ep.33
自分が大規模に探されていると知らない那月は、現在白乃の膝の上に乗せられ腕の中に居た。
もちろん手は縛られたまま、口は何故か外してくれて会話が出来るようになっている。
「あ、あああの…」
「なあに?那月」
「あ、えっと名前…」
「ああ、まだ言ってなかったね。俺の名前は伊吹白乃だよ」
「い、ぶき…、あれ…?」
「那月?どうしたの?」
「いえ…」
(伊吹白乃って前に…、この人が…)
「あの、ひとついいですか?」
「内容による」
「僕のこと…、知ってるんですか?」
「もちろん。那月が小さい頃から、ずっとね」
「……小さい?」
「ふふ、那月は忘れん坊なんだね」
ふふ、ふふふっと一人で笑っている白乃がとても不気味に見えた。
(この人、僕のこと知ってる…?でも僕はどこで出会ったんだろう?小さい頃って…)
「那月は変わらないね、ずっと可愛いよ」
「あの、僕とどこで…」
「知りたいの?」
「し、知りたい、けど…」
(知って、僕はどうしたいんだろう…。この人の求めてることに応えられる訳でもないのに、もしかしたら傷付けることになるかもしれないのに)
「那月?何考えてるの?」
「あ、いえ…、なにも」
「俺以外のこと、考えてた?」
そういい喉元をツーッと撫でられる。
首を絞められるんじゃないか、咄嗟にそんな気持ちになり体が強ばる。
「い、伊吹…先輩のこと、を…」
「ふーん?ねえ、那月。白乃って呼んでよ」
「あ、きの?」
「そう、白乃。昔みたいに白乃にいでもいいよ?」
「白乃、にい…」
思い出せそうで、思い出せない。
聞いたことあるような、呼んだことあるような、そんな気がするのに。
――これは、なんだ?
「ふふ、なんてね。白乃でいいよ、那月」
「あ、白乃、は…」
「うん?」
「白乃は、僕をどうしたいの」
「はは、急に強気に出てくるね?俺はただ那月と一緒に居れればいいだけだよ」
「一緒にって…」
「ずっと、ずっと探してたんだ…。こんな好機もう手放すわけないだろ?」
「白乃は、僕のこと…」
『委員長!委員長の親衛隊隊長を見つけました!』
『そのまま風紀室へ連行して、話は後だ』
『分かりました』
『僕はそのまま伊奈瀬くんの捜索続けるから悪いけどそっちは任せたよ』
『はい』
ピロンッと電話を切り首謀者の一人、親衛隊隊長の身柄を確保した。
だが、あいつからは伊奈瀬くんのことは何も聞けないだろう。
伊吹白乃のことも全部、話さない気がする。
「参ったな、とりあえず伊奈瀬くんの捜索続けるしかないか」
「委員長大丈夫ですか?」
「ん?ああ、心配かけたね。大丈夫だよ」
「ならいいですが…」
「僕たちは一刻も早く伊奈瀬くんを救出する、それだけだよ」
「「はい!」」
待ってろ、伊吹白乃――




