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バベル公姫領ヴァラウ


ラトナたちは・・・80ナルル(センチ)蒸気魔導砲の試射実験を開始しようとしていた。

それは初めての投射であり、どのような危険が潜んでいるのか未知数!

ゆえにラトナとアユリーナは、安全を確保するため、砲座からの距離を大きく取り、岩陰へと身を隠した。


太陽の光が・・・全長30ラヌル(メートル)の巨大砲身に反射し、

ラトナの横顔を照らし出す。

それはまるで「早く撃て!」とせがんでいるようではないか!

ラトナは軽く頷き・・その希望を叶えてやることにした。


「よし。始めよう。試射の開始だ・・・」



- - - - - - - - - - - -


ズドオオオオォォォォッ・・・!


大地が揺れ、空気が裂ける。

蒸気魔導砲の巨体そのものが震え、砲口から炎と水蒸気が爆発するように噴き出した。


特にその水蒸気は凄まじく、

周囲一帯を白く覆い尽くし、視界は一瞬で奪われる。

 

そして、遥か彼方、地平線の向こうの無人荒野に・・・着弾!

砂煙と炎が天へと吹き上がり、

遅れて届く衝撃波が大気そのものを震わせた。


その威力にアユリーナは呆然と立ち尽くす。

だがそれとは対照的に、ラトナは拳を突き上げ、歓喜の笑みを浮かべた。

「よし、これならいける!」


多少の機動力というか、ほとんど動けない固定砲台とはいえども

その破壊力は十分すぎるほどだったのだ。


だが、その興奮の裏で・・・キュウルーラから一束のデーター資料を渡された。

そして、ラトナはそれらに目を通し・・次の瞬間、額を押さえる。


「おいおいおいおい・・おい。これ・・不便すぎるだろ」


そこに記されていたのは、致命的な事実だった。

この蒸気魔導砲は・・連射できない。すぐに撃てないのだ。

一発撃つごとに、魔力供給・・つまり"太陽光による魔力充填"が必要となる。

さらに追い打ちをかけるように、砲身が危険なほど熱くなっているのだ。

冷却は必須で、むしろこちらのほうが深刻かもしれない。


それらは・・あまりにも大きな欠点。

撃つたびに長い充填時間、または冷却が必要だなんて、実戦では致命的すぎる。


ラトナは思わず天を仰いだ。

「これは・・・さすがにデメリットがデカすぎるだろ・・・というか!

この蒸気魔導砲・・失敗作だな」


その発言に、そばで控えていたアユリーナも肩を落とす。

だが、すぐに顔を上げ、ラトナに進言した。


「仕方がないですラトナ様! あの魔導砲を小さくしましょう。使える程度に・・・」


その言に・・ラトナは悔しげに唇を噛んだが、否定はできなかった。

現実は、あまりにも冷酷だ。


「そうだな! 研究している時間はない。即座に小さく、コンパクト化しよう」


その声には、落胆の苦味と、それでも前へ進む、なんとしても完成させるという意志が宿っていた。


・・・とはいえども、ラトナにはどうしても譲れない性分がある。

それは見た目!

大きくて、人を驚かせるものが大好きなのだ。あまり小さくしたくない。

むしろ、人々に見せつける"威圧"と"インパクト"がほしい。


だけど・・この大きさでは無理だ。

アユリーナ君の言う通り・・小さくするしかない!

さてさて・・どうすべきか!? 


