『ブルーリヴァー後日談 ― 影の残渣と、静かなる決意』
〈帝国東領・ブルーリヴァー峡谷/臨時療養所〉
水の聖樹の瘴気は完全に浄化され、
谷には透明な霧と柔らかな光が戻っていた。
だが、レイブンの胸に広がる重さは消えない。
ベッドの上では、
リスティアがまだ目を閉じ、静かな呼吸を続けている。
黒炎による深層汚染は浄化されたが、意識はまだ戻らなかった。
レイブン(心の声)
(……リスティア。
守ると言ったのは、俺なのに……)
彼はそっと彼女の冷たい指を握った。
「ほんの少し、温かさが戻っております。」
そう声をかけたのは、獣人族の僧司・ハルマ。
ブルーリヴァーの住民が連れてきた“治癒の祈導士”だ。
レイブン
「……そうか。」
ハルマ
「命の灯は揺れていません。
あの子は、戻ってくる未来を捨ててはいませんよ。」
その言葉にレイブンはわずかに息をつく。
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療養所の外では、ブルーリヴァー駐留の帝国軍が集まり、
ヴァルドラとの戦いの総括が行われていた。
第二級騎士長ガルマン
「……戦術的には勝利だが、問題が残っている。」
「“影の執行者”一体でこれだけの損害……
十二魔導将が本格的に動いたら、我々は持たない。」
副官
「しかも、あの黒翼の魔族――名前は……」
ガルマン
「ヴェル=オルグ。
生き延びていると見て間違いあるまい。」
その名が出た瞬間、レイブンの眼差しが鋭さを取り戻す。
レイブン
「……あれほどの怪物が、まだどこかにいる。」
ガルマン
「我々帝国軍だけでは対処できん。
だが――」
彼は周囲を見回した。
「水の聖樹を救ったあなた方は……
もう帝国の“英雄救援候補”として扱われている。」
レイブン
「英雄などではない。
守れなかった仲間がいる。」
ガルマン
「それでも……
あなたほど“影”を見据えている者はいない。」
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副官
「ところで、あの錬金術師の青年……ええと、ミュリオと言ったか。
彼の姿を今回見なかったが?」
レイブンは小さく息をつく。
「……水の聖樹奪還の後、
帝国首都に向かったきり、こちらには戻っていない。」
ガルマン
「帝国首都か。
なら安全だろう。」
レイブン(心の声)
(ミュリオ……何か掴みかけて動いたのだろうか。)
彼が“今どこで何をしているか”
レイブンはまだ知らない。
――ミュリオが、すでにレオン(ノエル)一行に合流していることを。
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夜、レイブンはリスティアの枕元に座り続けていた。
「リスティア……
君なしでは、この先の影と戦う意味が……薄れてしまう。」
微風がカーテンを揺らす。
その時、リスティアの指がかすかに動いた。
レイブン
「……ッ!」
呼吸が止まる。
しかし――
それは、微かな、ほんの反射のような動きだった。
やがてレイブンは目を伏せ、静かに言った。
「必ず戻ってこい。
次に影と戦うときは……
もう二度と、君を傷つけさせはしない。」
決意は、氷のように静かで、炎のように熱かった。
そしてブルーリヴァーの夜空には、
遠く炎の大地の方向から赤い閃光が走る。
――レオン(ノエル)一行が、
“炎の聖樹イグニア”へと踏み込む刻だった。
いつもありがとうございます。また明日更新します。次回、火山道・影巨兵との激突 ― “第二の脈動”




