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守る義務、壊す責任  作者: アル治


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1/5

第1話  境界線の外側

この作品もよろしくお願い致します。

5話前後の話になります、よろしくお願い致します。

風が、乾いた匂いを運んでくる。

街の外。

石造りの壁の前に、ヴァンパイアたちは整列していた。

誰も喋らない。

誰も武器を持たない。

ただ、静かに前を見ている。

まるで戦うためじゃなく、そこに“在る”ために立っているみたいだった。

城壁の上には、人間たちの影が並んでいる。

弓を構えたまま、動かない。

撃つことも、声をかけることもない。

ただ見ている。

守られている側が、守る側を。

「……来るぞ」

誰かが、低く呟いた。

最初は、人の群れに見えた。

遠くの地平線。

黒い点が、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。

だが、違和感がある。

足並みが揃っていない。

それでも、誰1人として止まらない。

転んだ影があった。

そのまま地面を引きずりながら、前へ進み続けている。

「……あれは」

城壁の上で、誰かが息を呑む。

近づく。

形がはっきりしてくる。

人間の姿。

けれど――壊れている。

伸びきった髪。

異様に長い爪。

歪んだ関節。

そして何より、その動き。

全力。

最初から最後まで、加減がない。

「配置、維持」

前列の誰かが静かに言う。

声に感情はない。

主人公は、1歩前に出た。

手には何も持たない。

ただ、わずかに重心を落とす。

最初の1体が、跳んできた。

速い。

迷いがない。

いや――迷えない。

振り下ろされた腕を、受ける。

骨が軋む。

重い。

壊すためだけの力。

「……やめろ」

零れた言葉は、風に消えた。

主人公は体を捻る。

力の流れを逸らし、そのまま足を払う。

崩れる。

だが――止まらない。

地面を掴み、爪を砕きながら、また起き上がろうとする。

首元に手を当てる。

ここを折れば、終わる。

それくらいは分かっている。

でも。

目が合う。

濁った瞳の奥で、何かが揺れた。

ほんの一瞬。

「……まだ、いるのか」

次の瞬間、腕が振り上げられる。

主人公はそれを受け流し、関節を捻る。

“ゴキッ”

肩が外れる。

体が崩れる。

それでも、その指は地面を掴む。

まだ、進もうとする。

「……止まれ」

届かない言葉。

次が来る。

また1体。

さらに後ろから、無数に。

避ける。

受ける。

外す。

だが、数が多すぎる。

“バキッ”

音が変わる。

外したんじゃない。

壊した。

一瞬だけ、動きが止まる。

だがまた、動き出す。

壊れたまま。

「……なんでだよ」

視界の端で、仲間が吹き飛ぶ。

城壁の上で、誰かが叫ぶ。

それでも、止まらない。

目の前のそれが、まだ手を伸ばしてくる。

もう、原形も保っていないのに。

一瞬だけ。

また、目が合う。

そこにあったのは、敵じゃない。

主人公の手が、止まる。

「……っ」

だが、次の瞬間にはもう遅い。

背後から衝撃。

体が弾かれる。

地面に叩きつけられる。

息が詰まる。

立ち上がる。

視界の中で、無数の“それ”が街へ向かって進んでいる。

止められない。

「……足りない」

自分のやり方では。

守れない。

風が、また吹いた。

その中で、主人公は立ち尽くす。

境界線の外側で。

守るはずだったものが、壊れながら迫ってくるのを見つめながら。

読んでいただきありがとうございます。

今後もよろしくお願い致します。

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