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ブラッディ・ラトナ


イルモの町の城門前・・・

警備に立つ聖教兵士、数十名の目前にて、

ラトナとアユリーナの黒髪が、ついに露わになってしまった。


その瞬間、空気が凍りつく。


兵士たちの視線が、二人の少女の・・その髪へと吸い寄せられる。

赤髪の偽装は消え、隠しようのない"本来の姿"が暴露されたのだ。

ラトナは臭気で咳き込みながらも、鋭くつぶやく。


「ま・・まずい! 最悪のタイミングだ」



一方・・兵士たちも混乱していた。

目の前の少女の髪が、目立ちに目立つ鮮やかな赤から一瞬で黒へと変わったのだ。

何人かの兵士は互いに目くばせし、ひそひそと短く言葉を交わす。

そして・・・ついに結論が出たのだろう。

数名の兵士が、ゆっくりと二人の少女へ向かって歩み出したのだ。

それが・・彼らにとって不運の始まりだったかもしれない。


-- -- -- -- -- -- -- -- -- --


「アユリーナ君! もはや腹をくくるしかない。」


「えっ!?」


荒い呼吸の合間に、ラトナの声が鋭く響く。


「戦いとは先手必勝だ。撃たれる前に撃つ。殺される前に・・相手を討つのだ」


その言葉とともに、彼女の瞳に戦場の光を灯す。

400年前、父と共に駆け抜けた血煙の記憶が、ラトナの中で再び燃え上がったのだ。


アユリーナも師匠(ラトナ)の言葉に静かに頷く。

相手は親の仇、村の仇・・復讐するべき敵なのだ。

その覚悟が、彼女(アユリーナ)の中で音を立てて固まった。



ラトナとアユリーナの周囲に、青白い球体が次々と浮かび上がる。

空気が震え、光が収束し、魔弾は一斉に解き放たれた。


轟音。閃光。爆裂! ズッドォォォッッッン


城門を守っていた聖教軍の兵士たちは、何が起きたのか理解できない。

黒髪の少女が二人、突如現れたと思った瞬間・・・無数の光が炸裂したのだ。


魔導を知らぬ兵士たちは、恐怖と混乱に呑まれ・・まともに対応できない。


「おい! なにがどうなっている」

「あの少女・・まさか!」「ぐわぁぁぁっっ」


叫び、戸惑い、そして崩れ落ちる兵士たち。

そして・・ほぼ全員が地に伏し、赤い血が石畳を染めていった。


戦闘はほんの一瞬だった。反撃すら許さず、すべての兵士が沈黙したのだ。




その惨状を、遠巻きに見守る群衆・・一般住民たち。

目の前で起きているのは、もはや乱闘ではない。"戦闘"いや"殲滅"だ。

しかも、その中心にいるのは二人の少女。

彼女たちが放つ光と衝撃は、常識を超えた"何か"だった。


「な・・なんだあれは!? ま、まさか・・あの二人、"本物の魔法使い"なのか!?」

「た、たしかに黒髪だぞ」「ま・・魔族!」


恐怖の声が連鎖し、群衆の中へと・・一気に広がっていく。

二人の少女は・・"魔法使い"であり、"魔族"かもしれないのだ!


そう誤解し、あるいは確信した瞬間、住民たちは雪崩のように逃げ出した。

そして、城門前はさらに深い混乱の渦へと沈んでいく。


「「うわぁぁぁ魔法使いだ!」」「「魔族だ!」」「「助けてくれ~」」



-*- - - - - - *-


ラトナたちの眼前に広がるのは、まさに地獄絵図だった。

魔導士への備えを欠いた者たちは、こうして為す術もなく蹂躙されるのみ。

その一方的な惨状こそが、魔導という圧倒的パワーの恐ろしさ、残酷さを物語る。


そして一方・・アユリーナの瞳は、復讐の炎に染まっていた。

バベル聖教軍こそ・・親の仇、村の仇。

その想いが、彼女の魔力をさらに研ぎ澄ませ、放たれる魔弾は先ほどよりも重く、鋭かった。


だが・・魔力量にも限界がある。

そして、混乱が収まれば必ず敵の援軍が来るのだ。

ここは・・退くべき時だな。


「アユリーナ君! 潮時・・逃げるよ」


「えっ!? は・・はい」


ラトナは鼻を押さえながら叫び、アユリーナの手を強く引いた。

逃げ惑う人々の間をすり抜け、二人は素早くイルモの地から離脱する。



そして・・・

イルモ駐屯の聖教軍司令官カルザンが手勢を率いて城門へ駆けつけた時、

そこにラトナたちの姿はすでになかった。


残されていたのは、焦げて黒くなった石畳、赤く染まった遺体、

・・・そして恐怖に震える兵士たちの声だけだった。



-*- - - - - - *--*- - - - - - *-



「あれは・・魔法使い。間違いない。

内史官(秘書)殿の話は、本当だったというのか!?」


旅人の装いをした若い男は、息を殺し、茂みの影から二人の少女を追っていた。


少女たちは、道なき道を風のように駆け抜けていく。

その背を追う男の足取りは、次第に重く沈んでいった。

訓練を積んだ自分でさえ、追跡するのがやっとなのだ。


彼女たちはただ歩いているように見える。しかも足場の悪い森の中を・・

それなのに、距離は広がるばかり!

男は全速力で走っているというのに・・


常識を超えた速度。人の理を逸した存在。

男は、否応なく思い知らされる。

彼女たちは魔族・・いや、魔法使いなのだと!


できることなら、彼女たちとは穏やかに接触したい。

もしも・・彼女たちの協力を得られるのなら、聖教軍を退け、祖国・イルモを奪回することも夢ではないだろう。


亡きダルマール様(イルモ市宰卿)のためにも・・魔法使い殿との協力は欠かせないのだ。

男は、静かに決意を固めた。





--------------------  To Be Continued ヾ(^Д^ヾ)



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