イルモの戦い(8)
ゆっくりと進撃する80ナルル蒸気魔導砲が、イルモ城門前に姿を現した頃・・・
城門の向こう、町中では勝利を告げる歓声が響き渡り、
兵士たちと住民たちが掲げる・・数多くの旗が力強くはためいていた。
そう、ユラークたちによって・・イルモの町はほぼ掌握していたのである。
念願の故郷奪回・・ユラークたちの願いがかなった瞬間でもあった。
「「うぉ~! 勝った! 勝ったのだ!」」
「「俺たちは帰ってきた!」」
一方・・・
聖教軍の残党は、副司令官デーヴァとともに町から脱出し、
少し離れた荒れ地にて再集結を試みていた。
だが、その集結した軍勢の中に・・・
本来、軍を束ねるはずの司令官カルザンの姿はいない。
指揮を執るのは、副司令官デーヴァ。
敗走の混乱を、彼の鋭い号令で辛うじてまとめ上げていた。
荒地に立つデーヴァは、遠くイルモの城門を睨みつける。
「このまま・・おめおめと聖都に戻るわけにはいかない。
魔族どもを叩きのめし再奪還してやる! 非道なる魔族に負けるわけにはいかないのだ」
・・とはいうものの聖教軍の状況は、まさに最悪だった。
兵力こそ5000名を保っているものの、兵たちの剣は摩耗し、鎧は砕け、食料に至っては一粒すら残っていない。
このままでは自滅は必至。
ならば・・もはや選べる道はひとつしかない。戦うのだ。
敵から武器と食料を奪えば・・全ては解決するはず。
デーヴァは剣を握りしめ、静かに命じた。
「・・よし、行くぞ。今夜にも夜襲を仕掛ける。我らの正義を示すのだ」
しかし現実は、彼の決意とはあまりにも乖離していた。
敗走の果てに疲労困憊した兵たちは、士気は落ち込み、動きは緩慢。
もはや"戦える軍"とは呼べぬ有様となっていた。
皆、地面に座り込み、立てる者はほんの僅か。
その姿は、まるで魂を抜かれた幽鬼の群れだった。
「も、もう無理です・・・デーヴァ殿。
我々には、もう・・戦える力は!」
「おい! 貴様は何を言っているのだ。立て! 戦え! 我らは・・誇り高き聖教軍なのだ!」
その瞬間だった。
部下たちを叱り、殴り付けようとしたデーヴァの視界に、一条の光が差し込んできた。
それは、彼が生涯・・最後に見た煌めきだった。
大地を揺るがすその閃光は・・ラトナが放った80ナルル魔導砲の一撃!
キュウルーラからの偵察報告により、逃げ散ったはずの聖教軍が再び集結しつつあるという。
しかもかなりの近場の窪地、視覚に入らない地点で・・・
ラトナは一瞬の迷いもなく、敵・集結陣地に対して即座に砲撃を決断した。
「撃て!」
ズドオオォォォ・・・ン
大気そのものを揺さぶる轟音が、イルモの町にまで響き渡る。
地平線近くで・・巨大火柱が天へと舞い上がり、上空の雲を吹き飛ばす。
住民たちは、初めて見るその光景に息を呑み、ざわめきが広がった。
「「うぉぉぉ・・なんなんだあれは!」」
だが、近い将来・・イルモ市宰卿となるべき人物・ユラークが落ち着いて状況を説明すると、住民たちの不安は静かに収まっていったと同時に、
ユラークたち解放軍が秘める圧倒的な"魔法力"、いわゆる武威を知らしめたのだ。
そして・・その魔導砲のターゲット、聖教軍の残党が潜んでいた陣地は、その一撃によって地形ごと抉られ、抵抗の影すら残さず吹き飛ばされたのである。
そう、聖教軍は事実上壊滅したのであった。
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イルモ奪還の歓喜が町に満ちても、ユラークたち解放戦線に休む暇などなかった。
故郷を取り戻しただけでは終わらない。その続きがあるのだ!
統治体制を整え、町を再び動かす・・・その重い責務が、彼らの肩にのしかかっていた。
一方でラトナは、解放されたばかりのイルモの町へは入らず、城門前に鎮座している80ナルル蒸気魔導砲の内部に留まっていた。
そりゃそうでしょうw
理由は単純で、そして切実だった。
中世の町は・・・臭う。
イルモの町は特にひどく、下水道すら整備されていない。
ラトナが支配しているヴァラウの町とは違って、衛生環境は最悪だった。
「ちょっと・・・私には、あの匂いは耐えられないのです」
そんなわけでラトナは、アユリーナと共に蒸気魔導砲内のラウンジ!?で作業に没頭していた。
彼女たちが手がけるのは、ドラゴンの姿をした小型動物魔導ペット、"サティたん"の製作の続きである。
小型でありながら高機能を詰め込むのは至難の業だ。
手がつる・・腰が痛いw
特に厄介なのは、三層式魔導コアシステム・・
階層状に並んだ計算点ノードは、細かすぎて目が疲れるんだよね。
アユリーナは眉を寄せた。
「・・・これ、不具合が多すぎて、いらいらします」
ラトナも苦笑しながら、静かに応じた。
「ふふ・・私もよ。だが、この難物・・必ず仕上げてみせるよ」
まだまだ完成は遠い。
だが二人の手は止まらない。試作は少しずつ形を成していった。
そしてその一方で・・
ラトナの子孫である"マザリンちゃん"は、相変わらず蒸気魔導砲内の豪華VIP牢屋に放り込まれたまま、静かに"保護"されていたのである。
・・・というかラトナはすっかり彼のことを忘れていたw
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




