ep.45
お昼を告げるチャイムが鳴り各々食堂や購買、教室でご飯を食べ始める者などざわざわと騒がしくなった。
類、まだかなあ。
「那月くん、お昼は?」
「あ、類と一緒に食べる」
「そうか、分かった」
「なっちゃんなっちゃん!何かあったら…」
「伊奈瀬くんはいらっしゃいますか?」
「って来たみたいだね、行ってらっしゃい」
「浅見くん何か言いかけた?」
「大丈夫!楽しんできてねー!」
「ありがとう!行ってくるね」
パタパタと足早に駆け寄り類、と声をかけた。
「お待たせ、購買寄ってから行こうか」
「うん、何食べようかなあ」
購買――
「普段食堂だから購買ってなんか新鮮かも」
「確かに、僕もみんなと食堂だから初めて来た」
「コンビニみたいなんだね、と言うかコンビニだね」
「ふふ、そうだね。類はなに食べるか決めた?」
「んー、今日はパンの気分だから何種類かと後は飲み物かな」
「僕はサンドイッチと飲み物にしよ」
「一緒に買うから出して」
「え、いいよいいよ!自分で買うから」
「まとめちゃった方が会計すぐでしょ、ほら。ね?」
「う…、ありがとう、ございます」
「なんで敬語なの」
「なんとなく?」
二人でふふっと笑い合いながら買い物を済ませお目当ての教室へと向かう。
類いわく、いつも親衛隊のことで使ってる?らしい。
親衛隊のことってなんだろう?話し合いとかかな?
南くんよく親衛隊のことで話し合いに行ってるみたいだし、そんな感じなのかなあ。
まだ少し、距離があるからどこまで何を聞いていいのかが分からない。
今日で、その距離少しは縮むかなあ。
「はい、着いたよ。ここ」
「あれ、普通の教室だ」
「ふふ、どんなの想像してたの」
「いや、前に…」
前に、白乃とのことで連れて行かれた教室を思い出した。
「那月くん?」
「あ、いや!なんでもない」
「そう?窓際が風入って気持ちがいいんだよ、おいで」
「うん」
買ってきたものを広げ、お互いいただきますを言い食べ始める。
その間にも類が言った通り、風がそよそよと入ってきて心地がよかった。
「それで、那月くんは何か話したいことがあるのかな?」
「話したい、と言うか…、聞きたいと言うか…」
「なんでもどうぞ」
朝、浅見に聞いたことを類にも聞いてみた。
それを聞いた類はうーんと考え込む。
「僕もその浅見くんっていう子の言ってることは分かるかな、それを込みで那月くんはとても芯の強い子だと思うよ。弱さをも味方にしてると言うか」
「…? どういうこと?」
「ちょっと言い方が難しかったね、ごめん。なんだろうなあ、僕に言ってくれたでしょ?理人の代わりにはなれない、僕が望んでる恋も叶えてあげられない。けど伊奈瀬那月としてあなたの傍に居ることは出来ますって、その言葉を聞いた時に僕は那月くんの事、とても強い子だなと思ったよ。代わりみたいな事しちゃってる僕が悪いのはもちろんなんだけど、それでも形を変えて僕に寄り添ってくれた事、凄く嬉しかったんだ。ああ、この子はちゃんと僕自身を見てくれているんだって。見てくれた上で那月くんとして、僕の隣に立ってくれる事を望んでくれた、そんな強い子だなって。」
「そ、れは…。あの…咄嗟にあんなこと言っちゃったけど、実は僕自身もどうしていいのかとか、僕で本当にいいのか分かってなくて…」
「いいんだよ、あの言葉は僕の事を救ってくれたしとても嬉しかったから。代わりなんかじゃない、那月くんをきちんと見よう向き合おうって思わせてくれた言葉だったからね」
「それなら、良かった、です」
えへへ、と少し照れてしまって赤くなった頬を類が優しく撫でる。
「応えてくれて、ありがとう。僕ね、今凄く幸せだよ。もちろん代わりなんかじゃない、那月くんの事が好きなんだ」
「……うん」
「ねえ、那月くん。キス、してもいい?」
「へ!?あ、えっと…、うん」
初めてでどうしようとドギマギしているのを見透かされクスッと笑われてしまった。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ、目、閉じて」
「…ん」
そっと目を閉じると、唇に優しい感触が落ちてくる。
その瞬間、風が吹きカーテンが僕たちを隠すかのようにひらひらと舞い、僕と類だけの静かな時間が流れた。
「ねえ、那月くん。好きだよ」
「……僕も」
二人だけの静かなやり取りを終わらせるチャイムが鳴り響く。
もっと、もっと、なんて少しわがままになった僕がいた。




