ep.48
「那月くん紅茶は?飲める?」
「あ、はい。大丈夫です」
「んじゃ、僕が直々に入れてあげようではないか!美味しいからぜひ飲んでね」
「ありがとうございます…!」
凪咲先輩が入れてくれる紅茶はとてもいい香りで美味しそうだった。
「お茶請けには実家が洋菓子店の子が提供してくれてるんだ、絶品だからぜひ。食べられなかったら持ち帰ってもいいからね!」
「ありがとうございます」
「色々聞いてもいい?いいよね?伊奈瀬くんはなんであの七海くんと付き合ったの?」
「え、えっと…、告白された、ので…?」
「告白してくれるなら誰でもいいんだ?」
「そういうわけでは…」
「ま、その辺の理由は本人から聞いてるんだと思うけど真緒くんでもいいじゃないか〜!」
「凪咲先輩は真緒先輩のことが好きなんですか?」
「好きだけど、恋愛感情はないよ!友愛だね、僕わんこ大好きなんだ〜!いいよね、わんこ!真緒くんは僕の理想のわんこなんだ」
あれやこれやと力説する凪咲先輩に頭がこんがらがってくる頃、テーブルに真緒先輩がやってきた。
「楽しん、でる…?」
「あ、真緒くんいらっしゃい」
「真緒先輩」
「…なぎ、那月のこと、困らせて、ない?」
「何を言うのさ!困らせてるけど困らせてないよ!」
「浅見くん相手してるみたいで、楽しいです」
「……そ」
「先輩たちは普段どんなことお話してるんですか?」
「僕は主にわんこについて語ってるよ!わんこ攻めはいいぞって真緒くんに仕込んでるからね、てことで伊奈瀬くんわんこな真緒くんどうだい?」
「……那月、どう?」
「ま、真緒先輩まで…。僕今お付き合いしてる人居るので…」
「…そか」
シュンとする真緒の姿に申し訳なくなる。
「真緒くん落ち込まないで!チャンスは必ずあるから、ね?」
「……ん、がんばる」
励まし合う二人を少し複雑な気持ちで眺めることしか出来なかった。
僕は、類と離れたあとどうなるのかな。
寂しい?悲しい?つらい?
どの感情になるのか想像がつかない。
あと一週間、出来ることはいつも通り過ごすだけになるだろう。
「……分かんないや」
「ん?伊奈瀬くん何か言った?」
「へ?あ、いえ!なにも」
そうだ、今は真緒先輩に誘われてお茶会の最中だ。
類とのことは一旦置いて今は楽しまないと。
「…なつき」
「真緒先輩?」
「……那月、は、那月の、やりたいように」
「はい、ありがとうございます」
「ん、お喋り、しよ」
別のことを考えていたことがバレていたらしい。
その後は真緒先輩や凪咲先輩を中心にたくさんお喋りをした。
最初は怖かったけど、親衛隊の人たちって優しいんだな。
こんなにたくさんの人に慕われて好かれるって、やっぱりすごいなあ。
「なになに?真緒くんのこと、好きになっちゃう?」
「え!?あれ、僕声に出てましたか!?」
「バッチリね!」
「は、恥ずかしい…」
「あはは!いいじゃんいいじゃん!確かに、凄いことだよね。それだけ真緒くんや生徒会のみんなが頑張っている証でもあるからね、それだけでやっぱり応援したくなるよね」
「そうですね、本当に」
「……て、れる」
「真緒くんかわいい〜!」
「高良様が照れてる」
「真緒様がお可愛らしい」
テーブルが一緒だった先輩たちもわらわらと声をかけていた、それほど珍しいことだったのだろう。
「やっぱり伊奈瀬くんに参加してもらって良かったな」
「え?どうしてですか?」
「真緒くんがキラキラしてるんだもん」
「…キラキラ?」
「そう、好きな人の前だと人はとても輝くからね。真緒くんの場合は伊奈瀬くんだよ」
「え、っと…。そ、その…」
「相手が居るのは分かってるよ、ただ先の話。真緒くんの事も気にしてあげてほしいんだ」
「どうしてそんなに…」
「真緒くんにこだわるかって?わんこ攻め…じゃない、こほん。僕の真緒くんへの好きの種類は違うけどさ、幸せになって欲しいんだよ。それを近くで見れたらいいなって、ね」
凪咲先輩の真緒先輩を見つめる視線がとても優しかった。
「だから、伊奈瀬くん。真緒くんの事、よろしくね」
「……はい」
僕は、僕は――
「さて!そろそろお茶会は終わるよ、みんな真緒くんとお喋りは出来たかな? また数ヶ月は空いてしまうと思うけど集まれる者は集まってお茶会しよう!よし、真緒くん最後に一言どうぞ」
「みんな、いつも…ありがとう。楽しかった、よ」
あちらこちらから、楽しかったです、またお茶会しましょう、と拍手と声が上がる。
片付けを僕も手伝っていたら真緒先輩から声をかけられた。
「那月、かえろ」
「あ、でもまだ片付けが…」
「こっちは大丈夫だから伊奈瀬くんは真緒くんと一緒に帰ってあげて!またおいで!」
「あ、はい。今日はありがとうございました」
「うん、またねー!」
帰り道が分からなかったので、そのまま真緒先輩について行く。
「那月、どう、だった?」
「あ、はい!とても楽しかったです」
「…そ、よかた」
「真緒先輩は、楽しかったですか?」
「ん、もちろん」
ふわっと微笑んだ真緒先輩の顔を見て、親衛隊の人たちをとても大切にしていることが伝わってきた。
「お茶会に誘ってくれて、ありがとうございました」
「…また、くる?」
「機会があれば、ぜひ」
「……ん!」
そうして僕の初めてのお茶会が終わった。
帰ったら類に連絡しないとね、心配かけちゃう。




