。だから今すごい楽しみなんだ」

「そっか…、いっぱい楽しもうな!」

「うん!」


始めるよと声をかけられ小さな花火大会が行われた。


すすき花火にスパーク花火を楽しみ、最後は線香花火をしてみんなで競走もした。


僕は下手くそだったのかすぐに落ちてしまってちょっと残念だったけど、まだありますよと光さんに声をかけてもらい、鳴さんと愛くんが競走している隣で光さんと二人静かに線香花火を楽しんだ。


パチパチと弾ける花火を眺めるとなんだか心が穏やかになっていく、そんな気がした。


初めての花火はとても良かった、初日からいい思い出だ。



「では、那月くんおやすみなさい。何かあれば隣に居ますので声をかけてくださいね」

「はい、ありがとうございます。おやすみなさい、光さん」


部屋の前でおやすみを言い合い、僕は用意されていた部屋へと戻る。


畳の部屋に用意してもらった布団はふかふかで疲れていた僕はあっという間に夢の世界へと旅立ったのだった。



「んー、眠い…」

「おはようございます、那月くん。起きていますか?」

「んあ、は、はいぃ…」


バタバタと起き上がり襖を開けるとそこには光さんが居た。


「ご飯の時間なのですが、もう少し休みますか?」

「いえ、大丈「那月くーん!ご飯だよ!その後出かけようー!」

「こら、愛。朝から大きな声を出さない」

「うわ!?光にい!ごめんごめん」

「あ、準備して来ますね。ちょっと待っててください」


二人に呼ばれてしまっては行かざるを得ないだろう。


慌てて着替え、洗面所へ行き身なりを整え居間へと顔を出した。


拓海さんは仕事へ行ったらしく不在で、比奈子さんと光さんたち三人、そして僕で食卓を囲んだ。



出かけようって言ってたけど、どこに行くんだろう…?

もう決まっていたりするのかな?


ソワソワと落ち着きのない愛が目に入り光に叱られていた。


兄弟が居るって、楽しそうだなあ。


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