ep.16
「なっちゃん、おはよう。俺学校行ってくるね、また夕方にね」
ドアの向こうから浅見の声が聞こえ、その声で目が覚めた。
(あれ、僕…何して…?)
泣き疲れて横になったまま床で寝てしまっていたことに気付いた時には体が動かなかった。
「ケホッ…」
(起き上がれないや、まあいいか…このままでも…)
また、ゆっくりと目を閉じると夢を見た。
――那月!こっち!
(…?誰だろう、僕のこと呼んでるのに。どこにいるの?)
早く!こっち来て!
(待って、どこ?)
もう!何してんだよー
(どこにいるの? ねえ)
ねえ那月、好きだよ――
(……好きって、なに)
ん、んんっ…。
目が覚めると外はもう夕方だった。
僕、こんなに寝ちゃってたんだ。
そう思っていた時――
コンコン…
「伊奈瀬くん?いますか?私です、佐々野です。」
「ケホッ…」
「今日は真緒が来れないので、私が来たのですが大丈夫でしょうか?きちんと寝れていますか?」
心配してくれる光の優しさに少しだけ、泣きたくなる。
(大丈夫、大丈夫だよ…、ごめんなさい)
副会長は今日はこんなことがあった、や会長がやらかした話などくすくすと笑いながら楽しそうに話してくれた。
だけど僕は横になってただ無言でそれを聞いていることしか出来なかった。
「伊奈瀬くん、無理に出てきて欲しいとは言いません。ただ私たちはあなたのことが心配なんです。それだけは分かっていてくださいね」
「…………」
「伊奈瀬く「たっだいまー!なっちゃーん!あれ?副会長だ」
「おかえりなさい、浅見くん」
「ちわっす!なっちゃんどうですか?」
「何も反応がありませんね」
「そうですか…。朝出る時も声かけたんですけどやっぱり何も反応無くて」
「…ゆっくり、待ちましょうか」
「ですね、あ、町屋先生には俺らで事情話してるんでいつでも来いって言ってくれました」
「ありがとうございます、そこまで手が回っておらず申し訳ございません」
「いえいえ!大丈夫ですよ!」
ドアの向こうから聞こえてくる会話に、みんなが心配してくれているのが伝わってくる。
起きなきゃ、動かなきゃ…、動けない。
ただただしんどくてつらくて。
この気持ちをどこにぶつければいいのか分からず一人でずっと抱えるしかなかった。
ごめんなさい、ごめんなさい…。
抱えきれなくなったものは、涙として溢れ出す。
ポタポタつたい落ちる雫は静かに床へ溜まっていった。
「伊奈瀬くんは、ご飯など食べれているのでしょうか?」
「いや、作れるとかも言って無かったですし食堂も連れて行けてないので分かんないですね」
「そうですか…、何か食べられるものでも買ってきた方が良さそうですね」
「ですね、俺ちょっと買い物行ってくるのでなっちゃんのこと頼んでもいいですか?」
「ええ、もちろんです。よろしくお願いしますね」
「はーい!なっちゃーん!ちょっと買い物出てくるね!」
僕は、こんなに優しい人たちにこんなに迷惑かけてしまって、何をしてるんだろう。
「ああ、頭が痛い、な…」




