イルモの戦い(2)
キュウルーラたちからの索敵報告により、
かなりの数の敵が、(北部、東部、南部)の三方向から包囲するように進軍していることが判明した。
「こ・・これは!? ・・いよいよ本気の会戦か!」
ラトナの表情がわずかに険しくなると同時に口角があがった。
その仕草は、戦いを前にした獣の微笑にも似ている。
もちろんの事!・・彼女は素早く警告音の魔導スイッチを叩いた。
次の瞬間・・・
80ナルル蒸気魔導砲を中心とした夜営陣地に、静寂を破る鋭い警報が鳴り響く。
・・カンカンカンカンカーーン!『敵影多数発見、三方向から接近中!』
白い蒸気が揺れ、
眠りについていた兵士たちが一斉に起き出し、ざわめきが空気を震わす。
さすが訓練を受けた兵士たちだけに、その動きは素早い。
「起きろ! 急げ! 走れ!」
「敵襲だ! 全員、配置につけ! 」
叫び声が飛び交うと同時に、
鎧がぶつかり合う金属音が、篝火に照らされた夜営地に鋭く響き渡る。
兵士たちは火影に長く伸びる影を引きずりながら駆け走り、それぞれの持ち場へと散っていく。
だが・・・・キュウルーラたちは違っていた。
すでに準備は完了し、いつでも発砲できる状態で待機していたのだ。
そんな騒ぎの中、アユリーナが半ば寝ぼけたまま、
服は裏返し、髪は爆発したような状態でラトナの前に現れた。
それでも本人の認識では"準備完了"らしい。
「ラトナ様、おはようございます。敵は・・いつごろ現れますか!?」
「・・その恰好w まぁよい! 敵はまだ遠方だが・・まもなく戦闘が始まるだろう」
その言葉が終わると同時に・・キュウルーラたちの発砲音が鳴り響く。
戦闘の開始だ!
三方向から迫る聖教軍・・・・
その先鋒はすでにキュウルーラたちと接触し、戦闘は完全に白兵戦状態へと移行していた。
キュウルーラの魔導砲は連射できない。
数の暴力で押し寄せる聖教軍に対し、砲撃の優位はすでに失われている。
それでも、鉄の身体をもつキュウルーラ!
聖教軍の剣も槍も通用せず・・格闘戦は有利に運んでいた。
キュウルーラたちが振り回す巨大丸太が空気を震わし・・・
付近の聖教兵士たちをダース単位で吹き飛ばすのだ!
「鉄の化け物! まじかよ・・・」「ぐわぁぁぁぁ!」
だが・・・聖教軍も必死だった。
始めのうちは・・見慣れない鉄の巨人に躊躇し恐れはしたものの・・ここは戦場!
戦いの熱気が渦巻き、血が昂るとともにアドレナリンが全身を駆け巡る。
やがて躊躇は消え、兵士たちは一斉に突進した。
「怯むな! 突っ込め!」
聖教兵・数十人がかりでキュウルーラの足にしがみつき、その巨体を転倒させようと、泥にまみれながら食らいつく。
そう、転倒させてしまえば、盾やこん棒で滅多打ちにして・・破壊できてしまうのだ。
彼ら聖教軍はその一点に賭けていた。
戦場はすでに死闘の様相を呈している。
破壊されたキュウルーラの残骸がいくつも転がり、
鉄の巨人といえども・・無敵ではないことを物語っている。
だが、代償は大きい。
キュウルーラを一体を倒すのに20名以上の死傷者を出している。しかもかなり悲惨だ。
消耗戦だと考えれば、若干ラトナ側が有利といえよう。
「・・・これは侮れん!」
指令室にて、キュウルーラから送られてくる魔導映像を見つめていたラトナは、思わず息を呑んだ。
迫りくる聖教軍の数と・・執念!
そしてキュウルーラが次々と倒れていく現実。
その光景は400年前・・父と共に戦ったあの困難な時代を思い起こさせてくれるではないか!
「ふっ・・・ふふふ。久々に血湧き肉躍る状況、楽しませてくれる」
ラトナの口元が、わずかに笑みを描いた。
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篝火の火の粉が夜空へ舞い上がる。
戦場はいつしか混沌の渦に呑まれていた。
聖教軍があまりにも接近し、80ナルル魔導砲は撃てない。
味方を巻き込む可能性が高い上に・・最低射程距離内に入り込んでいる。
(2ジャナル圏内は撃てない)
ユラーク率いる解放戦線は、苦戦するキュウルーラたちを援護しようと突入するが・・それは悪手た。
数の差に圧倒され・・逆に戦線は崩れ始める。
さらに悪いことに、ユラーク自身とその幕僚たちまでもが混戦に巻き込まれ、指令室へ戻ることができない。
それはすなわち・・兵たちへの指示、命令を下せないことを意味していた。
三方向から迫る聖教軍。
キュウルーラたちはパワーと性能力で応戦しているものの、数の壁に押されつつあった。
一方・・ユラーク率いる“魔導ヤリイカ部隊”は、かなりの奮戦をしている模様!
突進してきた聖教軍の第一波を撃破し、短い勝利を掴んだようだ。
しかしながら・・そこで式札は尽き、疲労も限界・・やむなく一旦撤収をしている。
「これは・・一時的にしろ、なんとか敵の動きを止めないとね!」
ラトナはアユリーナとともに蒸気魔導砲の屋上、天端に立ち・・周囲の状況をこの目で確かめた。
「まずい! 南方側の戦線が崩れかけている。あの付近の敵に束縛の魔法をかける。足止めだ!」
「はい、ラトナ様」
二人の少女の指が、素早く宙を舞い・・印を刻むと同時に、
ターゲットとなった南部方面の地面が黒く染まり、そこから無数の腕(触手)が湧きだしたのだ。
一面を覆いつくすその黒き腕の群れは・・・ある種のホラー!
見る者すべてに不気味さ・気色悪さを与える光景だった。
(集合体恐怖症w)
敵味方、双方が息を呑む中で、直接の被害を受けたのは聖教軍だった。
兵士たちの手足は黒い腕に絡め取られ、もがくことさえ許されない。
悲鳴と恐怖がこだました。
「うわぁぁぁぁ」「やめろ! そんなとこを触るな!」
この方面に投入した敵・聖教軍の数は2000名!
・・彼ら全員を拘束するのは、魔力的に無理な話なのだが、それでも数割の敵を黒き触手で絡め取り、捕え損ねた者たちは散り散りに逃げ去る。
だが・・簡単には逃がしはしない!
追撃はすぐに始まる。この方面を担当していたキュウルーラたちが後を追い・・撃滅することになった。
これで南部戦線の聖教軍を撃破! この方面の安全は確保できるであろう。
しかし、その光景を目の当たりにした現地の味方兵士たちの表情は引きつり、戸惑いが広がる(ドン引き)
いや、よく見ると数名の味方が巻き込まれ・・黒い腕に絡め取られているではないか!
「運が悪いね~w 見なかったことにしましょう!
それより南部方面は片付いた。次は・・・東と北だ」
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




