接敵
80ナルル蒸気魔導砲の操縦室、改め"本陣"又は"指令室"は・・十分な広さを確保してあった。
これら魔導砲システムをコントロールする操縦席の背後には丸テーブルが置かれ、簡易ながらキッチンまで備え付けられている。
もはや"司令室(操縦室)"というより、どこかのラウンジと呼んだ方がしっくりくるほどだ。
そんな空間に足を踏み入れたユラークと、そしてルジャン、ナディラを含めた解放戦線の幕僚たちは、
驚きと興奮を隠しきれないまま、テーブル席へと腰を下ろしていた。
戦場へ向かうはずの場所が、まるで日常の延長のように整えられている。
その意外性が、彼らの胸をざわつかせていた。
しかも、その司令室(操縦室)の所々にふわりと浮かび上がる不思議な立体映像、または神秘的な輝き・・・
それらは、魔導を知らぬ者たちにとって、まさに神の御業、奇跡としか思えない光景だった。
「これが神の力・・・なのか!」と・・・
誰かが震える声で呟く。
それは畏怖であり、驚愕であり、そして人知を超えた御業への純粋な崇拝でもあった。
そんな幕僚たちの戸惑いと熱狂とは違い・・ユラークだけは静かに、その光景を見つめていた。
たしかに驚きはある。
だが、彼はそれを"神の御業"などとは思わない。
ラトナという人物の本質を、ある程度・・知っていたからだ。
思い切りの良さ。
権力への執着。
目的のためなら手段を選ばぬ冷徹さ。
そして、圧倒的な魔導技術を操る"人間"としての危うさ。
ユラークにとって、これは奇跡ではない。
ラトナという存在が生み出した、"必然の力"にすぎなかったのだ。
ただ・・ユラークにとって重要なことは、
・・イルモを奪還すること。
・・戦争に勝つこと。
そのためなら、奇跡でも魔導でも、利用できるものはすべて使う。
ユラークは立ち上がり、熱を帯びた声で言い放つ。
「ラトナ様の魔法力には、ただただ敬意を払うばかりです。
これなら・・絶対に勝てます。父の仇、イルモ奪回も夢ではありません」
その言葉を受け、ラトナは静かにうなずき、鋭い視線をユラークへと向けた。
「期待してほしい。この"動く要塞"で・・迫り来る敵を、すべて薙ぎ払ってみせよう」
その瞬間、司令室(操縦室)の空気がわずかに震えた。
誰かが息を呑み、かすれた声が漏れる。
「・・・おっ、おおお・・!」
皆の胸に灯るのは、未来への確かな展望。
明るい先行きの予感が、確実に室内を満たしていく。
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ラトナが愛してやまない人型魔導兵器・キュウルーラたち。
全長3ラヌルの巨体400体が、蒸気魔導砲の前面にずらりと並び立つ。
その巨体が大地を踏みしめるたびに、
低く重い振動が地を伝い、まるで世界そのものを揺さぶっているかのようだった。
そして、その後方には、
ユラーク率いるイルモ解放戦線の兵士たち。
傭兵を含めた600名の者たちが整然と列をなし、
静かに、揺るぎない覚悟を胸に前進していく。
彼らの目的地は、ただひとつ・・イルモ。
ユラークたちの故郷。
奪われた祖国。
取り戻すべき名誉と誇りの地なのだ。
ラトナ・ユラーク連合軍・・
キュウルーラ400体を含む 総勢1000名の軍勢が、ゆっくりと南へ進軍を開始する。
その歩みが遅いのは、隊列中央に鎮座する80ナルル蒸気魔導砲の存在ゆえである。
だが、その巨体が放つ圧倒的な威圧感は、遅さを補って余りある。
そう、それはまさに動く砦。そして超強力な魔導砲を放つ・・破壊の象徴なのだ。
黒髪を風に揺らし、黒衣を翻す
ラトナは、口元に邪悪な笑みを刻んだ。
「まずは"示威行為"だね。この巨砲の力を見せつけ、敵の心を折ってやろう」
その隣で、鋭い眼光を光らせるユラークもまた、同じように口元を歪める。
「ふっ・・いいですね。恐怖こそ、最高の勝利です」
二人の笑みは、どこか似ていた。
目的のためなら手段を選ばぬ者同士・・
ある種、同じ闇を抱えた者たちなのかもしれない。
その光景を目にしたアユリーナ、ルジャン、ナディラ、そして周囲の幕僚たちは、誰ひとりとして声を発しなかった。
沈黙は金・・・!?
またはいやな予感がしたのかもしれない。
特に、ラトナが見せつけた魔導力は、彼らの予想を遥かに超えていた。
畏れとも敬意ともつかぬ感情が、心にまとわりつく。
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司令室に、甲高い警報音が鳴り響く!
ピィー・・! ピィー・・!
ラトナは即座に立体映像へと視線を走らせる。
映し出された情報を確認したとたん、口元が・・ゆっくりと吊り上がった。
「ほぉ、ついに敵と接触したのだな!?」
低く響くその声には、抑えきれぬ 闘争心が濃く滲み、まるで戦いそのものを待ち望んでいたかのようだ。
その隣では、ユラークもまた鋭い眼光を光らせ、同じく邪悪な笑みを浮かべる。
ラトナ・ユラーク連合軍は、もとより隠密行動など取っていない。
堂々たる進軍・・それゆえに、聖教軍側に察知されるのは当然の成り行きだった。
そして、その予測通り、連合軍の行く手を阻む"敵影"が確認される。
先行して索敵任務にあたっていた二十数体のキュウルーラからの魔導報告が、司令室の立体映像に映り出されたのだ。
ーーー 敵、確認。進路上に展開中 ーーー
その一報は、これより始まる戦い・・・イルモ奪回作戦の狼煙となった。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




