ep.47
真緒先輩の後ろを歩いていくと見た事もない場所に着いた。
ここは、なんというか庭園?
でもドーム状の建物になっていてとても大きい。
色とりどりの花たちが咲いていていい香りがする。
あと、秘密基地みたいでちょっと楽しい。
ここ、と止まって振り返ってきた真緒先輩の後ろにはたくさんのテーブルとイスが島になって並んでおり圧巻だった。
「ここ、で、お茶会」
「そうなんですね…、すごいです…!」
親衛隊の人たちだろうか、可愛い人から綺麗な人たくましい人まで様々な人たちがお喋りをしていた。
真緒先輩曰く今日は3年生を集めてのお茶会らしい。
先輩たち相手に大丈夫だろうかと心配していたら、真緒先輩から
「…みんな、優しい」
と、声をかけられた。
こんな優しい真緒先輩の親衛隊の人たちだ、部外者にも関わらずお茶会への参加を許可してくれた人たちが怖いわけがない。
「ありがとうございます」
そう言い一つのテーブルへと案内してもらった、すると――
「あ!真緒くんいらっしゃい!って、その子が噂の子!?えー!めっちゃ美人さんじゃん!真緒くんこんな子捕まえちゃったの!?いいねいいね、で?どこまで進んだの?もう付き合っちゃった?僕たちに報告無しに?寂しいんだけど!言ってよね!応援するのに!あ、初めまして〜!真緒くんの親衛隊隊長してます、凪咲って言うからよろしくね、伊奈瀬くん!」
早口に喋る凪咲を前にあう…と言葉が出なかった。
「あ、あの…、初めまして。伊奈瀬那月です、今日はありがとうございます、えと、よろしくお願いします。」
そう言い頭を下げる。
「うんうん!知ってるよ!よろしくねー!真緒くんから話は聞いてるからゆっくりしていってね。みんな君に興味津々なんだ、なんたって恋愛に興味なかった真緒くんが好きな子できた!って言うんだもの。そりゃ会いたくなっちゃうよね!」
「好き…、え?」
チラッと真緒先輩を見るとプイッとそっぽを向かれた。
「あはは!真緒くん照れてるね、可愛い!伊奈瀬くん気にせずゆっくりしていって、そして真緒くんと沢山お喋りしてあげてほしいな。ちなみに今お付き合いしてる人がいるって風の噂で聞いたんだけど…、本当かな?」
「あ、えっと…、一応…?」
「ふうん?ま、うちの真緒くんの方がいいから別れたらぜひ真緒くんをおすすめするよ!あはは!」
噂の子と言いつつ、付き合ってはいない事を分かった上でのあの発言と今の類とのお付き合いのこと、凪咲先輩には何かを見透かされているような、この人明るくていい人なんだろうけどなんか掴めない人だな、そう思った。
「なつき、ここ、座って」
「あ、はい。お邪魔します」
凪咲先輩の隣に座った。
「いやあ、よく見ても美人だね?これは立派な受け候…ごほん。いや、いいね美人受け!」
言い直していたが、それは隠せているのだろうか?
浅見くんと同じような気がするのは、きっと気のせいではないだろう。
ふ…腐男子…?だったかな?
男性同士がお付き合いするっていうあれ。
今の僕と類のことも言うのかな?
それが好きな人らしい、害はないって浅見くんが力説してた、世の中色んな人がいるね。
多分、凪咲先輩もその腐男子なのかな。
悪い人ではなさそうなので、とりあえず話をしてみた。
「あの、こういうお茶会っていつもしてるんですか?」
「いや?2ヶ月に一回くらいかな。真緒くん忙しいけど、予定の空いてる月に各学年で集まってやっているんだ。今日は僕達3年生の番ってわけ、ちゃんと1年生や2年生もやってるよ。なになに!?真緒くんの親衛隊に入っちゃう?全然大歓迎だよ!あ、でも恋人になるなら親衛隊は入れないからダメだな」
「…? 恋愛する人は親衛隊に入れないんですか?」
「あ、違う違う!真緒くんの親衛隊って憧れや尊敬で入ってる人もいるんだけど恋愛感情持ってる人もいるんだ、でも真緒くんと本気で恋愛したい人は入れない決まりなの」
「恋愛感情持ってる人と本気で恋愛したい人の違いって…?」
「んー、簡単に言えば真緒くんが本気になるかどうかかな?ここにいる人の中にはもちろん真緒くんに恋愛感情を持ってるけど、それは叶わなくてもいいっていうの前提なんだよね。それを分かった上で近くにいたいこうして交流持ちたいって人達の集まりだから親衛隊に入れるの、だから本気で真緒くんの事が好きな人は入れないんだよ〜」
「…なるほど、そういうことなんですね。他の生徒会のみなさんもそんな感じなんですか?」
「いや?そこはまた各々違ってくるよ」
「へえ、知らなかったです」
「まあ、関わりないと知ることは無いよねえ。うちはそんな感じだよ!ただ、伊奈瀬くんは真緒くんが本気になってる相手ではあるからうちには入れないんだ〜、ごめんね?」
「あ、いえ…、大丈夫です…?」
ま、真緒先輩が僕のこと…、知らなかった。
こういう時どういう反応?していいか分からない!
類と今付き合ってるしありがとうございます、は、なんかちょっと違う気がするし…んんんー!
「ねえ、伊奈瀬くんが付き合ってるっていう人七海くんだよね?」
「え?はい、なんでそれを…」
「七海くんの親衛隊隊長から聞いたんだ、美人と付き合い始めたって」
「あ、えっと、それは…」
「もちろん複雑な気持ちの子達も多いだろうけど、親衛隊隊長的には良かったみたいだよ?ま、詳しくは聞いてないけど」
「あの、なんで付き合ってるの知ってたのに真緒先輩と付き合ってる…みたいなこと言ったんですか?」
「あは、伊奈瀬くん大人しそうに見えて言うとこ言うんだね。あれはただの冗談というか、まあ別れたら真緒くんと付き合って欲しいのは本当だよ。真緒くんね、伊奈瀬くんのこと好きになってからすごく楽しそうなんだ」
どのタイミングで好きになってくれたのか、なんてことは聞けなかったけど出会った時のことを思い出した。
颯爽と助けてくれた真緒先輩、格好良かったな。
「ねね、伊奈瀬くん。真緒くん彼氏にしない?とってもいい男だと思うんだ!どうかな?」
「いや、僕一応今付き合ってる人居るので…」
「七海くんでしょ?あの子一週間後転校するって噂じゃん?その後でいいからさ、ね?」
「いや…、でも…」
「ま、そんなすぐには切り替えられないか!仕方ない」
「……なぎ、那月のこと、困らせたら、め」
「あはは!ごめんごめん〜!でも真緒くん的にもいいでしょ?」
「……それは。でも、那月の、気持ち、大事」
「もう!じれったい二人だなあ。でもまあ、真緒くんの事僕は推してくからね!ぜーったい推してくからね!?」
「ん、ありがと」
真緒先輩が僕のこと好きって…、本当なんだ。
嬉しいような、ちょっと複雑なような。
今は類と付き合っているからそういうことは考えられない。
「さて!じゃあお茶会始めますか〜!」
こうして、初めてのお茶会が始まった――




