ep.13
「部屋、戻ろ…」
「ここって…?」
「…おれ、の、部屋」
「あ、そっ、そうだったんですね…!すみません、僕…」
那月、そう優しく呼ばれ真緒を見ると大丈夫だから、そう言われた。
何も言い返せなくて、ただただ申し訳なくて。
「……いこ」
「あ、はい…」
「……あ」
「…? 真緒先輩?」
「…ちょっと、待って、ね」
スマホを取りだし誰かへメッセージを送っているのか、操作をしている。
それをただじっと待っていると終わったのかこちらを向き行こうか、と声をかけられた。
「…同室者、居る、みたい」
「あ、そう、ですよね…」
「……だい、じょぶ」
不安になっているとそっと手を握られそのまま真緒の部屋を出るとそこには見知らぬ人が立っていた。
「高良先輩、こんにちは。委員長から事情は聞いてます、部屋までご一緒させていただきますので」
「……ん」
「……あの?」
「あ、ご挨拶が遅れました。伊奈瀬君ですね、風紀委員会です。よろしくお願いします」
「あ、はい。よろしくお願いします…」
なんで風紀委員会の人が?って思ったけど、聞ける雰囲気じゃなかったので僕は黙って真緒先輩と手を繋いで部屋まで案内してもらった。
――ピンポーン
自室へ着きインターホンを押すと中からバタバタと音が聞こえてくる。
「はいはいはーい!もう!いい所だったのにぃぃぃぃ!誰ですかあああ……ってあれ書記の…、え!?なっちゃん!?」
「あれ、浅見くん?」
「ななな!?なんで2人がここに!?というかそちらは風紀委員会の…、どういうこと??」
「…那月、同室、者」
「あ、浅見くんが…?」
「浅見くん、僕から説明させていただきます。こちらは同室者の伊奈瀬君です。あと、しばらくですが護衛という形で生徒会と風紀委員会が伊奈瀬君の様子を見に来ますのでよろしくお願いします。理由は、まあ今は伏せておきますが」
「はあ、分かりました…?」
僕も浅見くんも頭の上にハテナが浮かぶ。
護衛ってなんのことだろう…? また真緒先輩も来てくれるのかな…?
「…那月」
「あ、はい」
「……また、来る、から」
「…! 分かりました」
「………ん」
嬉しそうにしていたのが顔に出ていたのだろうか、また優しく撫でられる。
「ふあああ!!ワンコ書記×無自覚美人…!!ごちそうさまです!!」
「浅見くん?くれぐれも、気を付けるように」
「…あ、はい。すみませんでしたあ…」
「では、僕達はこれで失礼します。伊奈瀬君、部屋のことは浅見くんに聞いてくださいね」
「はい、ありがとうございます」
「……那月、また、ね」
「はい、また」
バイバイと手を振ってくれた真緒先輩へ手を振り返す。
その後ろでは浅見くんが何故か悶えていた、なんでだろう?
「あの、浅見くん。今日からよろしくね?」
「おっふ、なっちゃん!よろしくねえ、じゃあルームツアーに出発だ!」
真緒先輩といい、先程の風紀委員会の人といい、浅見くんといい、何かと気にかけてくれて本当に嬉しかった。
まあ浅見くんは僕に何が起きたのか知らないんだけど。
部屋を一通り案内してもらい、ここがなっちゃんの部屋ねと言われた場所にはもう既に荷物が届いていた。
「荷解き手伝う?」
「あ、ううん。大丈夫だよ、ありがとう」
「そっか!じゃあ俺は隣の部屋だから何かあったらいつでも声かけてね!あ、夕ご飯は食堂行こうか。俺料理とか作れないから」
「うん、分かった。それまでには終わらせるね」
じゃあまた後で、と浅見くんは部屋へと戻って行った。
「……はあ」
パタンッと閉めたドアを背にずるっと座り込む。
(怖かった)
その気持ちだけがぐるぐると渦巻いていた。
「荷解き、しなきゃ…」
そう思っているが体が動かない。
(怖かった、怖かった…)
またあの時の光景がフラッシュバックする。
ガタガタと震える体をギュッと抱きしめ1人耐えるが、どうしても泣いてしまった。