「まぁ・・あれだな!」



-*- - - - - - *-



一方その頃、ヴァラウの町では・・・

長く続いた聖教庁の支配が終わり、新たな秩序が静かに形を取り始めていた。


町の路地には、まだ不安と期待が入り混じったざわめきが漂う。

女神バベル公姫と名乗る少女・・・その神力はまさに"神そのもの"だったが・・・

まだ疑いの目を向ける者も少なくない。


おそらく・・・"様子見"というところだろう。


行政の細かな整備は、ラトナではなくユラークたちに任されている。

彼らはかつてイルモの町を統治していた経験があり、政治の実務にも慣れているからだ。


それに対してラトナは・・こういう政治向きなことには慣れてはいない。


「私に行政!? 政治!? 独裁(ワンマン)国家にしたいのなら・・私がやってあげるわよ!」


冗談めかして胸を張るが、傍らに控えているアユリーナは・・・

"絶対にダメです"と言いたげに小さく頷く。

ラトナ自身も、内心では"無理だな!"と笑った。



ザイラ城祭長の時代とはまったく異なる、新しい行政システムが動き出す。

その初日、ラトナは行政官たちと顔を合わせることになったのだが・・・



聖教館・・改め"政務館広間に入った瞬間、空気が変わる。

冷たい視線が、まるで無数の針のようにラトナへ突き刺さった。

ひとりや、ふたりではない!

かなりの人数が、露骨にラトナを睨んでいた。


「ふむ。こやつら、目つきが悪いな。あっははは!!」


豪快に笑ってみせたものの、さすがのラトナも苦笑いを隠せない。

まぁ、仕方がないのだろう。


無理やりの政権奪取! 町の占領、掌握。

しかも行政官たちの家族を人質にとっているからなぁ


でも、彼らには・・ラトナ特製の薬を無料で配ったのだ。

それらを家族や兄弟、親類の何人かに配り・・病や怪我から癒したと聞く。

または・・薬の横流しで儲けた者もいるだろうし・・・


"それでも睨むか!"・・と内心で肩をすくめる。 

(それに一応、私・・・あなた方の宗教の女神なんだけどねw)


「まぁ・・いい! そなたたちの忠誠など求めぬ。

 ただ真面目に、不正なく働いてくれれば、それでよい。

それだけだ。難しいことではなかろう!?」


その一言に、場の空気がわずかに揺れた。

刺すようだった視線が、ためらいへと変わっていく。


やがて、初老の行政官・・おそらく室長であろう人物が、静かに一歩前へ出た。

その瞳には、まだ恐れと警戒・・・そして新たなる時代の覚悟が宿っていた。


「いえ、ラトナ様のため、この町のため、我らは誠心誠意、職務を果たします」


深く頭を垂れるその姿に、ラトナはほんのわずか、表情を緩めた。


「よろしく頼む」

短いが、確かな承認だった。

その瞬間、広間の空気がようやく動き出した。


こうして・・・

ヴァラウの町に新たな秩序が動き始める。


バベル公姫領ヴァラウ。

200年前に崩壊したルシャーナ帝国・・・・はたしてその復活の足掛かりとなるのか!?



-*- - - - - - *-


「・・・・戦力は増えつつあるが、まだまだ足りん」


イルモ解放戦線を率いるユラークは、聖教館・・改め"政務館"の執務室の窓辺に立ち、

鋭い眼差しで眼下を見下ろす。

そこには、整然と並ぶキュウルーラたちの巨影が広がっていた。

ラトナ配下のゴーレム部隊・・・いまのところ、唯一の決定的戦力である。


「頼みの綱は・・あのキュウルーラとかいうゴーレムたちなのか」


聖教館にため込まれていた軍資金、

そしてラトナ特製の薬の販売益を使い、傭兵を雇ってはいる。

だが、それにも限界がある。

兵は集まるが、質も忠誠もまちまちだ。



以前、ユラークはラトナに頼んだことがあった。

"キュウルーラを何体か譲ってほしい"と・・・


だが返ってきたのは、簡潔な一言だった。


「キュウルーラを操るには魔導力が必要だ。

 ・・・・魔導士を育てたほうがいい」


もっともな助言だった。

だからこそ、魔導士育成計画は立ててある。

だが・・・実行できるのは、イルモを奪回してからだ。


ユラークは静かに息を吐き、再び窓の外へ視線を落とす。

沈黙のまま並ぶキュウルーラたち。

その巨体は、まるで戦場ラッパの号令を待つ魔獣の群れのようだった。


「よくよく見ると・・見た目が凶悪だな! 威圧には最適か・・・!」





--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)


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