ep.15
――人が、怖い。
薄暗くなった部屋で一人膝を抱えじっと耐える。
良くしてくれた副会長も真緒先輩も、浅見くんですら怖くて仕方ない。
ここから出てしまえばまた、あの時のようなことが起こるのでは、そう思うと怖くて仕方がなかった。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
小さくか細い声で誰に言うでもなくひたすらに謝り続ける。
外からの心配している声は聞こえているが、僕にはそれに応える勇気が無かった。
「出てくる気配がありませんね…」
「困ったね、このままという訳にもいかないし」
「………」
「あ、あの!なっちゃんに何があったんですか?」
そう聞いてくる浅見に三人は顔を見合わせる。
「同室者ですし、浅見くんは友人のようなので隠してるのはやはり…」
「そうだね、でもこればっかりは本人の意思無しで話すのもね」
「……那月、傷付けたく、ない」
「も、もしかて… 襲われたり、とか?」
「「「………」」」
「当たりなんですね!?何で隠すんですか!?」
「浅見くん落ち着いてください」
「落ち着いてられるわけないでしょう!!友達傷付けられて黙ってろって言うんですか!?」
「そうは言っていないだろう、僕たちも出来ることはやるつもりだよ」
「じゃ、じゃあ何でなっちゃんはこんなことになってるんですか!?俺…俺、友達なのに、何も出来ないの嫌ですよ…」
「……那月、のそばに、いて、あげて」
「………え?」
「那月、は、今一人で、戦ってる、から。そばに、いてあげて」
「ッ…、分かりました」
「…うん」
「そうですね、私たちでは限界がありますし。浅見くんたち友人にもそばにいてあげて欲しいです」
「ぜひ協力してくれると嬉しいよ」
「俺、なっちゃんが笑ってくれるように頑張ります!」
「はは、頼もしいね」
「ですね、みんなで伊奈瀬くんを支えてあげましょう」
「あの、このこと入江と南にも話して大丈夫ですか?二人も友達なので隠したくなくて…」
「協力者が多いには構わないけど、口外しないと約束出来るかい?」
「大丈夫です!二人ともなっちゃんのこと大好きなので!」
「ふふ、それは頼もしいですね」
「……ん」
部屋にこもってしまった那月のためにと各々が出来ることをしようと話し、浅見は入江と南へと連絡し光は雅也たちへと連絡を取った。
――連絡を受けた四人が浅見と那月の部屋へと集まって来る。
「那月くんが部屋から出てこなくなったって本当?」
「那月大丈夫なのか?」
入江と南が心配そうに声をかけてくる。
「伊奈瀬の様子はどうなんだ?」
「那月くんこもっちゃったってー…」
雅也と萊も様子を伺うように聞いてくる。
「私たちではどうにも、ただ真緒が声をかけた時だけ反応があったんですよ。ただ、それ以降は声をかけても何も反応が無くて…」
「僕たちに出来ることは限られてるよ、でもこのまま伊奈瀬くんを一人にはさせない。これは風紀委員会としても見過ごせないからね」
「あの!俺たちにもなっちゃんのために出来ることがあったら言ってください!」
「そうです、友達として出来ることはなんでもします」
「俺らで力になれることありますか?」
「伊奈瀬は良い友人に恵まれたな」
「ええ、そうですね」
チラリと那月の部屋の方を見ると扉に額と手を付け那月、と声をかけ続ける真緒がいた。
外から、みんなの声が真緒先輩の僕を呼ぶ声が聞こえる。
ごめんなさい、弱虫で。
ごめんなさい、泣き虫で。
ごめんなさい、笑えなくて。
ごめんなさい、大丈夫だよって言えなくて。
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
自分を責め続けてしまい、泣き疲れて床へと横になる。
冷えた床が少し、心地よかった。
「ああ、痛い、な…」
心臓辺りをキュッと握りしめる。
みんなの優しさが、今はとても痛かった。
ゆっくり目を閉じると溜まった涙がこぼれ落ち床へと落ちていく。
膝を抱えるように小さく縮こまり、静寂と暗闇とわずかな痛みに耐える。
気付けばそのまま、眠りに落ちていた。
「……那月」
「真緒、今日はもう帰りましょう。また明日来ましょう、ね?」
「…でも」
「真緒、光の言う通りにしろ。伊奈瀬の事が心配なのは分かるが時間が必要な時だってある」
「真緒くん、一緒に帰ろー?ね?」
「なっちゃんのことは俺が気にかけておくので大丈夫ですよ」
「僕たちも何かあればすぐに駆けつけられるようにしますんで」
「先輩達が心配なのも分かりますけど、それは俺らも一緒なんで」
「ほら、高良。今日はもうゆっくり休ませてあげよう」
「………ん」
みんなの説得でやっと扉の前から立ち上がる。
「……那月、また、あした」
そう言い残し、浅見以外は自室へと戻って行った。




