見本市
愛しき我が子、"レイン"からの時を越えた贈り物・・
その"銀の短刀"を、ラトナはそっと胸元へ抱き寄せ、手で覆うようにして懐へしまい込んだ。
あの頃のレインは、少女のように可愛らしく、
それでいて逞しく、賢く、誰よりも頼りになる子だった。
(※ラトナ主観)
その面影が脳裏に浮かんだ瞬間、ラトナの瞳に涙があふれる。
「あんなに早く逝くなんて。まだ、たった150歳だったのに・・・」
震える声が、静寂に溶けていく。
余談であるが・・・ラトナのように魔導を駆使しない限り、
150年という寿命は、本来ありえない長さである。
ラティリレス・ノン・レイン――
バベル公姫ラトナの息子にして、のちにラティリレス公家を興した人物。
彼は多くの子をもうけ、その血脈はルシャーナ帝国を支える名家のひとつとして長く続いていくことになる。
そしてレイン自身は、目一杯長生きし・・天寿を全うした。
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銀の短刀を、まるで赤子のようにそっと抱きしめるラトナ。
その異様な姿に、アユリーナは思わずいぶかしげな視線を向けた。
だが次の瞬間、師匠ラトナの瞳に溜まる涙を見て、アユリーナは息をのむ。
これは、軽々しく触れていい話ではない。
おそらく、あの短刀には・・何か深い"思い入れ"があるのだろう。
そう悟ったアユリーナは、そっと心の中で線を引いた。
踏み込むべきではない・・と!
それに、かすかに漏れる師匠ラトナの呟き・・・
「我が子・・・」
その一言が、アユリーナの胸に重く落ちた。
一方、ラトナはアユリーナの気遣いなど、まったく気づかずの・・ウキウキな気分状態。
愛しの我が子・レインが、母のために!?・・残してくれた"銀の短刀"を大事に!大事に!・・・懐の中に納め、さらに"特大魔結晶"まで手に入れたのだ。
これはきっと・・我が子レインからの応援。
帝国復興を後押しするための贈り物に違いない。
ラトナはそう確信している。
「レインよ! あなたの思い・・母に伝わりましたよ」
あの問題の兵器、80ナルル蒸気魔導砲・・・
重すぎて動かすことすら困難な、失敗兵器w
だが、この"特大魔結晶"があれば話は別だ。
「ふっふふ、あれも、ようやく"使い物"になるわよね」
ラトナの胸は期待で高鳴り、
その足取りは、まるで未来へ向かう少女のように軽かった。
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そして・・・
ヴァラウの町近郊では、キュウルーラたち、100体が慌ただしく作業を進めていた。
その巨体によって、資材を盛大に切り出し、加工し、組み上げていく。
その光景は圧巻!
人間の出る幕なぞない。いや! 生身の人間がまざると邪魔になるだけ!
まさにそこは・・巨人たちの祭り、異様な活気に満ち溢れていた。
彼らが取り組む目的はただ一つ。
あの木偶の坊、失敗作・・80ナルル蒸気魔導砲の大幅改良なのだ。
鍵となるのは、新たに手に入れた"特大魔結晶"。
ラトナのご子息・・レインからもたらされた時を超えた贈り物!
この魔結晶の力によって、巨砲はついに 移動可能な兵器へと進化するのだ。
設計を描いたのはもちろん・・ラトナ! 魔道具作りの達人。
彼女の手で、この巨大兵器を、実戦に耐えうる姿へとかえる。
カーン! カーン・・・!
ドッドドドッ・・・ドッドド
鉄を叩く重い音が、荒野一帯に響き渡っていた。
幸い、この周辺には住民がいないため騒音の苦情など起きようもない。
それどころか、バベル公姫と称する女神が主導する"巨塊の建造物"!?
