イカした術なのですよ!
"お手本"として披露した・・ラトナによる陰陽術"ヤリイカ"
その圧倒的な威力を目の当たりにしたイルモ解放戦線の幕僚や兵士たちは、
配られた槍と式札を手に、期待をこめて呪文を唱えてみたものの・・・ 結果は、あまりにも無惨だった。
「みんな、あれだけ意気込んで撃ち込んだのにねぇ」
複雑怪奇な呪文は、彼らの舌を容赦なく絡め取る。
途中で声が詰まり、音が崩れ、最後まで唱えられた者は、数えるほどしかいなかったのだ。
静寂が落ちる。
その沈黙の中で、各々の反応が重く響いた。
ラトナはため息をつく。
アユリーナは呆然とする。
ユラークは頬をかき、視線を泳がせる。
その他・・幕僚たちは次々と頭を抱え込んだ。
異世界人の呪文・・発音器官の構造が違うのか・・・
そんな疑念すら浮かぶほど、兵士たちの発音は壊滅的だった。
だが、ラトナとアユリーナはどうにか唱えられている。
つまり、絶対に不可能というわけではないのだ。
必要なのは・・・練習!
一朝一夕で身につくものではないということなのだろう。
それでも少数ながら・・うまく発音できた者がいた。
そう・・イルモ解放戦線のリーダーでもあるユラークもその一人だったのだ。
おそらく・・幼少のころから学んできた語学、勉学の恩恵だったのか!?
ユラークの唱えた呪文は完璧であり、みごと槍先にぬらりとした影が生まれた。
それは・・"槍烏賊"
そして、そこから放出される必殺兵器・黒い奔流が、一直線となって大木に突き進む。
それはあたかも・・黒きレーザー光のごとく。
これだけの威力がありながらも・・反動はほとんどなかった。
槍を掴むユラークの腕は微動だにしなかったのだ。
ヤリイカ本体そのものが衝撃を吸収したのだろう。
黒き水流が止むと、ターゲットとなっていた大木は粉砕され、黒い染みと霧だけが残った。
その光景を見た・・解放戦線の兵士たちは息を呑み、次いで歓声を上げる。
ユラークは数少ない呪文成功者となったのだ。
解放戦線のリーダーにして未来のイルモ市宰卿として面目躍如なのだろう。
ユラークは槍をゆっくりと下ろし、
その口元に、かすかな驚きと喜びが混じった笑みを浮かべる。
「イカだけど・・・私が魔法を使ったのだ!? なんとも不思議な気分だ」
ラトナ殿のような"本物の魔法使い"でもない普通の一般人が魔法を扱う・・
そんなことは、彼の常識ではあり得なかった。
だが、槍先に宿った 槍烏賊は確かに応えてくれた。
黒き奔流は大木を粉砕し攻撃魔法を行使したのである。
しかし、この陰陽術には代償がある。
式札は一度使えば消費され、
連発できるような代物ではない。
さらに、魔力を使わない代わりに、術者の体力を、かなり削ってしまうのだ。
万能とは程遠い。
それでも、ユラークは満足していた。
自分の手で、魔法を操った事実が、彼の胸に静かな誇りを灯す。
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解放戦線の中で、ラトナ製の式札を使い"ヤリイカ"を発動できた者は・・ユラーク。
そして意外にも、次に続いたのは、ルジャン、ナディラの二人だった。
若さゆえか、新しきものへの適応力なのか!?
彼らは異世界特有の発音を難なくこなし、黒き奔流を見事に撃ちだしたのだ。
さらに、十代・二十代の若い兵士が3名ほど成功している。
だが・・全体から見れば、成功者はほんの一握り。
確かに少ない。
一日で習得できるほど・・そんな都合の良い話ではないのだろう。
異世界特有の呪文、声音の壁は厚い。
かなりの練習が必要となるのだ。
そう、剣術の素振りのごとく、ただひたすら繰り返し、呪文を唱え続ければ、
いずれ成功するだろう。
しかも失敗しても式札は消費されない。できるまで何度でも挑める。
それは兵士たちにとって、都合がよかった。
そしてしばらくの間・・イルモへ向けて進撃していく道中では、
兵士たちの奇妙な呪文が、まるで行軍の伴奏のように、
途切れることなく響き続けることになった。
「「 ꯑꯩꯒꯤ ꯀꯣꯂꯒꯤ ꯄꯥꯎꯈꯨꯝ ꯄꯤꯌꯨ, ꯁ꯭ꯀꯨꯏꯗ, ꯁ꯭ꯀꯨꯏꯗ, ꯍꯥꯔꯄꯨꯟ ꯁ꯭ꯀꯨꯏꯗ꯫ 」」
その音列は、戦場の緊張とはまるで別の響き。
ときおり音程が崩れ、耳に刺さる濁り、痛み。
奇妙で、騒がしく、まるで騒音w
「うわぁ これは酷い。笑えるw」
ラトナは肩をすくめ、苦笑した。
だが・・そんな騒音も、確かな意味があったのだ。
兵士たちの騒音ではなく・・呪文を繰り返し反復練習し続けた結果、
ついに陰陽術"ヤリイカ"を使いこなせる者が、徐々に現れ始める。
耳障りな騒音に耐えた甲斐は、確かにあったのだ!?・・と思う。
「あのような異世界言語を操れるなら・・いずれ本物の陰陽術の使い手になれるかもしれないね」
ラトナは小さく頷き・・ユラークをはじめとした"ヤリイカ使いw"たちに、式札の描き方を教えるべきだと考えた。
「いつまでも私が式札を描いてあげるわけにはいかないからね。
・・・正直、めんどくさいし」
軽口のようでいて、その裏には明確な意図があった。
そう、彼ら自身の手で何度でも"ヤリイカ砲w"を撃てるようになってもらわないと困る。
それが、部隊としての"自立"につながるからだ。
こうして・・・
ユラーク率いるイルモ解放戦線に、
新たなる精鋭魔導(陰陽)部隊が誕生しようとしていた。
ユラークはその光景を見つめながら、胸の内で静かに期待する。
「これで・・・ラトナ殿のゴーレム部隊と肩を並べられる」
その瞳には、未来の戦場を見すえる司令官の決意が宿っていた。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




