ep.32
「ふんふんふーん!なっちゃーん!ただ…い、ま…」
「あれ?伊奈瀬くんなら先輩に呼ばれて出てったけど」
「は…?え?止めなかったの…?」
「だってあの人確か…」
「呼んでた人風紀委員長の親衛隊隊長だったから」
「………え?」
(やばいやばいやばい!風紀委員長に知らせなきゃ)
カタカタと手が震え上手く文字が打てない。
「で、電話…電話…」
メッセージ一覧から目当ての人物を探し電話をかけるとすぐに繋がった。
『浅見くん?どうかしたかい?』
『あの!あの…!すみません俺…!』
『落ち着いて、ゆっくりで大丈夫だよ』
『俺…俺…、なっちゃんが…うっ…』
『!? 伊奈瀬くんに何かあったのかい?』
『俺がトイレに行ってる間になっちゃんが…どこかに連れ去られた、かも…。す、すみません…俺…』
『事情は分かった、連れてった相手は誰か分かっているかい?』
『それが…、あの…風紀委員長の、親衛隊隊長だったって…』
『………え?』
『なっちゃん、先輩だからって知らずについて行ったのかも…』
『分かった、ありがとう。僕は生徒会に連絡入れて伊奈瀬くんの捜索するから浅見くんは落ち着いたら寮に戻って。もしかしたら伊奈瀬くんが帰ってくるかもしれないから、お願い出来るかな』
『…わかりました』
『じゃあそれで、急ぐからごめんよ』
『すみませんでした、俺…』
『そういうのは後だよ、ね?』
『……はい』
――ピロンと電話を終わる音が鳴りその場で急いで生徒会へ連絡を入れる。
『ごめん、至急。伊奈瀬くんが居なくなった、連れてった相手は僕の親衛隊隊長らしい。面識がないけど先輩だからって知らずについて行った可能性がある、悪いけど捜索に協力して欲しい』
『了解、こっちでも色々当たってみる。他の情報は?』
『……考えたくないけど、もしかしたら伊吹白乃と隊長が繋がってた可能性がある』
『は!?それって…』
『僕もそんなこと考えたくないよ、ただこのタイミングで伊奈瀬くんが声をかけられて居なくなったことを考えたら可能性は高い』
『…ッ、はあ、分かった。こっちに何人か風紀委員寄越せ、一緒に捜索してもらう』
『すぐに手配するよ、僕が持ってる伊吹白乃の居場所を共有するからそこに行ってみて欲しい。空振りするかもしれないけど』
『んなの見つかりゃ問題ねえだろ』
『そうだね、すまない。任せた』
『お前も気を付けろよ』
『分かってるさ』
生徒会室に居るであろう鳳へ連絡を入れ、風紀委員たちにも連絡をし何名か生徒会と共に行動してもらうために動いてもらった。
僕は一番可能性があるとされている教室へ向かうべく他の風紀委員を数名集め、目的地へと走って向かった。
一方連絡をもらった生徒会室では――
「お前ら、一旦今の仕事止めろ。橘から連絡があって伊奈瀬が居なくなったらしい。情報によると多分連れ去りでその相手が橘の親衛隊隊長、裏には伊吹白乃が居る可能性がある」
「い、居なくなった!?」
「那月くんが…?」
「………」
「橘が生徒会に風紀何人か寄越すらしいから一緒に探して欲しいとのこと、居場所は、あー…送られてきたな。お前らにも共有するから光と萊は風紀と一緒に行動してくれ、俺は真緒と行く」
「…わか、た」
「真緒、落ち着け」
「光と萊はちゃんと風紀と動けよ、一人で突っ走るな。分かったか?」
「分かっていますよ、でも…」
「そうだよ!俺っち那月くんのこと心配ー!」
「それはみんな一緒だ、落ち着け。居場所の、って言ってもあくまで予測に過ぎないが5ヶ所あるらしい。とりあえず俺らで3ヶ所潰すぞ」
「分かりました」
「わかったー!」
「………」
「情報は随時連絡を取り合うこと、あと親衛隊隊長見かけたら即捕まえろ。そのまま風紀委員室へ連れて行け、じゃそんな感じでよろしく」
「私が伊奈瀬くんを…」
「俺っちが見つけてあげるんだからね」
「……な、つき」
各々が自分が那月を助けると意気込む姿を見てそっと溜め息を吐く鳳だった。
コンコンッ
「すみません、風紀委員です。生徒会の皆さんはいらっしゃいますか」
「…来たか、よし。行くぞ」
消えた那月の捜索が、――始まる。




