ep.56
「伊奈瀬くん、準備は出来ましたか?」
「はい。大丈夫です」
みんなでデザートを食べた翌日の朝、部屋に副会長が迎えに来てくれた。
これから夏休みの間副会長の家にお泊まりするのだ。
「お世話になります」
そう言い頭を下げると「まだ家に着いてないですから、気が早いですよ」そう言われてしまった。
楽しみだなあ、お兄さんと弟さんがいるって言ってたけど副会長と似てるのかな?どんな人たちなんだろう。
ワクワクとドキドキが織り交ざる気持ちを落ち着かせ副会長の家へと向かった。
迎えに来ていた車の中で学校のことや好きなことについて副会長とたくさんお喋りをした。
「伊奈瀬くんは甘いものがお好きなんですね?」
「はい!昨日のパフェもとても美味しかったです!バニラアイスとも生クリームとも合うフルーツが甘くて…、また食べたいです」
「ふふ、他に甘いものは何がお好きですか?」
「うーん…、あ!真緒先輩のお茶会で頂いたクッキーがとても美味しくて!お茶もとても美味しかったんですけど」
「楽しんできたみたいですね」
「はい!お茶会とか初めてだったので緊張したんですけど隊長さんもみなさんも優しくて。副会長は親衛隊の方とお茶会などはしないんですか?」
「私はしてませんね、南くんからやったらどうかと言われたことはありますが何分忙しくてなかなか」
「あ、そうですよね。副会長だから余計にかあ…」
「仕方ないと皆さん分かってくださっているので、差し入れなどはたまに贈らせてもらっていますよ」
「そうなんですね、やっぱり副会長優しいですね」
「ふふ、ありがとうございます」
なんて話をしていたらもうそろそろ着きますよ、と声をかけられ外に目を向ける。
閑静な住宅街、と言いたいところだが何故か目の前は壁しか見えない。
(……? ずーっと壁だ)
不思議に思っていたところ車が停止し、着きましたと声をかけられる。
「着きましたよ、伊奈瀬くん」
「え、はあ…。…え?」
「ここが私の家です、びっくりしましたか?」
「は、はい…、とても」
目の前に広がるのは所謂、日本家屋だった。
(お、大きいし、旅館みたい…。すごい…)
「副会長はもっと洋風なお家のイメージがあったので…」
「それはよく言われます、さあどうぞ」
「お邪魔します…」
背中をポンッと押され歩きを促された。
玄関をガラッと開ける副会長の斜め後ろでソワソワとしてしまう。
(あ!手土産とか持ってきた方がよかったかな…、僕お世話になるのに何も持ってきてないや…。どうしよう…)
「…くん、せくん? あの、伊奈瀬くん?」
「あ、は、はい!?」
「こちら私の母です」
「ようこそ、光のお友達よね?初めまして、母の比奈子です」
「は、初めまして…。伊奈瀬 那月です、あの、夏休みの間お世話になります。あとお泊まりの許可くださりありがとうございます、なのに僕なにも手土産持ってきてなくてですね…」
「子供がそんな事考えなくていいのよ、ゆっくりしてってね。ほら、あがってちょうだい。冷たい飲み物用意してるから」
「ありがとうございます」
副会長のお母さんはとても副会長に似ていて、親子だなあなんて当たり前のことを思っていた。
遺伝子ってすごい。




