来た・見た・勝った!
空中にて格闘の一戦・・魔弾攻撃を受けたザァクランは、重力に引かれながらゆっくりと降下していた。
されど・・その意識はまだ戦いの只中、視線はラトナを捉えたまま、次の一撃をどう受け、どう返すべきか・・!?
巨躯の男ザァクランは、なお戦いの続きを見据えていた。
だからこそ、
"その槍"の接近に気づくのが・・ほんの一瞬、遅れてしまったのだ。
空気を裂く鋭い音。
視界の端に、雷光のような影が走る。これは速い。
「・・・ま、まずいっ!」
ザァクランの瞳が大きく見開かれた。
即座に身を捻り、回避しようとするが・・空中では逃げ場がない。
槍はすでに、彼の急所へ向けて一直線、巨躯の男を容赦なく貫いた。
本来なら、常人の力では到底通用しない。
ザァクランの神力が生みだした"鉄の肉体"は、並の攻撃を弾き返すはずだった。
だが、アユリーナに施した身体強化、そして彼女の凄まじき魔力が重なったことで、その槍は巨体をも貫通する破壊力を得たのだ。
ザァクランの胸を突き破ったその一撃は、まさに"必殺"の名にふさわしい。
「まさか! まさか! この俺! この身体に傷をつけるとは・・なんて奴!」
その表情には、怒りでも恐怖でもなく・・・どこか諦めにも似た、静かな笑みが浮かんでいた。
そして、血を吐きながらも、彼は誇り高く声を絞り出す。
「このザァクラン、偉大なる男に致命傷を刻んだ者よ・・以後、子々孫々まで誇るがよい」
これが、ザァクランの最後の言葉となり、巨体は急降下、地面に重々しく叩きつけられた。
ラトナはその傍らへ軽やかに着地し、静かに生死を確かめる。
「200年前、私を串刺しにした男と比べれば、大したことはないが・・・
この時代では最強クラスだったのだろうね」
彼女はわずかに哀悼の色を宿しながら、天端を仰ぎ見た。
そして声を張り上げる。
「アユリーナ君! 見事だ。助かったよ。槍先が完全に貫き通している」
すると天端の上・・
手を振るアユリーナの姿が見えた。だが、その声は届かない。
彼女の声をかき消すほどの勝ちどきが、戦場全体に響き渡ったからだ。
「・・おっぉぉぉぉっーーっ!!」
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砦のようにそびえ立つ巨大な鉄の神輿・・・
その内部から放たれた青白き炎が爆裂したその瞬間・・戦場は一変した。
ザァクラン率いる武僧団の兵たちが、まるで砂粒のように空へ舞い、吹き飛ばされていく。
これでは・・壊滅、全滅! どれだけ生き残っているのやら・・・
まさかの事態、衝撃的な状況!
聖務長カルザンは、その信じられない光景を、離れた高台から愕然と見下ろしていた。
彼はザァクランとともに突入せず、後方で待機し、戦況を冷静に観察していた。
あの猪武者と命を並べる気など、初めからなかったのである。
内心では、"制止も聞かず突撃するとはなんと愚かなこと"と嘲っていた。
だが、武僧団1000名の壊滅は、あまりにも痛い。
イルモ防衛に深刻な支障が出る。
その事実が、カルザンの胸を冷たく締めつけた。
反面・・あの邪魔なザァクランが自滅したことには、わずかな安堵もあった。
とにかく、敵である魔族軍の戦力は把握できたのだ。
兵力は少数に見える。
だが、その戦闘力・・・とくに射撃能力は、あまりにも脅威。
聖務長カルザンの背中を冷たい汗が一筋、静かに流れ落ちる。
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ザァクラン率いる武僧団1000名の戦いは、ほぼ一方的にラトナ陣営の勝利となった。
聖教軍の中核、精鋭部隊を壊滅させた結果は大きい。
これでイルモ奪回も容易となるであろう。
「勝利した! 悪の元凶に勝利した。敵の精鋭を潰したのだ。
我が祖国を・・・聖教徒どもから解放するのだ!」
戦場に響くユラークの叫び。
そして、それに呼応するように、解放戦線の兵たちが拳を突き上げる。
「「バベル教を打倒! 女神を倒せ! バベル公姫を押しつぶせ!」」
熱狂が波のように押し寄せ、空気が震えた。
アユリーナのように・・聖教庁への恨み、仇を抱える者が多いのだろう。
その激情が、いま一斉に噴き上がったのだ。
だが・・・そのスローガンを聞いたラトナは、思わず苦笑した。
「"バベル公姫を押しつぶせ"とはね・・・まったく、迷惑な話だよ」
聖教庁への敵意が・・バベル公姫に飛び火している。
どんだけ一般人の恨みを買っているのだ!?
勝手に称号を無断使用した挙げ句、評判まで落とされる始末。
どう落とし前をつけさせるべきか、
ラトナは内心で静かに毒づく。
演説を続けるユラークと目が合うと、彼は申し訳なさそうに視線を逸らした。
まさか"女神の・・バベル公姫"への罵詈雑言まで叫ばれるとは、さすがに予想していなかったのだろう。
ラトナは肩をすくめ、「ぬっ・・・ぬぬぬぬぬ」
と、なんとも言えない声を漏らした。
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一方・・蒸気魔導砲の豪華VIP牢屋で快適に捕らわれの身となっている・・ラトナの子孫、マザリンちゃんは、格子付きの窓から外をのぞき込み、思わず息を呑んだ。
まだら模様の軍装が特徴的だった聖教庁の精鋭・・・武僧団。
その誇り高い部隊が、地形ごと吹き飛ばされ壊滅してしまったのだ。
さらに・・無敵とまで称された巨躯の男ザァクランまでもが、
槍に貫かれ、地に伏した瞬間を目撃したとき、
マザリンの膝は自分の意思とは関係なく震えだした。
やはり恐るべきは・・あの少女!
自らを女神"バベル公姫"と名乗り、
そして・・僕の祖先、初代レイン様・・ラティリレス公爵の母だと言い放った存在。
「僕はいったい・・・どちら側の人間なんだ!?」
困惑は胸の奥で渦を巻き、
自分の立ち位置がわからなくなる。
敵なのか、味方なのか。
それとも、もっと別の存在なのか。
そんな混乱の最中、
牢屋の扉の隙間から、ひらりと一通の手紙が滑り込んできた。
封を切ると、そこには軽やかな筆致でこう記されていた。
『 ラティリレス公家として私たち陣営につくのなら・・・
あなたには、私の子孫として、名誉も、金も、たっぷり優遇しますよ。
なんなら女も・・♡ 男も可能です。
なんたって・・・私の愛する子孫なんですから 』
ラトナからの、あまりにもストレートな"勧誘状"
味方になれば美味しい思いができる・・・と!
マザリンは思わず息を呑む。
心のどこかが、ほんの少しだけ・・・惹かれてしまったのだ。
「僕、どうすれば・・・」
揺れる心。
胸の中で・・恐怖、希望、破滅、勝利の単語が広がっていく。
(可愛い顔立ちの男の子でも・・欲望には抗えないのですw)
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




