ラトナ茶会事件
その時・・時代の流れが変わった。
イルモ解放戦線(仮名)とラトナたちとの邂逅。
それは偶然ではなく、歴史の必然!
互いの胸に秘めた思惑が交差し、この大陸の運命をかえる。
それは未来への希望か、それとも新たな悲劇の幕開けか。
その答えを知る者は、まだどこにもいない。
ただひとつ言えるのは・・・"恐るべき魔法使い"が、ついに歴史の表舞台へと姿を現したという事なのだ。
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ラトナは収容バッグに手を差し入れると、素早い動きでテーブル、椅子、ティーセットを次々と取り出し、手際よく並べていく。
どうやら、座って話し合おう・・という意図らしいのだが、その小さなバッグから次々と取り出される品々の量、大きさは、容量的におかしすぎる。
まるで魔法・・・というか、これはラトナ特性の魔導バックなのだ。
その常識外な光景に、イルモ解放戦線の三人・・彼らの視線が釘付けとなる。
これは、もはやこの世の理ではない!
三人の一人・・正当なるイルモ市宰卿を名乗るユラークは、顎に手を添え、興味深そうに目を細める。
一方、ルジャンとナディラは、魔法使いという存在が秘める“万能”の力に圧倒され、ただその動きを見つめるしかなかった。
やがて、ラトナが広げたパラソル付きのテーブルを囲むように、全員が席へとつく。
テーブルの上には、あの異世界の店"峠の茶屋"で手に入れた菓子と、香り高いお茶が並べられていた。
そして案の定、三人の視線は出された茶菓子に釘付けとなった。
無理もない。彼らの世界では見たこともない、奇妙で色鮮やかな菓子ばかりなのだ。
・・とはいっても高級品ではなく、異世界基準でいえば、昭和の子供向け駄菓子w
「さぁさぁ、遠慮はいらないよ。好きなだけ召し上がれ」・・・とラトナがおすすめするが、
ルジャンとナディラは皿の前で固まったまま、互いに視線を交わすばかり。
未知の食べ物に対する恐れが・・その表情に滲み出ていた。
しかし、そんな二人をよそに、ユラークはまるで気にも留めず、ひょいと菓子をつまみ上げると口へ放り込んだ。
次の瞬間、彼の目が大きく見開かれる。
「・・甘い! これは、実に良いな」
驚きと喜びが混ざり合ったその一言は、静かな空気を震わせ、場の空気を一気に明るくした。
その様子を見たラトナは、満足げに微笑む。
「いいでしょう〜!? 私も好みなのです」
そう言うと、ラトナ自身もひとつ摘まんで口に運ぶ。
アユリーナも続き、ふわりと表情をほころばせた。
それらの反応を見て、ルジャンとナディラもついに覚悟を決めたようだ。
互いに小さくうなずき合い、そっと菓子を手に取る。
未知への不安を押しのけるように、ゆっくりと口へ運び・・そして、驚きの表情。
いままで味わったことのない甘さに・・クセになるうまみを知る。この世界では体験できない美味しさなのだ。
(ただし、実態は子ども向けの安い駄菓子であるw)
だが、そんな真実など誰も知る由もない。
場の空気は一気に明るくなり、
彼ら・・イルモ解放戦線(仮名)の人たちが、魔法使いたちを見る目も、よくなるであろう。
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・・・・というわけでラトナとイルモ解放戦線(仮名)との交渉に入る。
ルジャンが連れてきた!?というユラーク氏は、今は亡き・・イルモ市宰卿ダルマールの子息にして、名目上の後継者とされる人物。
そう、イルモ解放戦線(仮名)のトップ・・その頂点に立つ者が、自ら出向いてきたのである。
いわば三顧の礼、しかも・・従者を二人(張飛、関羽もどきw)を引き連れて・・
・・・と言いたいところだが、彼らは・・その礼節を台無しにしてしまう。
彼らは敵に追われ、命からがら逃げ込んできたのだ。
そして、これから交渉しようという相手へ、その敵を丸ごと押しつけてしまったのである。
「押し付けられたのは、仕方がないと承知しています。しかし・・このお代はそれなりに・・いただきますよ」
菓子を口にいれたまま、にこやか(不敵)に笑うラトナの態度に、ユラークは思わず息を呑む。
交渉の主導権が、どちらの手にあるのか・・もはや疑う余地はない。
いや、彼女たちの魔法を借りるというのなら、こちらが大きく譲歩するしかないのだろう。
ユラークは、静かにその現実を受け入れた。
そんな緊張の中、ラトナは唐突に、しかし堂々と宣言する。
「私は・・大きく主張したい! イルモの町は、とんでもなく・・臭い。
とにかく臭い。あれは、人が住む環境じゃない! あんな臭い町の奪還に、力を貸す気はないね」
あまりにも率直すぎる"臭い宣言"、そして協力拒否・・次期市宰卿と名乗るユラークは思わず顔をしかめた。
この時代の町は、そもそも臭いのが当たり前・・これが常識!
