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ep.25


――ピンポーン



次の日の放課後、見回りがてら寮へと行きお目当ての人物の部屋のインターホンを鳴らす。


「はいはいはーい!」


ドタドタと慌ただしく出てくる部屋主を前に相変わらず元気だなあと、呑気なことを思ってしまう。


「風紀委員長いらっしゃいませー!」

「こんにちは、浅見くん。伊奈瀬くんはいるかな?様子はどうだい?」

「あーっと…、上がっていきますか?」

「え?大丈夫なのかい?」

「今南も一緒にいるんですよ、なっちゃんのそばにいてくれてて俺もいるのでそれなら会えそうかもってことになって」

「そうだったんだね、じゃあ少しだけお邪魔してもいいかな?」

「はい!どうぞ」

「お邪魔します」


部屋へ上げてもらうとリビングルームには確かに二人の後ろ姿が見えた。


(本当に大丈夫、なのかな…)


少しの不安を抱きながら声をかける。


「伊奈瀬くん、南くん、今大丈夫かい?」

「あ、風紀委員長こんにちは」

「あ…えと…、こ、こんにちは…」


(まだ少し怯えてるようだね)


「うん、こんにちは。調子はどうだい?」

「那月くん、話せそう?」

「う、うん。えっと…、ま、まだ部屋から出るのはちょっと怖い、です。でも!昨日みんなでご飯を食べました、すごく楽しかったです」

「うんうん、そうかい。それはよかった、浅見くんも南くんもありがとうね」

「いえ、僕たちはやりたくてやってる事なので」

「そうですよー!なっちゃんは俺らの友達なので!」

「伊奈瀬くんはいい友人をもったね」

「はい…!」


少し恥ずかしそうに微笑む姿を見て少しホッとする。

この笑顔が奪われるようなことが起こってしまった、いや起こしてしまったことに風紀としてとても悔しかった。


「ゆっくりで大丈夫だからね、生徒会のみんなも心配してたからそのうち顔を見に来たいと言うだろうけど無理しなくていいから」

「あ、そう、ですよね…。僕、心配かけたままだ…」

「伊奈瀬くん、気にしなくて大丈夫、ね?」

「はい…、すみません…」

「なーっちゃん!気にしなくて大丈夫って言ってくれてるんだから気にしないの!」

「こうやって僕たちや風紀委員長と会えただけでも大進歩だよ、那月くん」

「部屋から出るのが怖いのは分かるから無理しなくていいからね、先生方には話つけてるから」

「あ、ありがとうございます」

「うん。あ、そうだ。伊奈瀬くんに一つ聞きたいことがあるんだけど伊吹白乃って知ってる?」

「……? いえ、知らないです」

「ふむ…、そうかい。ありがとう」

「あ、浅見くんと南くんは後で話があるからちょっと来てくれる?」

「…?分かりました」

「はーい!」

「じゃあ、伊奈瀬くんの顔も見れたことだしそろそろお暇しようかな」

「え、あ…、もう帰っちゃうんですか?」

「まだ居てほしい?」

「や、えっと…! お忙しいですよね、すみません…」

「また来るから安心して、その時は生徒会の誰かと一緒かもしれないけど、ごめんね?」

「いえ!ありがとうございます…」

「よしよし、ゆっくり休むんだよ」

「はい」

「じゃあ、浅見くんと南くんちょっとこっちに来てくれるかな?」


二人を廊下へ呼び出し昨日の出来事を話す。


「ここから話すことは伊奈瀬くんにはまだ秘密だよ、三年の伊吹白乃って先輩が伊奈瀬くんを狙って何か動いているらしい」

「!? 狙ってるってどういう…」

「そんな先輩この学園に居ましたか?」

「あまり表に出てこないで有名だから君たちは知らなくて当然か」

「あの、その先輩がなっちゃんを狙ってるって具体的には…」

「まだ分からない、ただ忠告メッセージが届いたんだ。だから今まで以上に伊奈瀬くんの周りには気をつけてあげてほしい」

「そんな危ない先輩なんですか?」

「そうだね、僕も詳しくは知らないから今調べてもらってるところだよ」

「そうなんですね…」

「君たちが学校へ行っている間に接触してくる可能性もあるから対策に悩んでてね」

「那月くんまだ外には出られないから…」

「俺らが居ない隙を狙ってくる可能性もあるってことか…」

「そういうこと、本来なら一緒に居てあげて欲しいけどそれは現状難しいからね」

「なっちゃんには部屋にいる時誰かが来ても出ないように言うしかないのかな…?」

「でも相手が合鍵とか作ってたら意味ないじゃん!」

「あ、そうか…。何してくるか分かんないんだもんな」

「困らせるようなこと言ってごめんね、でも君たちにも協力して欲しくて」

「もちろんです!」

「那月くんのためなら親衛隊も動かしますよ」

「被害が出る前に何とかしたいんだけどね、生徒会とも話をつけるつもりだよ」

「協力者は多い方がいいですもんね」

「俺らに出来ることならなんでも言ってください!」

「君たちには寮では常にそばにいてあげて欲しい、外出するってなった時は風紀に連絡くれると助かるな」

「分かりました、気を付けます」

「うん、ありがとう。入江くんにも伝えてもらえるかい?」

「もちろんです!」

「俺ら三人で出来る限りのことはします」

「任せたよ、何も起こらないのが一番いいけど…」

「もう那月くんの悲しむ顔は見たくないな」

「そうだね、なっちゃんには笑ってて欲しいな」

「二人は頼もしいね」

「えへへ、風紀委員長に褒められちゃった」

「浅見はすぐ調子に乗るんだから…」


「まあそういうことだから、よろしくね」

「「はい」」


「あの…? は、話し終わった…?」



リビングのドアを開け少し顔を覗かせた那月が声をかける。



「なっちゃんごめーん!終わったよう!」

「那月くん待たせちゃってごめんね」

「伊奈瀬くん、もう用は済んだから大丈夫だよ。そういうことで、よろしくね」


「じゃあ本当にお暇するよ、お邪魔しました」

「また、来てください…」

「うん、約束するよ」

「…!はい!」


またねと部屋を後にし、ふうっとため息を吐く。



元気そうでよかった、まだ部屋から出るには大変だと思うけどそれでもこうして会えたのだ。


「よかったよかった」


一人そう呟き部屋へと一旦帰ることにした。

何か情報が届いていないか、確認するためだ。



手がかりが掴めればいいけど――


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