その謎めいた存在に惹かれ、または興味を持ち・・町の人々が続々と集まり始めていた。
(中世のようなこの時代・・これといった娯楽がないですからねw)
明らかに人ではない巨人たちが黙々と作業を進め、鉄の塊を組み上げていく。
常識では考えられない光景だが、一般の人々にとっては・・・一種の娯楽、見世物と言ってよいだろう。
ラトナの指示で、現場の周囲には簡易の柵が設けられている。
人々はその外側から、思い思いの距離を取り、興味深げに作業の様子を眺めていた。
興味津々で囁き合う者。
子どもを肩車し、目を輝かせて見せる親。
遠巻きに見守るだけの者もいれば、何度も足を運んで進捗を確かめる者もいた。
気づけば現場は、観光地とも見学会場ともつかぬ賑わいを帯び、
荒野の一角が、まるで祭りの広場のようにざわめき始める。
わいわいガヤガヤ♪
そして・・
その人だかりを目当てに、いつの間にか・・屋台や見せ物小屋まで立ち並び始める始末。
焼き菓子の甘い香り、呼び込みの声、子どもたちの笑い声。
本来の目的を忘れそうになるほどの活気だ。
これには、さすがのラトナも苦笑いを浮かべた。
だがその一方で・・
黒髪への警戒がまだ根強い住民たちに配慮してか、
帽子を深くかぶったアユリーナが、こっそりと屋台で何かを買い求めていた。
「何か欲しいものでもあったのかな!?」
ラトナはその様子を遠くから眺めていると・・
その視線に気づいたのか、人混みの向こうから・・パッと手を振ってきた。
どうやら、魔導の気配を敏感に感じ取れるようになったらしい。
弟子として、確かな成長を見せているのだな・・アユリーナ君!
ラトナは満足げに微笑み、にこやかに手を振り返した。
アユリーナは屋台をいくつかまわり、この町特有の名物料理・(タコ揚げクッキー)を買い求めていたらしい。
そのクッキーの香ばしい匂いのせいか、彼女の表情もどこか楽しげだ。
そんな折・・・
「うわぁぁああぁぁん」
泣きじゃくる幼い子どもが、彼女の前を駆け抜け、そのまま転んでしまった。
小さな体が震え、しゃくり上げる声が周囲に響く。
それを見たアユリーナはすぐにしゃがみ込み、そっと抱き起こす。
優しく頭を撫で、落ち着かせるように微笑むと・・・
周囲に気づかれないよう、擦りむいた足へ治療魔法を流し込んだ。
もちろん、治せるのは軽い擦り傷程度だが・・・それでも十分だった。
その幼児は・・どうやら痛みがなくなったのか、泣き止みアユリーナにぎゅっと抱きついた。
遠くからその光景を見ていたラトナは、思わず感嘆の声を漏らす。
「ほぉぉ・・優しいじゃないか・・アユリーナ君!
ま、私だって・・・同じこと!?してたかな!? あらw うん、きっと同じことをしてたに違いない!?
あっははは~」
やがて、迷子になっていた我が子を探していた親が、息を切らして駆け寄ってきた。
アユリーナはその子をそっと引き渡す。
親御さんは深々と頭を下げられ、彼女は照れくさそうに微笑む。
その親子を見送ったあと、しばらくすると・・アユリーナの様子が変わった。
どこかヤカラ風の若い男がアユリーナに声をかけ、絡んできたようた。
ナンパなのか、因縁なのか・・・・いずれにせよ、嫌な気配。
ラトナは思わず飛び出そうとした・・その瞬間!
その若い男はふわりと宙を舞い、そして地面へ叩きつけられた。
砂埃が舞い、周囲が一瞬静まり返る。
ラトナは目を細め、低くつぶやいた。
「・・そうだな。アユリーナ君の実力なら当然か。
あの男、今ので死んでいてもおかしくないぞ」
そう、なんといっても・・彼女はラトナの"子孫"であり、"弟子"なのだ。
あの程度の輩に遅れを取るはずがない。
その後、キュウルーラたちが現れ、
気絶した男をずるずると引きずってどこかへ連行していった。
なんと・・・くじ運の悪い男なのだろうかw
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




