城祭長ザイラは見た!
女神バベル公姫を模した銅像から放たれた・・猛烈な火炎の一撃。
だがその猛威を、解放戦線の兵士たちは真正面から受け止め、見事に弾き返したのだ。
その一部始終を・・・柱の陰から息を潜めて見つめる影があった。
ヴァラウの町の聖教館を統べる責任者にして、この町の実質的な支配者・・城祭長ザイラである。
「ば、馬鹿な・・・! 偉大なる女神様の"神力"が・・弾かれただと?」
長い白髪を乱し、震える拳を握りしめる。
彼が生涯・・70年近く信じてきた"神力"が、目の前で否定されたのだ。
ちなみに、城祭長ザイラが信じていた"神力"とは、かつてラトナが作成した魔導具から発した波動、つまり・・魔法そのものだった。
皮肉なことに、バベル教が忌み嫌ってきたその魔法を、彼らバベル教徒自身は"神力"と呼び替えて崇めていただけにすぎない。
「なんてことだ! 奴らは・・魔族にちがいない!
"女神バベル公姫様"を仇名す悪魔ども・・・こうしてはいられん!
聖都ルゥーナに・・・急ぎ知らせねば! 大変なことになってしまう」
城祭長サイラは踵を返し、
恐怖と使命感に突き動かされるように、その場を駆け去った。
一刻も早く! この出来事を"聖都"へ伝えるために。
・・・しかし、ラトナはすでに気づいていた。
この場を、誰かによって監視されていることを・・・
だが、そんなことよりも先に対処すべき問題がある。
それは目と鼻の先・・・エントランスホールに鎮座する・・・ 自分にそっくりの銅像。
あれは、ラトナが四百年前に作り上げた魔導具なのだ(たぶん)
その性能も、癖も、どんな攻撃を仕掛けてくるかも、ラトナにはすべて分かっていた(自作だからね!)
はっきりいって・・まずい!
あの攻撃力は桁違いだ。殲滅型の範囲攻撃!
そして、あの魔導具を停止できるのは、"設定した本人"だけ。
または暗証番号が必要だが・・・どちらにしろ今は無理!
ならば・・・力づくで止めるしかない。
「キュウルーラたちよ。あの銅像を破壊せよ!」
ラトナの号令が鋭く空気を裂いた。
次の瞬間、10体の巨体が地を震わせながら一斉に駆け出す。
目標はただひとつ。
ラトナの姿を模した"女神像"・・再びの攻撃、第二射を放つ前に叩き潰せ!
一体のキュウルーラが丸太を両手で握りしめ・・力いっぱいにその銅像へと振り下ろす。
よし! これで破壊できると思った瞬間・・・
再び・・女神像の胸部が赤く脈動し、灼熱の火炎弾が放たれる。
ズドォォォン・・・!
爆音とともに・・キュウルーラの上半身が一瞬で蒸発した。
そして・・残された下半身が、崩れ落ちるように地へ沈む。
金属や石をも溶かす・・・凄まじい火力だ。
同時に、その火炎弾は・・そのまま軌道を変えず、ラトナや解放戦線の人たちへと迫る。
轟音と熱風が押し寄せる中、ラトナは素早く・・指先を動かした。
「なんてことなの・・来るわよ・・・!」
青白き魔導障壁が瞬時に展開し、炎を弾き返す。
火花が散り、焦げた風が吹き抜けるが、誰一人・傷つかない。
今回も守り通したが・・・
「ちっ!」
ラトナは息を呑んだ。
自分が400年前に作り上げたであろう魔導具・・・その暴威に、思わず背筋が冷える。
だが、戦況はすでに動いていた。
別のキュウルーラが側面から回り込み、巨大な拳で女神像の頭部を粉砕したのだ。
金属と石が砕け散り、魔力の光が霧散・・・
女神像は沈黙し、危機はようやく終わりを告げる。
「やっと・・終わった!」
ラトナの小さな呟きが、静まり返ったエントランスホールに響く。
その瞬間、張りつめていた空気が一気に解け、兵士たちの歓声が爆発した。
破滅的な火炎を放つ女神像・・・
その脅威を退けたという事実は、彼らの前に立ちはだかっていた最大の障害を打ち砕いた証だった。
だが、ユラークは勝利の余韻に浸る暇を与えない。
敵はまだ館内に潜んでいるのだ。
一刻の猶予もない。
ユラークは鋭く腕を振り上げ、みなに号令を叩きつけた。
「前進だ! 止まるな! 聖教館を制圧する!
重要書類を最優先で確保しろ・・城祭長を逃がすな!」
その声は、兵士たちの浮ついた空気を一瞬で引き締める。
彼らは武器を握り直し、一斉に駆け出した。
石床を叩く足音が、勝利へと続く道を切り開くように響き渡る。
ラトナはその背中を見送りながら、静かに息を整えた。
そして、破壊された銅像の残骸へと歩み寄り、散らばった部品を手に取って詳しく調べ始める。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




