蒸気魔導砲
80ナルル蒸気魔導砲の製造現場・・・
その周囲では、一般の人々が続々と集まり製造現場の見学会というか・・野次馬の群れ!?
”わいわいガヤガヤ”と・・まるで祭りでも始まったかのような熱気に包まれていた。
理由は明白・・・この場所では、常識をひっくり返すような"異様な光景"が広がっていたからだ。
全長3ラヌルの見慣れぬ巨人が、"ガシャン、ドッドド、ギィー"と音を立てながら動き回り、器用に作業をこなしている。
この時代の人たちにとっては・・信じられない光景なのだろう。
さらに・・
この蒸気魔導砲の建造を主導しているのは、
"女神・バベル公姫”が憑依したというラトナその人である。
ヴァラウの町の住民たちが興味を抱かないはずがない。
蠢く巨人たち、積み上がる鉄塊、そして圧倒的な存在感を放つ蒸気魔導砲。
珍しさと驚きが入り混じり、誰もが目を奪われる。
そして、この祭り会場には、当然というべきか、バベル聖教庁の諜報員たちも紛れ込んでいるだろう(たぶん)
よっぽどの素人でないかぎり、情報収集は常識。
もちろん、ラトナにとっては、これは想定の範囲内である。
そもそも、この巨塊(80ナルル蒸気魔導砲)は目立ちすぎる。
隠し通すなど不可能なのだ。
ならば逆に、堂々と見せつけてやるのが良い!
「そう、見たいなら見せてやろう」
ラトナは、住民たちが見ている前で、この蒸気魔導砲の"実力"と"恐怖"を披露することにした。
そう、すでにこの魔導砲は・・ほぼ完成している。
後は試運転するのみなのだ。
ラトナとアユリーナは、足元に響く金属音を鳴り響かせながら・・魔導砲側面に取り付けられた階段を登り・・内部へ入り込む。
やがて二人が辿り着いた所は・・・この魔導砲の前方下部に設けられた操縦室。
そこはまるで戦艦の艦橋を思わせる重厚な指揮所・・・すべての制御が集約されたこの巨体・全長50ラヌルの心臓部なのだ。
ラトナは操縦席に身を沈め、静かに息を吸い込んだ。
空調の風がさらりと頬を撫で、申し分ないほどの快適な温度に保たれている。
「では・・・始めよう」
「はいっ! ラトナさま、う、うちは・・・いつでも覚悟はできています」
アユリーナの顔は、わずかに青ざめていた。
無理もない。少し前、あの破壊力を見せつけた砲塔直下にいるのだから・・
それに対してラトナは苦笑し、肩を軽くすくめた。
「いやいや! そんなに身構えなくていいよ。ここは・・危険区域じゃないのよ」
「そ、そうなんですか!? ここって・・爆風がもろにきそうな気がしますが」
彼女の震える声に対して・・ラトナはふっと黙り込んだ。
そして・・しばしの沈黙。
「・・・・えっ!? あっ!」
アユリーナのもっともな指摘に、ラトナは明らかに動揺した。
肩がわずかに跳ね、目が泳ぐ。
しかしすぐに表情を整え、あくまで冷静を装って言葉を続ける。
「き、今日は・・砲撃する予定はないので、安心して・・ほしい」
その言葉に、アユリーナの顔色がほんの少し戻った。
そして、ラトナも内心でそっと息をつく。
うっわぁ~ 危ない! 危なかった!
アユリーナ君の指摘で命拾いをした。
そう、今ここで試射などしてしまえば、大変なことになってしまうところだったのだ。
(にしても、なんてこったい。とんだ設計ミスよ!
まずは爆風対策・・・操縦室を密閉式に改良しなきゃダメだわ。
窓にガラスすらはめてないんだから・・・そりゃ危ないに決まってるじゃないの!)
胸の内でのラトナの独白・・・彼女の心臓はまだ少し早く脈打っていた。
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「・・・ふぅぅぅ~」
ラトナは深く息を吐き、心を静かに整えた。
そして、落ち着きを取り戻した指先をゆっくりと滑らせ、印を結ぶ。
するとそれに反応したのか、操作盤の魔導刻印が"パッ"と明るく輝き出した。
床がわずかに震え、巨大兵器の鼓動が操縦席へと伝わってくる。
まるで眠っていた巨塊が、ゆっくりと目を覚ますかのように。
80ナルル蒸気魔導砲の後方、魔導力炉に設置している"特大魔結晶"が低く唸りを上げ、稼働を開始した。
ゴッゴゴゴォォォ
低く響く振動とともにラトナの目前・・何もなかった空間に立体映像がふわりと展開する。
そこには、魔圧力計、炉心温度、砲身角度など・・・無数の数値が次々と浮かび上がってきた。
「・・よし、すべて正常稼働」
満足げな微笑が、彼女の横顔を明るく照らす。
これらのシステムは、かつて200年前に栄華を誇った魔導文明の極地。
その一端が、今まさに息を吹き返してきたのだ。
その様子、その素晴らしさを目撃したアユリーナは、息を呑み、震える声を漏らした。
「す、すごい! これが200年前の・・・魔導技術なのね」
彼女の言葉に対して・・ラトナは小さく頷き微笑む。
「当然よ。これは・・私が創り上げた最高傑作なのだから」
その表情は誇らしげで、どこか無邪気ですらあった。
操縦室の設計ミスなど、最初から存在しなかったかのように・・・
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80ナルル蒸気魔導砲の側面から、轟音とともに蒸気が噴き出していく。
白い奔流は瞬く間に周囲へ広がり、付近一帯を淡い霧のように染め上げた。
蒸気の圧力と魔導力・・これら2つの力が融合し、巨大なギア、クラッチ、車輪が、"ギリギリギリ・・・"と重低音を響かせながらゆっくりと回転し始めた。
そのパワーは、全長50ラヌルにも及ぶ鉄の巨体を震わせ、
そして・・クジラのような巨大魔導砲が、ゆっくりと大地を踏みしめ始める。
操縦室から、これらの光景を見ながら、ラトナは立ち上がり、拳を強く握りしめた。
「よし! あの失敗作、木偶の坊を・・最大戦力に変える時が来た」
巨体が軋むたび、ラトナの瞳はさらに輝きを増す。
かつての帝国ルシャーナを復活させるための原動力とするのだ。
「いける!・・・いけるぞ!」
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




