ep.41
「あの、那月くん…」
「はい?」
「お、お付き合いという事で…手を繋いでもいいでしょうか?」
「あ、そ、そうですよね!? 繋ぎましょう!あと七海先輩、敬語じゃなくてもいいですよ?」
「じゃあ、敬語やめますね。那月くんも、ね?あと、類と呼んでくれたら嬉しいな」
「類先輩?」
「ううん、呼び捨てがいい」
「えと…、じゃあ、類」
「……うん」
ふふっと笑う類につられて僕も笑ってしまった。
「る、類は誰かと付き合ったことってあるの?」
「ううん、一回もない。だから誰かと付き合うって事に憧れてた。だから今凄く嬉しいんだ」
「僕で…、よかったの?」
「那月くんが良かった」
「それはなんで…」
「ふふ、秘密だよ。でもまあそうだな、可愛いなって」
「か、かわ…」
「そういう所も含めて、ね」
「うう…、なんか恥ずかしい…!」
「ふふ、可愛いね那月くん」
ギュッと繋いだ手からドキドキと体温が伝わるのではないかというくらい胸がキュッとした。
「那月くん、晩御飯はいつも食堂?」
「あ、うん。類は?」
「僕は食堂だったり自分で作ったりかな」
「作れるんだ!?すごいね!」
「簡単なものだけだよ?」
「それでもすごいの!」
「ふふ、ありがとう。今度ご馳走してあげる」
「うん!楽しみにしてるね」
「今日は一緒に食堂に行ってもいいかな?」
「大丈夫だよ、浅見くん…、同室者にも連絡しておくね」
お試しの、期間限定という恋人関係で始まったこの恋を僕は、ずっと忘れることはない、そう思った。
「那月くん、好きだよ」
「う、あ…、ぼ、僕は…」
「ふふ、大丈夫だよ」
「ごめんね」
繋いだ手に込められた想いを、大切にしたい。
「じゃあ、一旦部屋に戻ってから食堂前に集合ね」
「うん、わかった」
「あとこれ、僕の連絡先だよ。登録しておいて」
「ありがとう、あとでメッセージ送るね!」
「うん、待ってるよ。じゃあまた後で」
そういいお互い部屋へと一旦帰って行った。
ら、何故か先に帰っていた浅見から詰め寄られた。
「えー、伊奈瀬那月くんおかえりなさいそしてただいま」
「ただいまおかえり。あれ…、僕たちより遅かったんじゃ…?」
「そんなのはまあちょちょっと、ね!」
「ちょ…?」
「そんな事より!七海先輩とはどうなったの!?」
「どうって類とはまだなにも…」
「る!い!?呼び捨て!!はあああありがとうございます!」
「あ、僕このあと食堂で一緒にご飯の予定なんだけどいいかな?」
「それはもちのろん!こんな事あったよ報告待ってるよん〜!」
「浅見くんが期待してることなにも無いと思うけど…」
「分かんないじゃん!起きたらラッキー!ふふふ」
「もう…、じゃあ僕着替えて行ってくるね?」
「うん!気をつけて行ってらっしゃい!」
「行ってきます」
何故かとても機嫌がいい浅見を残して食堂へと向かった。
まさか、浅見が期待していることが起こるとは、この時の僕は思ってもいなかった――




