ラトナの異常な愛情
大量の"魔結晶"を入手し・・人型魔導兵器の生産を急ピッチに行っていた頃、
ラトナは、もうひとつの"切り札"というべき計画を進めていた。
ここは・・ヴァラウの町近郊。
乾いた風が吹き抜ける荒野に二人の少女・ラトナとアユリーナの姿があった。
その荒れた地面の上を、長い黒髪を揺らしながらラトナは、ゆっくりと前へ進み出る。
そして、目の前にそびえる"巨影"を見上げた瞬間、彼女の肩が激しく寄れた。
「おっおお! なんとなんと〜素晴らしき・・・決戦兵器よ!」
荒野に響くその声には、ある種の狂気、または異常なまでの愛情がこもっていた。
ラトナの眼差しは、もはや兵器を見る技術者のものではない。
まるで・・・"愛し子" を見つめる母のようでさえあった。
「この巨塊が完成すれば・・・帝国復活も、大陸統一も夢ではない」
ラトナが告げたその言葉に反応するかのように、周囲の"人の形をした者たち"が一斉に振り向き敬礼した。
そう、彼らはキュウルーラ・・・この場所で、巨塊なる兵器建造を行っているのだ。
資源確保から加工、組み立てに至るまで、すべてを自動でこなす完全オートメーション。
(ちなみに、ここで働くキュウルーラたちは、つい先ほど製造されたばかりのでき立てホヤホヤ、新造機体ですw)
「ラトナ様・・圧巻です。すごい・・・」
「うふっ・・そうだろ。これぞ! 魔導の極致だ」
ラトナはその巨塊・・その光景・・を、恍惚とした表情で見つめている。
それを作り上げるという行為そのものが、彼女にとって・・・至福の時間なのだ。
全長 50ラヌル
全幅 15ラヌル
全高 10ラヌル
それは対聖教軍破壊兵器・・・・
80ナルル蒸気魔導砲!
某異世界某ドイツのあの・・80cm列車砲に類似した外観、大きさ!
ただし、これは・・・蒸気と魔力を融合させた、まったく別次元の兵器でもある。
設計者は・・ラトナ!
時空を彷徨えるあの"峠の茶屋"で手に入れた書籍を元にし・・
ラトナの得意の魔導を組み込んだ・・異世界技術と魔導の融合。
それが・・80ナルル蒸気魔導砲なのだ。
それゆえに、この超兵器の心臓部となる素材は・・・
かつて聖教館に祀られていた女神像から抜き取られた特大"魔結晶"。
これは普通に手に入る"魔結晶"とは、まったくの別物。
大きさも性質も威力も、桁違いに強力!
それは・・あまりにも濃密な魔力。
それは・・あまりにも危険な素材。
・・・この特大"魔結晶"を核に据えることで、この新兵器なる"80ナルル蒸気魔導砲"が完成するのだ。
ラトナの口元が、ゆっくりと吊り上がる。
その瞳には、創造者だけが知る高揚と狂気が宿っていた。
「よし、明日には完成するだろう。試射が楽しみだ」
「はい、ラトナ様。うちも楽しみです」
アユリーナも、ラトナほどではないが・・・その様子から、かなりの興味を抱いていたのであった。
-*- - - - - - *-
翌日・・・
ラトナは、その事実を知った瞬間、衝撃を受け・・そして傍らにいるアユリーナは、何も言わず、そっと視線をそらした。
確かに・・・80ナルル蒸気魔導砲は完成した!
そこんところは間違いない! しかも素晴らしい!
その偉容な姿は、あまりにも巨大・・威風堂々。
人々はきっと、この巨躯を前に畏怖の念を抱くだろう。
しかも、それらを造り上げたキュウルーラたちは・・・
本来は意思を持たぬはずなのに、なんとなくドヤ顔をしているように見えるw
だが、その栄誉と誇らしさの反面・・・どうしても看過できない問題が浮かび上がったのだ。
ラトナはしばし沈黙し、
そして、ぽつりと・・・いや、素が漏れたように叫んだ。
「おいおいおいおい・・おい。まじかよ!」
その声には、驚愕と呆然、そして少しの怒りが混じっていた。
そう、それはあまりにも・・デカすぎた! 重すぎた!
それゆえに僅かに傾き・・ゆっくりと大地へ沈み込んでいく。
とはいえ、完全に埋没したわけではない。
だが・・自重に耐えきれなかったのは確かである。
80ナルル蒸気魔導砲は、
大地を踏みしめるはずの"10輪の車輪"ごと地面にめり込み、沈座してしまったのだ。
もはや、動かすことはできないだろう。
ラトナは・・・そこでようやく、この巨体の欠陥に気が付いた。
これほどの大きさ。
これほどの鉄量。
その重量が常識の範囲に収まるはずがない。
某異世界某ドイツの80cm列車砲・・・その総重量は1300トンを超えるという。
ならば、この目前に存在する"蒸気魔導砲"も、それに匹敵しているはずだ。
ラトナは、沈み込む巨体を見上げながら、重量を軽減するための魔導装置を思案する。
だが、その装置を動かすには、やはりというべきか、もう一つの"特大魔結晶"が必要となるのだ。
そう、そんなものが、今すぐ用意できるはずもない!
「うっ、無理だ!」
ぽつりと漏れたその声は、諦めとも、呆れともつかない響きを帯びていた。
ラトナはゆっくりと視線を上げる。
そこにそびえ立つのは、大地に黒い影を落とす・・巨大な蒸気魔導砲。
「とりあえず・・試射を始めてみよう。ダメでも・・固定砲台として使えるはずだ」
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




