イルモの戦い(5)
何もかもを破壊し尽くす悪魔の兵器・・・鉄の神輿(80ナルル蒸気魔導砲)。
カルザン率いる聖教軍本体は・・この忌まわしき兵器を破壊せんと南部方面から突入した。
距離はもう僅か。
あと一歩・・・手が届くところまで迫る!
だが、その時! 東北方向の空に天空へと舞い上がる巨大な火柱を目撃した。
それは東部、北部戦線付近に何らかの異変・・・・
端的に言えば、ラトナが放った80ナルル魔導砲が地上に着弾、大爆発を引き起こしたのだ。
轟音と閃光が戦場を裂き、東部・北部方面の聖教軍は一挙に混乱へと叩き落とされる。
兵数では勝っているにもかかわらず、戦況は逆転し、劣勢へと追い込まれだしたのだ。
これは聖教軍にとって・・想定外の出来事。まさかの事態!
敵・魔族軍の主力を釘付けにするという役割をどこまで全うできるのか!?
「ぬぬっ・・これは無理だな!」
そう、こうなっては仕方がない。
カルザン率いる聖教軍本体は、敵の援軍が戻ってくる前に・・・忌まわしき存在、鉄の神輿を素早く破壊するしかないのだ!
それが唯一の勝機。
それが、この戦場をひっくり返す最後の一手。
「我らには女神バベル様がついておられる。恐れるな!・・神輿を叩き潰せぇ!」
聖務長にして司令官、カルザンの声が戦場に轟く。
彼は剣を振り上げ、立ちはだかる鉄のゴーレムへと突進し・・
神力を宿した一閃が走り、通常なら数十人がかりで倒す怪物を一撃で屠ったのだ。
これが・・聖務長にして司令官カルザンの実力!
兵士たちの歓声と咆哮が空を裂き、聖教軍は魔族の中枢、鉄の神輿を守る鉄のゴーレム隊へと突入していく。
魔弾と剣撃と叫喚の中、ただ一つ・・悪魔の兵器を沈黙させるために。
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一方、ラトナとアユリーナは眼下で巻き起こる異変に戸惑っていた。
「こんなところまで押し寄せてくるとは・・・!」
「ラトナ様、まずいです!」
敵・聖教軍が・・いつのまにか、80ナルル蒸気魔導砲の足元にまで、攻め寄せてきていたのだ。
今はどうにか、守備戦力でもあるキュウルーラ100体で耐えているが、敵の勢いは凄まじく、徐々に押されつつあった。
東部・北部方面では我ら連合軍が優勢となっているというのに・・
あと少しで勝てるというのに・・・!
まてよ、いや違う・・・! ラトナの脳裏に、鋭い確信が走る。
" 東部・北部の聖教軍は囮で、ここが本命ということなのか! "
彼女の表情がわずかに曇った。
「ちっ、仕方がない。ここが本命というならば・・・見せてやろう! この私の実力を・・!」
・・・・とカッコよく言ってみたものの、実はそこまでの底力はなかったw
先ほど放った黒い触手・・・束縛の魔導。
あれで魔力を大きく消耗してしまい・・正直、余裕はほとんど残っていない。
アユリーナもたぶん・・同じのはずだ。
でも、なんとかなると思う。そう、"あれ"を使うのだ!
"あれ"だよ"あれ"!
魔力消費も少なくてすむ利点もある。
今・・使わずしていつ使う!?
「そうだね、ここには味方兵士がいない。"あれ"を使うにはちょうど良い。
ちょっとした見物になるよ」
「"あれ"って何!? あっ なるほど"あれ"か・・・ラトナ様! 幻影陰陽術ですね!」
ラトナは大きく頷くとともに・・口元が獰猛な笑みへと変わった。
「ふっ・・・ふふふふ」
懐から例の式札を取り出し、その表面を指先でなぞると・・・
その瞬間、ラトナの魔力がふわりとあふれ、吸い寄せられるように札へと流れ込んでいく。
そう、これは・・幻影陰陽術の発動である。
光が立ち上がり、式札が輝きだす!
アユリーナは覚悟を決め・・ラトナは身構えた。
空気がわずかに震え、視界の端がゆらりと揺らぐと・・・
ラトナたちの眼下、80ナルル蒸気魔導砲の足元に黒い亀裂が走り、
そこから出現する幾つもの蠢く影・・・!?
それは・・何本もの足を持ち、人間ほどの大きさをした"あれな"生物が続々と地上に現れ出したのだ。
形容しがたい不快さと異様さをまといながら・・・・
ちなみに・・この幻影陰陽術は異世界の魔導。
その原理は謎に満ち、どんな幻影が現れるのか、ラトナ自身にも分からない。
ある種の"ガチャ"・・引くたびに結果が変わる、危険な賭け。
だが、湧き上がる黒き存在を見たラトナは、恐怖ではなく、むしろ愉悦を滲ませながら口角を吊り上げた。。
「ほう・・今回は"Gーゴキブリ"の幻影か。面白いじゃないか!」
ただし、アユリーナは、無言で一歩、また一歩と後ずさり!
あの巨大ゴキブリが視界に入らないように顔をそむけ、空を眺めていた。
もし、ここに味方兵士がいたならば・・アユリーナと同じく不快感に震え、
下手をすればパニックに陥っていたかもしれない。
だが幸いにも、この地にいるのは敵・・聖教軍のみ。
実に都合が良い。
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配下の兵たちを置き去りにして、カルザンは空気を裂くように駆け抜ける。
その手には抜き放たれた剣。
聖務長にして聖教軍司令官・・本来なら軍の最前線に立つなど、褒められたことではない。
だが、この瞬間だけは、規律も規則も意味を成さない。
重要なのは、ただひとつ・・・それは速度! スピード!
彼の視線の先にあるのは、
何もかもを破壊し尽くす悪魔の兵器・・"鉄の神輿"(80ナルル蒸気魔導砲)
それを破壊することこそが目的、何よりも優先しなければならないのだ。
カルザンは迷いなく突き進む。
その足取りは重圧を背負う司令官のものではなく、一人の戦士となっていた。
だが、そんなカルザンの足元がじわりと黒く染まった瞬間、空気が変わる。
"カサ・・カサカサ・・・"
耳の奥をざわつかせる、不気味な音が地面から湧き上がった。
「なに!?」
それは影でも、土煙でもない。
地面を割って現れたのは・・・巨大なゴキブリの群れだった。
一体一体が人間ほどの大きさを持つ、悪夢の化け物。
黒い塊がうねりながら地面を這い出し、カルザンの周囲を取り囲むように広がっていく。
戦場の空気が、一瞬で冷えた。
カルザンは思わず足を止め・・息を呑む。
「あうっ・・なんてものを! こ、これは・・・!
魔族軍め、こんなものまで繰り出すのか!」
その声は僅かに震えていた。さすがのカルザンも・・生理的に恐怖したのだ。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




