アユリーナのやさしさ
ラトナ・ユラーク連合軍に立ちふさがるバベル聖教軍・先遣隊200名は・・周囲の森林地帯ごと吹き飛ばされ消滅した。
砂塵が天へと駆け上り、炎が竜巻となって走り、爆風が大地をえぐる。
抵抗という概念すら許されない、完全なる破壊だった。
おそらく聖教軍・先遣隊は壊滅しているだろう。
その凄まじい爆風は、味方である我が軍のキュウルーラたちすら巻き込み、
何体かは大きく弾き飛ばされたほどだった。
80ナルル蒸気魔導砲の司令室に、低く濁った笑い声が満ちていく。
「ふふ・・・ふっふふふ。見たか! これが我らの裁きだ」
「あっはははは〜 死ね!死ね!もっと死ね!・・・父の仇だ。報いを受けるのだな!」
200人近くの敵兵を葬ったのだ。しかも残酷に・・・
小さな勝利とはいえ、復讐の一端を果たした満足感と達成感!
彼らの溜飲を、ほんのわずかだが下げたのである。
「なんと! すさまじい」「おっおおお・・・!」
ラトナ、ユラーク、そして幕僚たちの上機嫌な声が重なり、
司令室の空気は異様な熱気に満ちていく。
ルジャンとナディラも手を叩き、敵の壊滅を祝福していた。
その表情には、恐怖と尊敬が混じり込んでいる。
ただ一人・・
アユリーナだけは、わずかに引きつった笑みを浮かべていた。
彼女もまた、ユラークと同じく親の仇、村の仇を抱えているはずなのに、
ここまで非情にはなりきれない。
燃え上がる歓喜の渦の中で、
アユリーナの心だけが、静かに揺れ動く。
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80ナルル蒸気魔導砲の背後・・・
ユラーク率いるイルモ解放戦線の兵士たち600名は、ただ呆然と立ち尽くしていた。
空気を震わせる爆音。地面を揺さぶる衝撃。
そして、天へと舞い上がる火柱・・・
何が起きているのか、誰一人として理解はできていない。
だが、本能だけは告げていた。
"何か恐るべきことが起きている"と・・・
そこへ現れたのが、この軍の司令官ユラーク!
解放戦線の長としての威厳をまとい、兵士たちの視線を一身に集めた。
「聞け、イルモの偉大な戦士たち! なにも恐れる必要はない。
先ほどの一撃だけで・・敵は怯え、崩れ、逃げ去ったのだ。
我らが本気で戦うまでもなく・・敵は壊滅したのである。
この偉大なる魔導砲がある限り、我らの勝利は揺るがぬ!」
その声は爆音よりも強く、兵士たちの胸に響いた。
恐怖は薄れ、士気は一気に高まっていく。
「「おっ・・おお! おおっ・・・!」」
その熱気を前に、ユラークはゆっくりと頷いた。
満足げに、確信を宿した笑みで・・・
だが・・・
ラトナだけは、静かに眉を寄せる。
「・・・あの演説、ユラーク殿は、この魔導砲を頼りにしすぎているではないか!
もし、この魔導砲が失われたとしたら・・・彼らはどうなる!?」
歓声が渦巻く中で、ラトナの胸にだけ冷たい予感が沈んでいた。
兵器への過度な依存・・それは、勝利の影に潜む危険そのものだった。
「まぁ・・しばらくは良いだろう! 勝ち続ければ・・問題はないのだから」
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ラトナやユラーク、そして数十名の兵士たちは、粉砕された聖教軍・先遣隊の遺体や遺留品を丹念に調べていた。
そこは、まぎれもない戦場の跡・・・
焦げた土の匂いが鼻を刺し、爆風の暖かさがまだ地面の奥に余韻として残っている。
そして、静かに横たわる遺体の数々が、つい先ほどまでの惨劇を物語っていた。
そんな地獄絵図の中、敵が残したものから、少しでも有益な情報を得ようと探っていると・・・
アユリーナは、奇跡的に息のある遺体・・・いや訂正、生き残りの兵士を見つけたのである。
その人物は血にまみれ、ほとんど動かず、息をしていること自体が奇跡と言えるほどの状態だった。
もしラトナであれば、武士の情けとしてトドメを刺して・・ "楽にしてやる"という選択をしただろう。
だが、アユリーナは違った。
「まだ、生きてる・・助けなきゃ」
彼女は震える手で治療魔導を施し、さらに治療ポーションまで使って手当てを続けた。
その治療魔導はラトナに比べれば稚拙だが、必死さと優しさだけは本物だった。
手当てを受けている瀕死の人物は若い男性・・・男の子なのか!?
いや、けっこう可愛いではないか!
柔らかな輪郭、澄んだ瞳。どこか少女のような雰囲気すら漂わせている。
そんな可愛い男の子は魔導治療・・ポーションの治療の効果が出たのか、やがて彼はゆっくりとまぶたを震わせ、大きく目を見開いた。
その瞬間、瞳に走ったのは驚愕と恐怖。
「ま、魔族!? 黒髪・・」
かすれた声が漏れる。
アユリーナの黒髪・・"魔族"の象徴とされるその色を、こんな至近距離で目にするのは初めてだったのか!?
しばらく動揺していたが、やがて自分の命が、この少女に助けられたのだと理解し感謝を述べた。
「えっと、あ・・ありがとう。本当にありがとう・・」
彼は敵であっても、悪人ではない。最低限の礼は心得ているのだ。
その事実が、アユリーナの胸に静かに落ちていった。
「いえいえ・・人として当然のことをしただけです」
「ひ・・人、ですか!?」
彼の深層心理的にいえば・・魔族は"人"ではないということになっている。
だが目の前の少女は黒髪、すなわち・・"魔族の象徴"を揺らしながら、
まるで自分と同じ人間であるかのように主張したのだ!
動揺するその可愛い男の子の視線は、自然と彼女の髪へ吸い寄せられる。
二つ団子に結われたアユリーナの黒髪へと・・・
恐れ、驚き、そして救われた安堵。
そのすべてが混ざった複雑な感情が、男の子の瞳を揺れ動かした時・・・
場の空気を切り裂くかのような、黒き影が地面へと落ちた。
その影は、ただの人影ではない。絶望的ともいえる危険な波動を放っていたのだ!
それは、バベル公姫と名乗る人物・・ラトナ。
漆黒の衣をまとい、まるで物語のラスボスが登場するかのように姿を現す。
「・・・状況は把握した。アユリーナ君、その者を どうするつもりかな!?」
その声は静かでありながら、周囲一帯を一瞬で支配するほどの威圧を帯びていた。
瀕死から目覚めたばかりの可愛い男の子は、息を呑む。
そして怯えた瞳がアユリーナへ向けられ、"助けて"と訴えるような視線を向けた。
そのしぐさ、妙に可愛いではないかw
戦場の片隅で震える小動物のような可愛さに、
ラトナは、わずかにサディスティックな感情が芽生えたのだ。
「私・・・可愛い男の子をいじめるのが好きなのよね」
黒衣の公姫が放つ危うい微笑みと、
怯えながらも必死に助けを求める男の子の視線。
「ふっふふふふ」
「ちょっとラトナ様! 彼・・おびえているじゃないですか」
それはまさに、男の子視線でいえば・・"ラトナ"こそ、古から伝わる魔族そのものだったのだ。
しかも・・長く流れる漆黒の色をした髪・・・まるで女魔王w
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




