イルモの戦い(4)
ラトナ・ユラーク連合軍の主力は、巧妙に仕組まれた!? "釣り野伏せ"に誘い出され、釘付け・・身動きがとれない状態になっているのだ。
しかも・・数に勝る聖教軍に包囲されつつある。
聖教軍にとって有利な状況だ。絶好の機会・・!
実に素晴らしい! 計画通りだ。
司令官カルザン率いる本隊2000は、南方からの迂回進軍を開始した。
今なら・・敵・魔族どもの妨害、足止めをされず"鉄の神輿"・・80ナルル蒸気魔導砲へと肉薄できるはずだ!
カルザンは戦場を切り裂くような声で号令する。
「よし・・全軍、突進だ。ここで一気に押し潰すぞ!」
その言葉は兵士たちの胸を震わせ、聖教軍本隊は地響きを立てて前進を開始する。
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一方、蒸気魔導砲の天端で、ラトナとアユリーナは遠方に広がる最悪の戦況を見据えていた。
「ラトナ・・様、あれは・・!」
「あうぅ、まずい! 罠に嵌められたか・・」
互いに視線を交わすと、二人は言葉少なめに司令室へと駆け戻った。
このままでは、不用意に追撃したユラークたち解放戦線の兵たち(キュウルーラも含む)は包囲され、殲滅されてしまうだろう。
だが、まだ救いはあった。
ユラークたち解放戦線をおびき出すために、聖教軍が後退した・・その一手が思わぬ形でこちらに利をもたらしたのだ。
80ナルル魔導砲の最低射程距離外に聖教軍が入りこみ・・射撃可能となる。
多少の味方を巻き込む可能性はあるが・・それでも、大多数を救うために撃つ! 撃つしかない。
ラトナは一切のためらいもなく・・操作盤に手を伸ばし、指先で印を切る。
すると・・蒸気魔導砲が低く唸りを上げ、巨大砲塔がゆっくりと回転した。
「着弾予想位置、確認!
敵・聖教軍の後方1000ラヌルの岩肌・・ここだね、ここが良い!」
立体映像が淡く光り、地形が浮かび上がる。
「ラトナ様、これって・・・聖教軍に爆風をぶつけようってことなんですね!」
「そうだよ。しかも・・・とんでもない暴風だ。ふっふふ」
彼女は映像を見据えたまま、砲塔の角度を微調整した。
そして、ターゲットロック、全ての手順を確認・・・「問題なし!」
ラトナは短く頷くと・・・迷うことなく引き金を引いた。
次の瞬間・・・砲身全体が震え、地面が揺れ、空気が裂ける。
80ナルル魔導砲が・・火を噴いたのだ。
ゴッゴゴオオォォォォ・・・
大地を揺るがす轟音が戦場全体を飲み込み、大気そのものを震わせた。
80ナルル蒸気魔導砲の一撃は、聖教軍の後方・・北部戦線と東部戦線の狭間に着弾する。
そこはラトナ・ユラーク連合軍にとって、聖教軍が"爆風の壁"となる地点であり、狙いは明白!
そう、可能な限り連合軍側への被害を抑える位置を選び、必殺の一撃を叩き込んだのだ。
ラトナは立体映像を凝視し、拳をギュッと握りしめる。
「よし! うまくいった」・・短い声が司令室にこだました。
連合軍と対峙している聖教軍の後方・・・北部戦線と東部戦線の中間地点あたりに着弾したのである。
その瞬間、視界は白光に染まり・・続いて大地を割るような轟音が周辺一帯を呑み込んだ。
天へと巻き上がる巨大な火柱。
周囲を薙ぎ払う衝撃波と爆風は、あらゆるものを吹き飛ばし、砕き、押し潰していく。
大木は空へ舞い上がり、岩塊と土砂は空中で砕け散った。
まるで地殻そのものが、ひっくり返されたかのような天変地異。
その暴威は着弾点を中心に、円形に容赦なく広がっていく。
ゴッゴコオオォォォォ・・・
全てをスウィーパーする強烈な空気の壁・・恐るべき衝撃波が容赦なく聖教軍に襲いかかってきたのだ。
衝撃波の先端が戦列に触れた瞬間、兵士たちは抵抗する暇もなく地面から足を奪われ、強制的に空へと巻き上げられる。
「う、うわあああっ・・・! 」
「押し潰されるっ 助けっ・・」
叫びはすべて衝撃波に飲み込まれ、断ち切られた。
ダース単位で兵士たちが薙ぎ倒され、吹き飛ばされ、戦列は一瞬で崩壊した。
もちろん、吹き飛ばされているのは聖教軍の兵たちだ。
衝撃波はまだ、ラトナ・ユラーク連合軍の戦列には届いていない。
ラトナは立体映像越しにその光景を見据え、静かに口を開いた。
「予定通りだ」
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そして・・ゴッゴコオオォ
白い霧を吹き飛ばし・・轟音が空を裂く。
東部戦線へと出張っていたユラークは、突如として降り注いだ魔導砲の一撃に目を見開いた。
だが・・驚愕の表情が一瞬にして安堵へと変わる。
「おっ、さすがラトナ殿!」
聖教軍の後方が豪快に吹き飛び、炎と土煙が空を覆う。
視界の向こう・・敵戦列が一気に崩れ去り、迫りくる危機はその瞬間、完全に覆された。
ユラークと兵たちは互いに顔を見合わせ、声を張り上げる。
「これで形勢が変わる! 前へ出ろ・・突進! 」
「行くぞ、今だ! 」
その声が戦場にこだまする。魔導砲の一撃は、まさに連合軍にとっての救いとなったのだ。
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一方その頃・・・・南方方面から怒涛のごとく突進してくる一群の集団があった。
彼らは・・カルザン率いる聖教軍本隊2000名。
ラトナ・ユラーク連合軍を陽動によって あらぬ方向に引っ張り上げ、手薄となった鉄の神輿(80ナルル蒸気魔導砲)に肉薄せんと突進・・・
そして、そこで守備する最後の障害・・キュウルーラ100体と交戦状態に突入したのだ。
「鉄の怪物だろうと恐れるな! 突き崩せ・・」
「うっおおおおぉぉぉ」
彼らの目的はただ一つ。
何もかもを破壊し尽くす悪魔の兵器! 畏怖と憎悪を込めて名付けられた“ 鉄の神輿”を破壊することだ。
誰よりも速く駆け走るカルザンは前方のキュウルーラ一体を鋭く睨みつけた。
そして次の瞬間、彼から・・あふれ出した神力が剣へと宿り、振り下ろされた一撃はキュウルーラを粉砕した。
それが、聖務長にして司令官カルザンの神力。
圧倒的で、揺るぎなく、兵たちの心を震わせる力だった。
「我らには女神バベル様がついておられる。恐れるな!・・神輿を叩き潰せぇ!」
その号令は、戦場の空気を震わせ、兵たちの士気を一気に押し上げた。
槍が掲げられ、盾が鳴り、2000名の突撃は怒涛の勢いで前へと押し出していく。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