200年前とは違い、技術は退化し、魔導も失われた。
ごみ処理も下水処理もずさん・・・ゆえに町は常に悪臭を放つ。
人々は"臭い町"に住むことを前提に暮らしているのだ。
だから今さら"臭い"と言われても、次期市宰卿ユラークとして・・・返答に困るのである。
・・・とはいえ、疑問に思わなかったことはない。
以前から、町を覆う臭気について深く気にかけていた。
そのため、いくつかの改善案をあげ、亡き父・ダルマール市宰卿にも進言したのだ。
しかし、どれも莫大な予算を必要とし、現実味に欠けると退けられてしまう。
ゆえに、彼は胸の内で苦くつぶやくしかなかった。
「それは分かっている。悪臭問題は難題・・だが、実行できる策がないのだ」
対面に座るラトナは、その言葉を真正面から受け止め、静かに口を開く。
「対策ならある。それは魔導技術の復活だ。それに下水施設の建設!
200年前なら、どの町にも当たり前にあった仕組み。そう・・あの頃は清潔で快適なくらしができたものだ。
むしろ、それがどうして失われたのか・・・そちらの方に疑問を持つね」
ラトナのそのような発言に対し・・ユラークは何も返答できなかった。
200年以上前の資料は、すべて失われてしまっているからだ。
この時代の人たちにとって、200年前とは"伝説として語られる、"神代の時代"となる。
かつての魔導文明は崩壊し・・・霧の向こうに消えた。
全ては失われ、何が起きたのかすら分からない。
それに目前の少女・・・自ら"バベル公姫"と名乗り、200年前から生きているという。
しかも"魔法使い"に女神!? その上・・伝説の帝国ルシャーナの王女だと語るのだ。
あまりにも多すぎる情報にユラークは思わず頭を抱えてしまう。
そんな彼を見つめながら、ラトナは静かに告げる。
「私が望むことは、200年前のような暮らし・・・
町を快適に・・清潔にすること! もちろん、イルモ奪回が前提だけどね!」
その声は穏やかだが、底に揺らぐ野心は隠しきれない。
彼女はふっと口元を吊り上げた。
「私の忠実なる彼ら・・あの"キュウルーラ"たちがいれば、奪回も難しくないはず!」
情報過多の少女・ラトナの発言に・・・ユラークの口角がわずかにはね上がる。
"キュウルーラ!"
彼の脳裏に、憎き聖教軍を追い払った"あの恐るべき巨人"がよみがえる。
頼もしさと恐怖が同居する、人の形をした異物。
「それは頼もしい! 素晴らしい! 彼ら巨人たちが、我らの味方となってくれるのなら・・なんと有難いことか!」
一方、隣にいたルジャンとナディラは、思わず顔を引きつらせた。
ラトナは、そんな三人の反応を楽しむように言い放つ。
「どう? あの頼りになる"キュウルーラ"たちを・・増産するのよ。
もちろん、予算はそちら持ちでね」
その声は軽やかだが、提案の重さは場の空気を一変させた。
ちなみに"キュウルーラ"の動力源は"魔結晶"・・・それはレアメタル、割とお金がかかってしまうのだよ。
(イルモ解放戦線(仮名)に資金の余裕があれば良いのだが・・!?)
そう、町の奪還の見返りとして、いや前提として・・ラトナは"キュウルーラ"の大量生産を目論んだのである。
それは彼女の野望・・"キュウルーラ"軍団によるルシャーナ帝国の復興を画策していた。
-------------------- To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)




