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守る義務、壊す責任  作者: アル治


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5/5

第5話  終幕

いつも読んでいただきありがとうございます。

音が、消えていた。

外の戦いも。

街のざわめきも。

すべてが遠くに引いて、ただ1つだけが残る。

機械の唸り。

街の中心。

黒い構造物の前に、アオイは立っていた。

光が、流れている。

管の中を巡るそれは、誰かの記憶。

誰かの大切だったもの。

それが、この街を支えている。

「……これで」

小さく、呟く。

「守ってるつもりか」

答えはない。

ただ機械が、静かに応えるように動き続ける。

後ろから足音がした。

「そこから離れてください」

振り返らない。

分かっている声。

ユイ。

「それは、人類の存続に必要な装置です」

知らない言葉。

知らない口調。

それでも、声は同じだった。

「……そうだな」

アオイは、静かに答える。

「必要なんだろうな」

1歩、前へ。

「危険です。これ以上近づかないでください」

警告。

でも、その声にはもう感情はない。

「……なあ」

アオイは、機械を見たまま言う。

「ここで、何を削ってるか知ってるか」

沈黙。

「……記憶です。それは既に説明されています」

正しい答え。

でも、それだけじゃない。

「違う」

一言で、切る。

「生きてた証だ」

その言葉に、わずかな間が生まれる。

だが、すぐに消える。

「それは、必要な犠牲です」

必要。

義務。

責任。

全部、聞いてきた言葉。

「……そうか」

アオイは、ゆっくりと息を吐く。

そして。

振り返る。

ユイが、そこにいた。

変わらない顔。

変わらない姿。

でも、何も残っていない。

「……あなたは、何をしようとしているんですか」

まっすぐな問い。

その目に、自分はいない。

それでも。

「……終わらせる」

静かに、答える。

ユイは、ほんの少しだけ眉を寄せる。

「それは、許可されていません」

「だろうな」

1歩、距離を詰める。

ユイが構える。

その動きに、躊躇はない。

「これ以上の接近は――」

言葉が途切れる。

アオイの手が、ユイの手首を掴んでいた。

力は込めない。

ただ、触れる。

一瞬。

本当に一瞬だけ。

ユイの動きが、止まる。

目が揺れる。

何かを探すように。

「……あれ」

微かな声。

だが、それもすぐに消える。

次の瞬間には、もう元に戻っている。

アオイは、静かに手を離した。

「……もういい」

振り返る。

機械の前に立つ。

唸りは、変わらず続いている。

これがある限り。

誰かが削られ続ける。

誰かが忘れ続ける。

守るために。

「……違うだろ」

手を伸ばす。

触れる。

その瞬間。

流れ込んでくる。

知らない記憶。

誰かの笑顔。

誰かの涙。

誰かの別れ。

全部、ここにある。

「……こんなもんで」

手が震える。

「……生きてるって言えるかよ」

後ろで、ユイの声が響く。

「やめてください――!」

届かない。

アオイは、力を込める。

止めるためじゃない。

終わらせるために。

「……これでいい」

何かが、砕ける。

音は、小さかった。

だが。

唸りが、止まる。

光が、消える。

すべてが、静かになる。

完全な沈黙。

アオイは、その場を離れる。

後ろを見ない。

もう、何も残っていないから。

ただ1つ。

“終わらせた”という事実だけを残して。

外へ出る。

街の外。

そこには、まだ動いているものがいた。

壊れたまま。

止まれないまま。

それでも、アオイは歩く。

もう、止めない。

もう、壊さない。

ただ。

終わった世界の中を、歩いていく。

守る義務は、終わった。

残ったのは。

壊す責任だけだった。

今まで読んでいただきありがとうございました。

ヴァンパイアを書きたくて、書いたのですがヴァンパイアらしくないですが、すみません。

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